手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

能登の地震

能登地震

 

 明けましておめでとうございます。と、言いたいところですがそうめでたくもありません。元旦、夕方4時ころに地震がありました。東京では少し長い揺れでしたが、それほど大したことはないかな、と思う程度のものでした。然し、夜になってテレビのニュースを見ると震源地は能登半島だそうです。震度7とありました。震度7は相当に大きな地震です。

 能登半島の、輪島市珠洲(すず)市などで家が倒壊したり、下敷きになった人がいて、死者も出たようです。何とも、正月早々家を失い、死者が出るとはお気の毒です。津波も来たらしく、幾つかの都市が水に浸かったようです。東日本大震災ほどの大災害にならなかったのは不幸中の幸いでしょうか。

 

 私は、これまで能登半島の、和倉温泉の加賀屋ホテルに何度か出演しています。一回目に行った時はホテルのディナーショウで2日間の出演でした。ショウは夜だけですので、二日目の昼は用事がありません。車で輪島まで出かけて観光をしました。

 和倉温泉能登半島の真ん中あたりにあります。そこから輪島へ行くのはかなり遠く、車で1時間以上かかったと思います。途中に町らしい町はなく、田んぼや林が続きます。輪島は能登半島のてっぺんにあり、津軽青森県)、会津福島県)、と並んで、和島は古くから漆器の産地として有名です。古い町並みで、あちこちに輪島塗(漆器)の商店がありました。

 

 町を歩いていても全く物音がしない静かな町でした。ある家の障子窓が少し空いていました。隙間を覗いてみると、職人が薄暗い部屋で静かに椀に漆を塗っていました。その作業の仕方が実に高尚な感じがして、いい雰囲気だなぁ、と思いました。

 それは30年前だったと思います。あの時見た町が、元旦の地震で何棟か壊されたかと思うと残念です。今漆器は中国製や、安いプラスチック製に追われて、日本各地の工房は衰退の一途になっています。そこへもってきて今回の災害による家屋倒壊、観光客減少。後継者不足。などに見舞われてはこの先輪島塗は一層苦境にさらされることになるでしょう。元旦早々から能登の皆さんには試練の年となりそうです。

 

 ニュースを見ていて、先月伺った、福井県の三国にある龍翔館(博物館)はどうなったのか、ひょっとして、建物が倒壊したりはしないかと心配になり、2日に館長さんに電話をして見ました、すると笠松館長さんは博物館に行っていて、館内を点検中でした。幸い展示物が壊れたり、建物がひび割れるようなことはなく、安全だったとのことでした。

 今回の地震は、能登半島の北端に被害が集中していて、東日本の時のような、広範囲の被害はなかったようです。石川県の南にある福井県での被害はほとんどなかったようです。

 

 日本の古い家屋は、かなり丈夫な柱や梁を使っている家が多く、そう簡単には倒壊しません。ところが、家が古くなって、柱や根太(ねだ)が腐っていたり、シロアリに侵されていたりすると、あっけなく倒壊してしまいます。

 また、商店ですと、店先の間口が広く、柱が少なく、壁もほとんどないような作りの家が多いため、耐震バランスが悪く、倒壊しやすいようです。多少見栄えは悪くても、耐震補強の金具を付けるなり、はすっかいに鉄骨を打ち付けるなどして、家を守るようにしたほうが良いでしょう。

 文化財としての美観を維持することは大切なことですが、建物が倒壊してしまっては意味がありません。極力目立たないように補強が必要だと思います。そのことは手妻も同じで、古いままに残すことがいいと思っている人がいますが、明らかに不自然な演技や未熟なネタ取りでは今の観客の興味を引き付けられません。やはり少し発展させてものを考えないと、古典は生き残れません。間違った部分まで残すのではなく、改良して使って行くことは必要です。

 

 さて、世間が能登半島の災害に集中しているときに、昨日(2日)、夜6時ころ、羽田空港で、日本航空の旅客機と、海上自衛隊の輸送機が滑走路で接触事故を起こし、輸送機は炎上。乗組員6人中5人が死亡。旅客機は炎上、乗客は全員避難。信じられない大事故が発生しました。原因は不明です。

 海上自衛隊の輸送機は、能登半島の災害救助のために飛び立とうとしていたようです。災害が新たな災害を生んことになります。人助けで命を落とすと言うのは何ともお気の毒です。

 意外だったことは、飛行機がああも炎を上げて燃えるものだと言うことを初めて知りました。飛行機などと言うものは、アルミニウムか何かで出来ていて、そうそう簡単に燃えるものではないと思っていました。

 一般の旅客機は内部の壁がプラスチック系の樹脂のようなもので出来ていますから、せいぜい樹脂さえ燃えてしまえば飛行機の形はそっくり残るものだと思っていました。それがまるで木造家屋の火災と同じように燃え盛っているのを見て、「あぁ、飛行機と言うものはこうまで燃えるものなんだ」。と驚きました。

 いきなり正月早々に立て続けに災害が続いて、何やら不穏な世の中になりそうな気配ですが、決してそうではないでしょう。世の中が良くなるも悪くなるのも人の心持一つです。良くなるように行動すれば良くなり、悪くなることを望めば悪くなります。

 人は思い一つでまわりの世界がはっきりと変わります。こうした時代こそ、先を見通して、よりよき方向を示せるリーダーが必要です。どうぞ日本のリーダーは、この先どう生きたらいいのか、はっきり将来を見据えて、言葉や行動で示してください。

続く