手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

静岡県名物

静岡県名物

 

 一昨日(11月15日)たまたま女房が用事があって帰宅が遅れるので、晩飯が作れないと連絡があり、外で食事をすることにしました。その晩は、外岡瞬さんに手妻のご指導をしていて、稽古の後、歩いて一緒に高円寺の駅前まで行きました。

 時々行くピザの店、窯鉄にするか、あるいは「くら」でそばを食べるか、いろいろ考えましたが、以前、静岡の名産を肴にして一杯飲む店ができていて、中に入ったら、満席で断られたことを思い出し、そこに行ってみることにしました。

 場所は南口、パル商店街の近く、窯鉄にも近いのですが、この晩窯鉄は休みでした。ビルの地下にある静岡名産の店、幟が幾つか立っています。「静岡おでん」、「富士宮焼そば」、「浜松餃子」、と名物の名前が書かれています。どれも食欲をそそります。

 店は広いスペースに椅子テーブルが並んでいて、よくある飲み屋のスタイルです。先ず、ハイボールと、おでんの盛り合わせを頼みました。それから、生牡蠣があったので、5つ頼み、更にサンマの塩焼き一皿を頼みました。

 サンマを一皿にしたのは、何となく値段からして、このサンマは痩せて小さいのが出て来るのではないかと勘繰り、様子を見たのです。

 さて、外岡さんととりとめのない話をしながら、おでんをつまみます。外岡さんは弁護士で、元々東京大学のマジック研究会出身で、社会人になってもボランティアなどでマジックを見せています。このところ演技内容は手妻が主流になって、和服を着て、蒸籠(せいろう)や、連理の曲などを演じています。

 さて、おでんの方は、醤油の色の濃いつゆで、これに上から粉の削り節をたくさんかけています。静岡の人は粉の削り節が好きなようで、何かとたっぷり粉の削り節を掛けます。削り節と黄色い辛子を付けておでんを食べるのですが、味はほぼ削り節の味になります。

  種ものは、こんにゃくや竹輪など、日本中に良よくあるタネが並んでいます。静岡らしい種ものは、黒はんぺんで、名前の通り、色が黒くて、およそはんぺんには似ていません。鰯の身を摺って作ったはんぺんです。魚好きにはたまらない一品です。いろいろ10品出て来ましたが、空腹だったため、あっという間に食べてしまいました。

 次に生牡蠣が来ました。立派な大皿に殻の付いた牡蠣が5つ並んでいます。カボスをかけて食べます。身はプリッとした大きな身でいい味でした。この店で生牡蠣が食べられるとは思ってもいませんでしたので、仕事を終えた後の充実感を満たしました。

 

 そしてサンマがやってきました。サンマは思った通り、痩せて小柄です。とても旬とは思えません。本来こうまで痩せているなら一人一匹ずつ頼むべきですが、どうもあまりに痩せていて油気がなさそうですので、二匹頼むのは無駄でしょう。半身を分け合うことにしました。味はまあまあでした。このところサンマは高級魚並みに値段が張ります。身の厚いものは高価です。

 こうして色々食べていると、隣に座っている20代の女性の一人がチラチラ私を見ています。目がパッチリしていて小柄です。こんな人に視線を合わされると気になります。その彼女が意を決したように私に話しかけて来ました。

 「あの、私たち色々料理を注文してしまって、食べきれないで困っています。できればこの料理を食べてもらえませんか」。なんと、料理をくれると言うのです。見ると天ぷらのようです。「何の揚げ物ですか?」。「マイタケです、全く箸を付けていませんのでどうぞ召し上がって下さい」。

 と言うわけでマイタケを頂きました。早速頂きました。ほのかに香りがあっていい天ぷらでした。少し話でもしたいところですが、女性同士の話が盛り上がっているようですので、遠慮しました。

 次に浜松餃子が来ました。どうも、この店の料理のいくつかは冷凍ものだろうと気付きます。浜松餃子と聞いて期待しましたが、味は飛び抜けたものではなく、普通の餃子でした。やはり商売するなら、一から作らないと、餃子を看板料理にすることは出来ません。少しがっかりです。

 そして次に頼んだ富士宮焼そばも冷凍でしょうか。心配になります。私は富士宮焼そばのファンです。あそこの焼きそばは、富士宮市内のどこで食べても製麺所が同じで共通の特徴があります。麺がまるでゴムのような、弾力のある噛み応えなのです。焼きそば自体は、ごくごく単純素朴な、お好み焼き屋さんの仕上げに作るような焼きそばですが、麺の弾力が忘れられず、ついつい食べてしまいます。

 焼きそばはソース味で、例によってたくさん削り節がかかっています。そこに紅しょうがをのせて食べますが、所謂お好み焼き屋さんの焼きそばであり、夜店の屋台の焼きそばです。そうでありながら、削り節の個性的な味わいと弾力のある麺でついつい食べてしまいます。麺はしっかりしていておいしかったのです。

 

 と言うわけで、静岡の名物が味わえると思って入った店ですが、もう少し店独自の個性が出ていれば、また来たいとは思いましたが、今のところはどうでしょうか。又半年くらいしてから行ってみようかと思います。

 それより何より、おでんを食べているうちに、浅草のお多福が恋しくなりました。またあそこでウインナー巻きや、午房巻きが食べたいな。と思いました。又帰り際に食べるおでんのつゆを掛けた茶飯も忘れられません。年内何とか浅草に行こうと思います。

続く