手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

20年遅いよ、ジャニーズ問題

20年遅いよジャニーズ

 

 ここ数日、ジャニーズ事務所は、東山紀之の社長就任では問題を乗り切れないと分かり、社名を変えるなどと言い出しましたが、全てにおいて後手に回っていますね。また、各企業が、性加害を加えていた事務所との付き合いを断る。と大見えを切っていますが、それを今更言うのか、と、怪訝な思いです。

 肝心のテレビ局は、今もあやふやな態度で、自らの立場は明確にしないまま、ジャニーズのタレントを使い続けています。

 

 順に申し上げると、東山社長は、性加害は噂には聞いていたが知らなかったと言っていますが、事務所を擁護するタレント側の発言が、全くの嘘であることは日本人ならみんな知っています。

 この一連の問題は、既に2004年に最高裁で性加害が暴露され、当時ジャニーズプロモーション社長だった、ジャニー喜多川さんに有罪の判決が出ています。既に答えの出ている問題を、噂程度で無視すること自体が法律違反です。

 もし、ジャニーズ事務所や、企業や、テレビ局が、性加害に対して、何らかの見解を表明するなら、2004年の時点でしておかなければならなかったはずです。

 この時、社会全体がジャニー喜多川さんの行為を非難して、事務所との付き合いを断っていれば、その後、ジャニーさんが死ぬまで続けた性加害はなかったのです。(ジャニー喜多川さんは2019年7月9日に死去)。最高裁で法律違反と断定された性加害が、2004年から2019年まで、その後15年間も続けられたのです。結果、ジャニー喜多川さんは、自身の趣味を全うしたまま幸せにお亡くなりになったわけです。

 こう書くと、マスコミ関係者は、「確かにジャニーさんは問題だが、タレントは被害者だ。タレントをテレビに出さないと言うのは無謀だろう」。と言います。それは議論のすり替えです。タレントを使うことがいけないと言っているのではないのです。ジャニーズ事務所と付き合ってはいけないと言っているのです。

 使いたいタレントがあるなら、別会社を作ってタレントを移籍させればよいだけのことです。タレントも、ジャニーズ事務所から抜けて、自ら事務所を作ることだって可能なはずです。その際、ジャニーさんから圧力を掛けられないように、テレビ局は逆にジャニーさんを牽制して、使いたいタレントを守ってやらなければなりません。

 テレビ局とタレントが一緒になってこの問題を20年前に対処していたら、呆気なくジャニーズ事務所は消滅していたはずです。無論タレントは、仕事を失うことなく、今も悠々自適に活躍しているでしょう。

 少しでもジャニーさんの闇の活動を押さえるためにマスコミが動いていたら、物事はよき方向に進んだはずなのです。マスコミも、企業もタレントを使い続けておきながら、性加害に対して、「詳しいことは知らなかった」。と曖昧な態度に終始しているうちに取り返しのつかないことになったのです。

 

 そもそも2004年の裁判は、1999年に週刊文春が度々ジャニーズの問題を記事に取り上げたところから事件になりました。記事の内容は、未成年の時間外労働の過酷さ、飲酒喫煙の問題。待遇の劣悪さ、無謀な仕事上の圧力など。当初は事務所内のタレントの扱いが主な内容だったのです。

 それに対してジャニーズ事務所はすぐに文春を訴えます。文春の記事は、多くは聞き込みでまとめられていて、証拠に乏しかったために、一審では敗訴。そのため文春はより具体的な内容を集め、二審に臨みます。

 その過程で、性加害問題が浮上し、むしろこの問題こそジャニーさんの急所であることを知って、ジャニーズをやめたタレントなどから具体的な情報を集め、裁判に挑み、二審は勝訴します。

 そして、2004年に最高裁で、性加害が犯罪と認定され、ジャニーさんとジャニーズ事務所は敗訴します。こうまで明快な答えが出ていながら、その時、企業もテレビ局もこの問題に全く無関心なまま、タレントを使い続けたことは日本の国自体が無法であることを公言しているようなものです。

 今回の事件の発端となった英国BBCのテレビ番組も、性加害もさることながら、青少年の性の問題に鈍感な日本の社会を特集して、日本の遅れたものの考え方を危惧した番組を作ったのです。

 ここまでされて、企業はようやく気付いて、性加害をし続けるジャニーズ事務所とは付き合わないと宣言したのですが、遅すぎます。人に言われて根本的な考えを変えていては一流企業とは言えません。いけないことは20年も前からいけないことだったはずです。率先して模範を示してこそ大企業です。

 良く電車に乗っている親子で、子供が騒ぐと、お母さんが、「ほらそんなことをしていると、怖いおじさんが来て怒られるよ」。と、怖いおじさんの立場を借りて、自分が子育てをする責任から逃れるようなことを言う母親がいます。何がいけないことか、いけないことをしたら母親はどうするか、という問題がすっ飛んでしまって、「怖いおじさんが来るよ」。と言って子どもを黙らせるのは、子供に何がいけないかを伝えていないのです。無知な母親なら致し方ないとしても、大企業はそれでは許されません。

 「周りが騒いでいるから、とりあえずうちの会社もジャニーズとの取引をやめるか」。と考えているなら、犯罪を許していることと同じです。テレビはそれ以上に罪が深いのです。犯罪を犯罪と認識せず、周りが言うからやめるのでは、電車の母親と同じです。

 東山さんは、ジャニーさんのした行為を、「鬼畜の行い」と言っておきながら、その鬼畜の会社を守り、鬼畜の社長になってしまったことは、飛んだひょうきんものと言わざるを得ません。自身の言葉と行いがつながっていません。

 そもそもジャニーさんのしたことを噂でしか知らない、と言ったことが、この先の被害者への補償が不安になります。この先どんどん事実が突き付けられて、社長の嘘がばれて行くはずです。この人はここに出て来るべきではなかったのです。タレントとしても自身の人生も、最悪な道を選んでいます。

 ジャニーズ事務所は財産を取り崩して、謝罪、保証をしなければいけません。会社は解散すべきです。タレントは自由に移籍を認めるべきです。その上で、タレント養成を図りたいのであれば、経営者と社名を変えて、再出発すべきです。私がえらそうに語るまでもなく、この先はそうなる以外解決はないでしょう。

 気の毒なのは移籍も出来ず、芸能界にも残れない、まだ芸として形を成していない少年たちです。会社がどうなっても不幸なのは少年たちです。大変革の前に、一人の少年の人生なんていとも簡単につぶされて行きます。何の慰めにもなりませんが、腐らず、諦めず、良き道を探して行ってくれたらいいと思います。

続く