手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

終わりなき戦い

終わりなき戦い

 

 ウクライナとロシアの戦いがなかなか決着を見ません。最近ではニュースでも、時間を割いて戦況を語ることが少なくなりました。毎日毎日戦争が続いていることは事実なのでしょうが、詳細が分かりません。

 ロシア軍に被害が出ていることは事実のようです。連日ウクライナはドローンを飛ばして、ロシア人が守っている要塞を攻撃しているようです。その戦果が、戦車を倒したとか、輸送車を破壊したと言う情報は流れて来ています。

 然し、同時に、ロシアからもドローンやミサイルが飛んできて、ウクライナ軍にも少なからぬ死者が出ています。又ウクライナ住民の被害が大きく、無差別で、ウクライナ国民の民家が破壊されています。

 形勢は互角か、ウクライナが少し有利なのではないかと思いますが、戦死者がたくさん出てもロシアはすぐに兵を補充して、固く要塞を守っていますので、全く解決には至らないようです。

 こうして塹壕を作ったり村ごと要塞化して闘う戦争は、ロシアが歴史的に繰り返してきたことで、ロシア兵の死者は累々と積み重なっていても、彼らは全くそのことを意に介さず戦争を続けます。第一次世界大戦の時も、第二次世界大戦の時も、ドイツ軍の数倍の死者を出しながらも戦い続けたのです。

 ロシア(当時はソ連)と戦えば、必ず消耗戦になって行き、互いが武器や燃料食料が尽きて撤退するまで続きます。第二次世界大戦の際のレニングラードスターリングラードなどの戦いは、まさに消耗戦で、ロシアは徹底して都市を守り抜いて、結局ドイツ軍が音を上げて撤退するまで続いたのです。その代償は第二次世界大戦で、ドイツ軍350万人の死者に対して、ロシア軍は2000万人の死者を出しています。日本軍の死者が300万人であったことを思えば、ドイツ、ロシア共にとんでもない消耗戦をしたことが分かります。

 特に、ロシアは民間人が1200万人も死んでおり、兵士と合わせて3200万人の死者が出ています。当時ロシアの人口は1億7千万人でしたから、5分の1の人口が大戦で亡くなったことになり、その後ロシアは今日に至るまで戦前の人口が回復することがないのです。

 そうした過去を考えたなら、ロシアと戦うことがいかに困難かが分かります。つまり、戦争が長引いて塹壕に籠って攻め合うようになれば、ロシアは決して負けないのです。ロシアを打ち負かすには、かつての日露戦争の時にように、短期間に大きな戦い(黄海海鮮、旅順港攻撃、奉天開戦、日本海海戦等々)で勝利して、すぐさま和平工作に乗り出さない限り、長期戦になれば、小国は大国ロシアに勝利する可能性はありません。

 今の現状を考えると、NATOが本格的にまとまってロシアを攻撃しない限り、ウクライナの勝利はありません。でも現実にはNATOはそこまでの戦いをしようとは思わないでしょう。結局消極的な支援を繰り返していても、ウクライナの勝利はあり得ないのです。

 そうであるなら後は外交で、少しでも有利な交渉をする以外道はありません。そのロシアとの橋渡しは誰がするのか、と言えばトランプさんでしょう。世の中は上手くしたもので、必ず適材適所に人材が現れるのです。トランプさんは必ずウクライナとロシアの交渉に乗り出すでしょう。

 トランプさんは超現実的な人ですから、イデオロギーも政治哲学も関係ありません。経済が悪くなると思えばさっさと手を引きます。恐らくロシアに対して、ウクライナの東部4州と、クリミア半島を渡して、政治決着を試みるでしょう。当然ゼレンスキーさんは大反対をするでしょう。そこで、ウクライナのメンツを立てて東部4州の内1州をウクライナに戻すなどして決着をするでしょう。

 このトランプさんの裁定に内心欧州連合はほっとするでしょう。これで軍事支援をしなくて済むし、ロシアとの関係も回復するからです。然し、これですべてが丸く収まるかと言うと、そうはならないでしょう。

 欧州対ロシアの交渉をじっと見ていた中国は、欧州が如何に立派な哲学を振りかざしたとしても、経済不況が自国に及べば忽ち欧州の結束も乱れると読むでしょう。そうなら軍を動かしてごり押しすれば、台湾は取れる、と判断するでしょう。

 中国にとって、いや習近平さんにとっての悲願である台湾進攻は、案外簡単に攻め取れるのではないか、と邪推するでしょう。欧州やアメリカはいろいろ奇麗ごとを言っても、結局他人の争いには無関心なんだ。と知ります。

 そこで世界紛争は、ウクライナから台湾に移ることになります。しかも、トランプさんが大統領になれば、東アジアの米軍は必ず縮小されます。トランプさんは、朝鮮半島も、日本も、台湾も、それはアジア自身で守って行く事であって、本来アメリカが関与する理由はないと考えています。正に中国にとってはチャンスです。

 然し、然しです、いま中国は最悪の経済状態です。不動産バブルが弾けて、半導体が振るわず、EV車が売れず、国や地方自治体の債務が兆を超えて、京(けい)と言う位になっているそうです。人類始まって以来の京の位の借金です。

 それほどの負債を抱えて、どうして共産党が崩壊しないのかと言うなら、ウクライナ戦争に忙しいロシアがあらゆる物資を中国から買っているからです。隣国が戦争をすれば、近隣の国は大儲けをします。そのお陰で中国は今のところは輸出が好調なのです。然し、ロシアがウクライナ侵攻を終結させれば、景気は落ち込みます。中国の本当の不況は、これから数年後、ウクライナ戦争が終結した後にやって来るでしょう。

 ロシアは、世界中から経済封鎖をされながらも、実質の経済は維持されています。維持できている理由は、石油や天然ガスが売れているからです。そして売れて儲かった金は、軍事物資の生産費用に回しています。お陰でロシアの軍事工場はフル稼働で、儲かっています。欧米がいくら経済制裁をしてもロシアはびくともしません。

 但しこのまま軍事にばかり金を賭けていると、国全体はやせ細って行きます。長い目で見たならロシアのやり方は国を滅ぼします。戦前に日本が戦艦大和を建造していた時に、東北地方では餓死者が出ていたのです。今のロシアも似たようなものです。

 但しロシアが完全に疲弊するにはまだ10年20年かかるでしょう。幾らウクライナがうまく戦いを進めても、大国ロシアはそう易々とは敗北しないのです。残念ですが、ウクライナの健闘はこの辺りで手を打たなければならなくなるでしょう。

続く