手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

早くリニアを作ろうよ

早くリニアを作ろうよ

 

 どうもこの数か月の、日本の天候が余りに不安定で、台風、地震の度に新幹線が全面ストップしています。一日、新幹線が動かないと言うことが、どれほど不便なことかは実際に新幹線が稼働しないと、その有り難さが分かります。

 東京大阪間は新幹線のドル箱路線です。世界でこれほど大量に列車を利用する地域はないでしょう。新幹線は16両編成で、5分に一回走っています。世界中で、時速350㎞の列車が、5分に一回走っている国と言うのは他にあり得ません。JRの技術の高さと優秀な人材が為せる業だと思います。

 それは素晴らしいことです。でも、新幹線のダイヤは余りに過密です。もう限界に来ていませんか。毎度毎度の地震や台風でも、極限までの過密スケジュールを組んでしまった結果、全面ストップをすると、飛んでもなく多くの人に被害が発生します。

 

 私は毎月関西へ指導に出かけます。初めは、東京駅からこだまに乗って、富士まで行きます。こだまは、駅に着く度に、のぞみを1台、あるいは2台やり過ごします。そのため、必ず5分程度停車をします。その5分間に、のぞみの通過を待つのですが、私の乗っているこだまが停車した途端。僅か数十秒でのぞみが追い抜いて行きます。のぞみは300㎞以上出して突っ走ります。つまりこだまがスピードを下げて、駅に到着して、通過を待つ間、わずか30秒でのぞみが追い抜いて行くのです。

 これは脅威です。そんな軽業のような行為が毎回毎回繰り返されているのです。よくこれで事故が起こらないものだと思います。実際には勿論、事故は起こらないのですが、そうまでして乗客を運ばなければならないとしたなら。もう東海道新幹線は限界でしょう。

 今の日本では、東京、名古屋、京都、大阪、は、もう殆ど隣同士の都市のような感覚です。この地域の交通を妨げたら経済も、政治も、芸能も成り立たなくなります。それは私が言うまでもなことでしょう。

 その大動脈である新幹線が、海岸沿いを走って行き来することからして、既に危険です。地震、台風に常に身をさらすことになります。更に冬場には関ヶ原に雪が舞い込んできます。東海道は日本中で最も災害の多い地域で、そこに新幹線が通っていること自体が危険です。

 そもそも明治初年に鉄道を敷こうと考えたときに、東京大阪間の動脈は、東京から群馬の高崎まで鉄道を敷き、そこからかつての中山道に添って、長野県を経由して、岐阜県そして名古屋とつなげようとしたのです。

 なぜそうしたかと言えば、当時の考え方として、外国と交戦するときに、東海道を動脈にすると、艦砲射撃で、線路を破壊される。とみられたからです。大砲の届かない、中山道の方が被害は少ない。と言うわけです。

 然し実際鉄道を作って見ると、中山道の方がトンネルや、鉄橋などをたくさん作らなければならず、経費がかかり過ぎて、作りやすい東海道の方がどんどん先にできて行きました。かくして、東海道線が経費の上から日本の大動脈として今に至っています。

 

 でもこうまで過密なダイヤになってしまっては新幹線はもうワンセット必要です。ここは早期にリニア新幹線を作って、東京名古屋大阪間を安全につないで行った方がいいと思います。

 リニア新幹線は、東京大阪間をほぼ直線でつなぐために、およそ人のいない地域ばかりを走ります。リニアは途中の小さな都市で人を乗せようと考えてはいないのです。飽くまで東京大阪間を1時間30分で走りたいのです。そのため、ほとんどが地下を通ります。地上に出ても大きなパイプ状の中を突っ走ります。

 東京を出ると、山梨の山中を突き抜け、長野の飯田近辺まで行きます。そこからアルプスに穴をあけて、巨大なトンネルを作り、岐阜に抜け、名古屋に到着、名古屋からは真西に進み、京都は通らずに、奈良に行きます。奈良から直線で生駒山を突き抜けて大阪に入ります。この間の都市らしい都市は、飯田と奈良だけです。

 とにかくパイプの中を突っ走りますから、台風や、雪の災害はほとんど起こらないでしょう。地震対策も考えて、強度なトンネルを作るでしょう。そうなら、日本で最も災害に強い路線が出来るはずです。これなら、災害で列車が走れない状況は起こり得ないでしょう。

 このリニアの路線は、明治初年の、中山道を日本の動脈に据えようとした考えに近いものがあります。案外この発想が、日本の将来を見据えて、繁栄を生む原点に立つのかも知れません。東海道は余りに災害が多すぎます。艦砲射撃なんてありえないと考える人も、実際、台湾有事の際には、現実のものになるかも知れません。

 リニアは小さな都市に駅を作る考えはないようです。とにかく、時速500㎞で突っ走って、1時間30分で東京大阪間をつなぎたいのです。1時間30分は、飛行機の時間と同じです。飛行機よりも、都市の中心から中心をつなぐ分だけ、大幅に時間節約ができます。リニアが完成すれば、仮にのぞみの料金の50%アップで運行しても、乗りたい人は殺到するでしょう。

 実際に、大阪東京の大都市間を往復3時間で行けたなら、これまで5時間30分かかていた移動時間を二時間30分短縮が出来ます。2時間30分が手に入るなら、いくら高くても全然惜しくないと言う人は山ほどいるはずです。実際リニアが出来たなら、定期券を買って、毎日東京大阪間を往復する人も続出するでしょう。その経済効果は計り知れないものがあります。

 

 さて、リニアを通すことに徹底的に反対した、静岡県の川勝知事は、大井川の水が枯れるからトンネルは駄目だなどと言っていましたが、どうやら本心は、のぞみを静岡と浜松に停めたい。とねだっていたようです。全くの裏取引です。

 でもそれは言われるまでもないことで、東海道新幹線は、リニアが出来れば当然列車の本数も少なくなるでしょうし、大きく乗客を減らします。時間にゆとりが出来た分、浜松や静岡に停まるのぞみを作って少しでも多くの乗客を乗せようと真剣に考えるはずです。

 そうなら、なぜリニアの幹部は、川勝さんの希望を聞かなかったのでしょう。裏でもっといろいろなことをおねだりしていたのでしょうか。これ以上の詮索は出来ません。とにかく、リニアは早急に作りましょう。地震災害が起こってからでは遅きに失します。日本が百年先までも、世界中の憧れを集める国になるためには、不可能を可能にする大きなプロジェクトが必要です。日本人ならできますよ。だって、60年前に新幹線を作って、走らせた国なんですから。

続く