手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

ヒカキンさんが心配

 YOUTUBEで話題のヒカキンさんはまだ画像で見ただけで、お会いしたことはありません。話題の人であり、大変な努力家であることはわかります。ヒカキンさんのような人が出るとたくさんのYOUTUBEERが現れて、世間に話題を提供するようになります。

 ただ、外見だけで見ていて、その人をあれこれ言うことは正しいとは思えないのですが、私が見るに、どうもヒカキンさんの健康が心配です。画面では結構陽気にふるまわれていて、大胆な行動を次々に見せてくれますが、私の見るところヒカキンさんは決して陽気な人ではなく、周囲を楽しくさせるために、あるいは自分自身を奮い立たせるためにいろいろなパフォーマンスをしているのではないかと思います。

 

 つまり、本当の自分自身の姿とは違った形で、仮面をかぶったまま、かなり精神的には自分の望まないことを無理してやっているように思います。世間ではヒカキンさんの収入にばかり興味が集中して、ヒカキンさんのすることには細かく注意を払っていないように見えます。私から見ると、まるで命を削って仕事をしているように見えます。初めは自分自身が面白そうという、単なる興味で始めたことでしょうが、今となっては趣味ではなく、十分企業活動をしているのと同じです。

 企業であるなら、自分が望むと望まなに関わらずやらなければならないことが毎日続きます。当初は好きで始めたことも、今となっては好きを通り越して完全に仕事化してしまっているのでしょう。こんな生活を送っていると、やがて自分自身が見えなくなってしまうのではないかと思います。

 こんな時、ぱっと気分を変えられる性格なら、うまく続けて行ける可能性もありますが、ヒカキンさんを見ていると、このタイプの人は日々の些末なことを引きずって生きて行きそうですし、精神的にも相当にデリケートな人に見えます。

 こうしたタイプは芸能人に結構多いのですが、芸能人は、元々欲があって芸能活動に入る人が多いために、欲の部分と遊びの部分、そしてプライベートの部分を早いうちから使い分けができている人が多いように思います。ヒカキンさんのように、遊んでいる内に話題になって、それが仕事化してしまった人は、何が何だかわからない内に自分の周囲に雑用が集まってきて、やがて人と交わっているうちに自分を見失ってしまう人が多いのではないかと思います。

 こんな状況で、ヒカキンさんは、案外自分は今やっている活動が自分に向いていないと気付いているのかもしれません。「えらい世界に入り込んじゃった」。等と後悔しているかもしれません。

 

 有名になれば何でも手に入って幸せだ。と思うのは素人の考えで、その渦中にあって活動している人にすれば毎日毎日が修羅場です。とても記憶しきれないようなスケジュールを毎日こなさなければならず、合った事もないような人と毎日話をしなければならず、知らない人に会って話をすると言うのは、精神的な負担が大きく、とんでもないエネルギーを使います。

  テレビに出演する姿を見ていると、あまりテレビは乗り気でないように見えます。かなり無理しているのではないかと思います。小池百合子さんとの対談も、決して望んでしているようには見えませんでした。当人にとってテレビは一番苦手な仕事なのではないかと思います。そもそも人と会話をすることもあまり得意な人ではないのかもしれません。対談の後は、きっとストレスが溜まっていたはずです。

 

 忙しければ、金を使う暇がありませんから、金はどんどん溜まります。溜まるのはいいのですが、それを目当てに人が集まります。そうした人たちから資産運用の話があったり、投資を持ち掛けられたり、思いもよらない依頼を受けて毎日決断を迫られます。そんな用事はきっとやりたくないはずです。

 まったく毎日毎日が何をして生きているのかもよくわからないまま、ただ忙しく生きなければなりません。

 

 私がかつて、北野武さんなどとお付き合いのあった時には、彼らはひたすら忙しく働いていました。いつ会っても顔色が悪く、起きているのか、寝ているのかもはっきりしないような顔をしていました。全く休みが取れないのです。

 そんな姿を見ていて、私はうらやましいとは思えませんでした。売れているのは結構なことですが、人一人生きて行くのに、そんなに金は必要ないのです。いくら金になると言っても、次から次と仕事が詰め込まれてゆくことは責め苦です。

 どうもヒカキンさんを見ているとそうした人生に入り込んでしまって、体を消耗しているのではないかと思います。自分の望まない生活を繰り返していると、ある日、頭も体も動かなくなってしまいます。最近のヒカキンさんを画面で見ていると、太く短い生き方をそのまま突っ走っているように見えます。寿命が心配です。

 長生きするためには、ここらで本当に自分のしたいこと、ストレスの解消法、など自分で自分をコントロールしてゆくことが大事です。お会いしたこともない人にこんなことを書くのはおかしなことですが、好きで始めた仕事で押しつぶされてゆく人を何人か見ていますので、気になったので書きました。