手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

伝統芸能の危機

伝統芸能の危機

 

 毎日、猿之助さんのことでマスコミは大騒ぎをしています。併せてジャニーズプロダクションの問題。そして、岸田首相の総理官邸の宴会騒動。更には、ガーシーさんが帰国をして、警察に捕まっています。

 一見それらな話は、どれも別々の出来事のように見えますが、実はある一点で共通しています。それは情報漏洩です。密告です。そもそも、猿之助さんのプライベートな生活を、誰かが情報を掴んで、文春に売ったことが事の発端でしょう。さらには、週刊誌の出る間際に、ゴシップが撒かれると言う情報を知った猿之助さんが過剰反応して、一家の自殺につながったのでしょう。

 果たして、自殺をするほどのことか否かは微妙なところです。歌舞伎であれ、ジャニーズであれ、芸能は色事と結びつきやすいものです。そもそも女形(おやま)の何人かはゲイであることはみんな承知しています。そうではあっても、芝居が芸術として昇華していれば誰も否定はしません。

 恐らく猿之助さんは、ゴシップが流れると知ったときに、周囲の人間がどれも敵に見えたのでしょう。心許せる人がいなかったのです。相当にハードな仕事を連日こなしていて、あらゆる責任を背負っていて、ストレスも溜まっていたのでしょう。それでなおかつ周囲が敵ばかりと言うのであれば、精神的に参ってしまいます。

 然し、同時に、自殺未遂は、松竹にとっては大打撃でしょう。ついこの間まで万全だった歌舞伎の世界が、吉右衛門さんが死んで、玉三郎さんが体調不良で、団十郎さんが家庭内のごたごたが続き、松本白鴎さんは老齢化し、息子さんの幸四郎さんも隠し子騒動でもめています。そこへもって来て大当たり間違いなしだった看板一座の猿之助さんが自殺未遂では明るい展望が見えません。

 3年に渡ってコロナで痛めつけられた後、やっと利益が出せるかと期待していた時に、今回の問題では、ひょっとすると松竹は倒産の可能性すらあります。

 いきなり倒産に追い込まれなくても、歌舞伎に関連した、衣装屋さんや、小道具やさんが我々にとっては大打撃です。彼らは古典芸能の貴重なアドバイザーなのです。衣装の色柄を決めるのでも、素人では決められない独自の世界観があります。そうした知識を持った人たちがリストラなどで去って行くと、その社会はどんどん薄い世界になって行きます。

 どうも、私は、今年になってからの一連の歌舞伎の問題が、この先歌舞伎を大きく揺り動かすことになるのではないかと思います。併せて、歌舞伎役者の仕勝手ってや、贅沢がどんどん許されない社会になって行くように思います。どうも今の歌舞伎が、最後の栄光のように感じますがどうでしょうか。

 

 同様にジャニーズ問題です。ジャニー喜多川さんと言う人がどういう人なのか、ジャニーズプロモーションと言う芸能事務所がどんな事務所なのかは、誰もが知っていながら語らなかった世界です。但し、未成年者に性加害を続けたことが闇が深いと言えます。

 それを必要悪と捉えて、未成年者を使い続けたことこそが問題です。売春はいけないと言いながら、依然として巷で、その手の仕事は残っていますし。黙認されていることに似ていますいます。

 ギャンブルも同じで、パチンコはようやく下火になりましたが、いまだに店の脇に換金所があって、堂々景品を現金に変えています。あれがギャンブルではないと言うなら、ギャンブル何てこの世に存在しません。それを警察が許している姿はみんな見ています。見ていながら、声高に叫ばないのは、そうした人たちと喧嘩をしてもいいことがないからでしょう。

 ジャニーズも同じです。未成年の性被害をいまさら大騒ぎをしていますが、あそこに行けば危険にさらされることは目に見えています。それを知って、子供を預ける親がいることもまた事実です。「そんなことは知らなかった」。と言えるでしょうか。胸を弾ませてジャニーズに入った思春期の子供が、ある日、家に帰って涙を流していたことはなかったのですか。

 あったならなぜその時に警察に訴えなかったのですか。これまで何千、何万と言う少年がオーディションを受けて、それら全ての親が気付かなかったのですか。いや親の責任だけではなく、そんな事務所と付き合ってきたテレビ局は、その行いの不自然さに気付かなかったのですか。

 気付いていたんでしょ。パチンコ屋さんの脇になぜか換金所があるのかという疑問と同じで、芸能事務所の裏には性被害があることは、テレビ局も、タレントも知っていながら見て見ぬふりをしていたのでしょう。

 カウアンさんと言う、タレントを私は今回初めて見ましたが、この人が堂々名乗りを上げるまでは性被害を誰も知らなかった、とは大ウソでしょう。みんな知っていたのでしょう。その後次々に名乗りを上げるかつてのタレントが出て来ましたが、彼らが売れるためには如何に苦悩を強いられてきたかと言う話は今初めて聞いた話ではないはずです。みんな知っていた話が表に出ただけなのでしょう。

 ジャニーズの代表が謝罪をして「初めて知りました」。とは、余りに常識はずれな謝罪です。今しなければならないことは、しらばっくれることではなく、早くに慰謝料を支払って、会社の体質を改めることです。そうでなければ被害者がどんどん出て来て、確実に大きく発展します。その性被害も単に、ジャニー喜多川さんと少年たちの間のことだけではないのです。

 この少年が欲しいと、喜多川さんに相談して、買春していた会社の社長もたくさんいたことは聞いています。ジャニーズは、裏で売春もしていたのです。少年たちは、テレビで活動する間を縫って、深夜には売春をさせられていたタレントもいたのです。無論全員ではありません。

 そのことは、ジャニーズだけではありません。女性タレントや、女優を抱えている事務所も同様です。無論、闇営業をやらないと言う女優もいます。芸能が色と結びついていると言うのは今に始まった話ではありません。

 然し、かつては誰もそのことを世間で話題にはしなかったのです。今は簡単に情報が売られてしまい、暴露されてしまいます。

 

 同様に、岸田首相の息子の、首相官邸の宴会騒ぎです。私が見る限り、あの程度のことは過去にも普通にあっただろうと思います。何で大騒ぎするのかはわかりません。

 そんなことより誰があの時の写真を週刊誌や、新聞社に売ったのですか。普通なら、仲間や家族の宴会写真などは外に出ないはずです。それがいとも簡単に外に出てしまうことが不思議です。いいか悪いかと言えば悪い行為ではありますが、だからと言って国会で審議するような話ではないはずです。

 統一教会はどうなったのですか、税収入の当てが無いままの子育て予算は本当にできるんですか。やるべきことはもっとたくさんあるはずです。岸田さんの息子の宴会写真などどうでもいい話です。

 

 日本人社会で密告や、嫉妬が蔓延して、それが金になる時代が来ると、あっけなく大企業や大物タレントは死んでしまいます。密告がはびこっていいことなど一つもありません。そんな社会が楽しいですか。いい社会ですか。

続く