手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

花蓮の大地震

花蓮の大地震

 

 昨日(4月3日)台湾の花蓮県マグニチュード7の大地震が発生しました。実際の地上で体感した震度はマグニチュード6強だそうで、台湾東部の花蓮(かれん)一帯で大きな被害があったようです。日本政府は早速災害対策救助隊を出動させました。

 然し、日本が台湾に対して支援をすると、なぜか中国は不快感を現し、露骨に反発します。おかしなことです。今現実に被災して苦しんでいる人がいるのに、中国自らは救助支援をしない上に、なぜ日本の支援を否定するのでしょうか。

 台湾島は、南北に、長く高い山が連なり、平野は西側、東シナ海に面した地域に集中しています。太平洋に向いた東部側は、ちょうど岩手県三陸海岸のように、海岸すれすれまで山が迫って来ていて、平地が少ない地域です。無論、川の河口付近など、わずかながら平地はありますが、新幹線の走っている台北、台中、台南などの西側地域とは全く景色が違い、耕作地は少なく、人口も少なく、従って大きな都市はありません。

 台湾は、日本と同じく太平洋プレートが大きく南北にのびていて、地震の多い地域です。ただ、日本と少し違うのは、日本の場合太平洋プレートが、太平洋沖の海の中に伸びているのに対して、台湾島は、なぜか台湾島の真下にプレートが来ています。

 1月の能登半島地震は、震源地が、輪島沖の日本海にありました。多くの日本国内の地震は、海が震源地になります。最近頻繁に起こる、茨城県や、千葉県の地震も太平洋沖に震源地がある場合が多いです。こうした点、直接の震源地と離れていますので、実際地震が発生しても震度は小さくなります。

 ところが台湾の東部では、地震が起きると、その振動が直接地上に響くため、直下型地震となり、大きな災害が発生しやすくなります。

 昨日の地震も、まず初めに上下に大きく揺れて、その後横揺れが続いたと言います。上下に大きく揺れると言うのが直下型の特徴です。かつての東日本大震災は、三陸海岸の沖に震源地がありました。そのため、揺れは横揺れで、地域は広かったのですが、直下型ではなかったのです。

 この三陸沖の震源は、今年になってからも岩手県地震があったばかりです。なぜこうも地震が多いのかはわかりませんが、昨日の台湾の地震も、沖縄や、沖永良部島あたりまで大きく揺れて、一時は那覇空港で、飛行機が発着を見合わせたそうですから、他国の災害ではありません。

 

 地震で怖いのは、地震そのものよりも、建物の倒壊と、火事です。台湾の地震を見ると、さほどに大火が起こることはないようですが、建物で耐震構造を持って出来ているビルが少ないようです。中にはずさんな工事で、コンクリートや鉄骨を間引いて作ったビルもたくさんあるようです。そうした建物が直下型地震を被ればたちまち倒壊してしまいます。

 特に中国のビルは、昔から、一、二階に商店やテナントが入っているように作られていて、商店は四方からお客様が入りやすいように、柱の少ない、壁の少ない空間を好みます。見た目はその方が開放的でいいのですが、柱や壁が少なければ耐震構造は思いっきり下がります。その上に10階、15階とアパートを拵えてしまうと、もう一階の柱は地震に耐えられなくなります。結果、中国のビルは、一階が押しつぶされるような崩れ方をします。無論一階が潰されたら、高い建物は維持できませんから、倒壊します。

 

 これを見て、「だから中国の建物は信用できない」。なんて思っていてはいけません。日本の建物も危ないのです。どこの国にもいい加減な建築屋さんはいますし、建物は建ててしまうと中の構造が分かりずらく、建築後数十年経ってからの震災は責任が曖昧になりますので、手抜き工事をすれば、やった者勝ちになってしまいます。結局倒壊するまで建物の本当の強度は分からないのです。

 ほとんど柱らしき柱がないまま、開放的な商店などが入っているビルを見ると、「これは危ないなぁ。今度地震が来たら間違いなく倒壊するなぁ」。と、建築家でもない私が見ても危ないビルはたくさん見受けられます。

 私などは、仕事上、知らない都市に行って、喫茶店や、レストランを利用する機会が多いので、その店のビルが構造上大丈夫かどうかなんて、初めて入った店のことは詳しくはわかりません。それでもなるべく、狭い敷地に建てたビルや、避難用の外階段もないようなビルには行かないようにしています。

 ビルの上層階で火事に巻き込まれたりすると、非常階段が無ければ、中の階段にお客様が集中し大混雑をします。その階段に火が入って来たなら下に降りることは出来ません。そのうちに煙が上がってくれば、もうどうにもなりません。

 我々は上の階でスモークポークハムのようにいぶされて、脂汗を流して息絶えることになります。お歳暮にもらったスモークポークハムを独り占めして食べた報いで、自分がスモークされる結果になると言うのは、辛いことです。

 そうならないために、レストランに入る前には必ずビルの外観を見ます。危なっかしいビルに入っている店には行きません。喫茶店も同様です。雑居ビルで、3階4階にある喫茶店にはなるべく入らないようにしています。

 

 花蓮ではトンネルの中にいる人や、ビルの一階で押しつぶされた人がまだ残っていて、今も救援を求めているそうです。日本の救助隊が行って、多くの人が助かればよいがと思います。一人でも多く、救出されることを願っています。

続く