手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

玉ひでから戻る

玉ひでから戻る

 

 私のブログを楽しみにして下さっている皆様には申し訳ありません。パソコンの具合が悪くて、昨日(15日)に書いたブログが発信されないまま、どこかに消えてしまいました。

 早朝(16日)にいろいろ操作をしてみたのですが、私の原稿は出て来ません。今日は玉ひでの公演です。朝が忙しい中、そのまま玉ひでに出かけなければならず、やむなくパソコンを放置して出かけました。今帰って来て、ブログを書き直そうと思います。

 

 今日の公演は、幸いに雨もやみ、快適な陽気になりました。

今日の出演は、初めが前田将太。卵の袋から紙卵まで、5分の演技です。このところ卵の手順も随分演じて来ましたので、大分手慣れたせいか安心して見ていられます。舞踊の形も身についてきました。これを演じている限り余り何かを言うことはありません。お客様にもよく受けていました。

 二人目は、早稲田康平さん。いつも通りの掴みのカードマニュピレーションからスタート。この掴みの演技は実際に受けもよく、半年前から考えると相当うまくなりました。ただカードをこれだけで終えてしまうのは勿体ないと思います。もう少し自分をアピールする何か素材を加味したほうが良いと思います。

 そのあとロープ切りから三本ロープ。これも無理なく手順が出来ていて安心して見ていられます。お客様の反応も良かったと思います。そしてカード当て、カードを適当に6つの山に分け、そこから適当に六人のお客様にカードを選んでもらうのですが、どうしたものか当たりません。カードが当たらないのは困ります。やむなく手順を変えて、選んだカードが、口の中から畳まって出て来るマジックを見せて終わり。6枚のカードが何をしたかったのかが分からず、少々未消化な終わり方。

 次は戸崎拓也さん。シルクのカラーチェンジから、結ばったシルクがほどけるマジック、そして20世紀シルク、いろいろあってお終いはファンテンシルク。シンプルなマジックばかりをつなげていますが、基本がしっかりしているため、とても面白く見ることが出来ました。

 こうした素朴な演技をすると戸崎さんはうまいですね。但し、このままでは印象が薄いままですので、どこかに個性をはっきり打ち出さなければならないでしょう。もっともっと遠慮をしないで、強く自分を押し出したらよいと思います。

 

 休憩後は私の手妻。今回は傘出しの手順から、双つ引き出し、そこから人力車に引っ込みまで。サムタイ、若狭通いの水。前田の金輪の曲、そして蝶のたはむれ。終演。

 言ってみれば私の仕事のメイン手順です。傘出しから人力車は、25日のリサイタルで披露するため、慣らしに演じて見ました。お客様の反応がいいため、気持ちよく出来ました。

 サムタイは毎度のお喋りですが、とても真剣に見られてしまい、と中、シーンと静かになってしまいました。

 若狭通いの水は、時々演じています。下手のテーブルにあるガラスの徳利に入ったオレンジジュースが下手の徳利に移ります。原案は江戸時代の作品で、徳利に入れた水が移動する手妻ですが、私がガラスの徳利でクリアに演じられるように大きく改案しました。

 そのあと前田の金輪の曲。これも玉ひでではたびたび演じています。大分手慣れて来ました。

 そして蝶。いつもの通りです。今日は安定した演技でした。

 

 さて、急ぎ自宅に戻って、道具をかたずけ、そして明朝の猿ヶ京の荷物をまとめなければいけません。明日は、猿ヶ京の稽古場に藤間章吾先生を招いて、実際に道具を使って演技をして、それに振り付けをしてもらいます。まだまだ道具の不備もありますので、今晩は徹夜で修理をしなければならないかもしれません。こんな日があってもいいのです。やるべきことがたくさんあるのは、私の取っては幸せなことです。

 

明日はブログを休みます。

 

 10月25日。藤山新太郎リサイタル公演。「摩訶不思議」。座高円寺、18時30分スタート。入場料前売り4000円。詳細は東京イリュージョンまで。