手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

名古屋指導

学生の傘出し

 私が学生の傘出しを見ることは普段はないのですが、このところ私のYouTubeに学生さんが演じている傘出しの絵が映ります。前嶋さんと書いてあります。どこの学生さんかはわかりません。でも、なんとなく形がいいものですから、もしやこれはと思って映像を見てみました。

 いいです。とてもいい演技です。傘を出しながら一つ一つ形を作って行きますが、結構形になっています。多分、どなたか舞踊家に習っているのでしょう。型がしっかりしています。手順は、傘あり、面あり、扇子あり、衣装変わりあり、と、賑やかです。ところどころ、大樹が出てきたり、台湾の扇子の手順が出てきたり、エスニックな演技が見え隠れしますが、私なんかよりもよほど色々なことをしています。

 傘を出すたび、花吹雪が散るところなどは、東大の流れを受け継いでいるのでしょうか。そもそもが東大の学生さんなのかもしれません。

 和の世界では無暗に吹雪を散らすことは禁じ手です。吹雪は重要な素材です。演者の心の表現を伝えるものですから、安易に使うことはできません。傘を咲かせるたびに効果として吹雪を撒くことは許されません。

 しかしアマチュアがされる分には一向にかまいません。

 ただ、これだけできるなら、余り、物を出すことにこだわらずに、もっともっと世界観を表現していったら、立派な本物の芸になると思います。今の演技ではいかんせん物を出すことに集中しすぎて、中盤から飽きがきます。出すことが目的になって、出した素材でどのような世界を見せるか、と言う「芸能」がありません。

 物を出している時だけがお客様とつながっている時で、物を出し終えてしまうとお客様と気持ちが離れてしまう、アマチュアの演技の典型のパターンです。

 演技の前半で、傘を三本出します。左手に傘のろくろを向かい合わせでつかんで二本の傘を持ち、右手で、空中から一本傘を出します。効果は満点ですが、この演技を前半で見せてしまうと、後することがなくなります。そもそも傘を三本出したら所作が出来なくなります。結果、出したものを捨てるしか手がなくなってしまいます。出しただけで捨てるなら、出す意味はありません。プロはこうした手順は作りません。

 でもアマチュアでこれだけできれば十分です。少なくとも、袴をはいて大股に蟹歩きして出て来る学生の傘出しを思えば、数段上の演技です。アマチュアとしては最高点でしょう。ローカルなコンテストに出たなら、優勝できるでしょう。

 

名古屋指導

 昨日(8日)は午前10時から名古屋のご指導です。コロナの影響で、参加者は二人だけ、二人で5時間の指導を独占です。贅沢な時間です。お二人とも熱心で、毎回欠かさずいらっしゃいます。もしどちらかが辞められるようなら、名古屋の教室を閉めようと考えています。お一人は蝶のお稽古をしています。蝶は、指導料が別格です。しかも10回の指導料を先納していただきます。途中で来なくなっても返金されません。勿論来る以上は、ご指導をします。このため、後二回、来年1月までは名古屋教室を閉めることはできません。

 コロナさえなければ、名古屋教室は毎回5人程度のご指導をしていたのですが、このコロナ騒動で、色々生活のスタイルも変わってしまいました。良くも悪くも今の状況を受け入れて生きて行くほかはありません。

 それでも東京は生徒数が増えています。何のかんのと私から習いたい人は多いようです。特に手妻に関しては、他に指導している人もいないようですので、私の所に集中します。実際私から習って、それで舞台に掛けて生活している手妻師もかなりいます。生きて行く手段として役に立つなら幸いです。

 来年2月26日には、マジックマイスターと言う、アマチュアさんの発表会を開催します。大半が私の所で指導を受けている方々です。年に一度、本格の舞台で、音響、照明さんを頼んで、舞台を踏みます。プロマジシャンも何人か、ゲスト出演していただきます。実に気持ちのいい舞台です。

 毎回アマチュアさんだけでも15本くらい出演していましたが、今回は、コロナの影響で、出演者も減っています。恐らく10本程度でしょう。その分ゲストを増やすなどして、安定した舞台を作ります。ご興味ございましたら、東京イリュージョンまでお問い合わせください。

 

 今日(9日)大阪指導を終えて、東京に戻ります。今週末は、猿ヶ京の合宿です。もう11人が集まりました。面白い会になると思います。毎年、春と秋に合宿を開催しています。猿ヶ京は、稽古場の裏が、町営温泉になっています。大きな温泉場で、サウナや露天ぶろ、滝ぶろなど一通りそろっています。

 ここもコロナの影響で、大きく観客を減らしています。猿ヶ京そのものが限界集落に近く、人の数が少ないため、この先町営温泉が維持されるがどうか心配です。何もかも色々なところで町も国もうまく機能しなくなってきていますが、何とか面白く楽しく生きて行けるように、我々は工夫してゆきたいと思います。

 

 今月15日に、夕方6時から、NHKのBSでクールジャパンと言う番組があり、そこで「手妻」が取り上げられています。私がかなりの部分出演します。願わくば、この番組が多少なりとも話題になり、イベントの依頼が2,30本来ればいいと考えています。

 クールジャパンはその後も教育テレビや総合テレビで再放送され、合計5回放送されるそうです。有難いです、同じ内容で、五回も使っていただいて、

 NHKさんはまじめな会社ですから、再放送されるたびに再放送料が振り込まれます。律儀な会社です。但し、金額があまりにわずかで、銀行の通帳を見て、「この金は一体何の金だろうか」、と毎回首をかしげてしまうような謎多き金額です。頂けることに不満はありませんが、出来ることなら、もう少し芸人が夢と希望が持てるようなギャラをください。

 それから、6日、深夜に撮った奈月太夫の水芸は12月に演芸番組で放送されます。大樹も出演します。

 私の蝶の演技は、お正月の同じ番組で放送されます。こちらも世間の話題になって、仕事の依頼が来ることを願っています。

続く