手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

世界同時不況が来る

 多くのマジシャンは、コロナウイルスでスケジュールはズタズタにされ、次なる舞台の仕事のチャンスも見つからず、こんな時代にどう生きたらいいかは大変に難しい問題を突きつけられています。これまで、ちゃんと勉強して、たくさん知識を身につけたマジシャンでも、現実に、この先どう生きたらいいかと言う問題に直面したなら、みんな悩みます。

 勿論それが人生ですから、頭がよかろうが、専門知識があろうが、次に起こる問題に関しては誰もが白紙状態で、一から考えなければいけません。ただ、不幸中の幸いは、今回のコロナウイルスは、世界中みんな平等に苦しんでいます。知識のある人もない人も、貧しい人も豊かな人も、地位の低い人も高い人も、同時スタートなのです。

 そこからどう抜け出すかは、個人個人の才能にかかっています。それなら、自分の才能や、運や、人脈を利用して、何とか活動してみる価値はあります。

 

 但し覚悟しなければなりません。これから来る不況は、単なる不況ではありません。世界同時不況です。いわば昭和3年世界恐慌と同じ規模の不況が来るでしょう。なぜならば、アメリカ、イギリス、フランス、イタリアと言う先進国が軒並みロックダウンをして、自国の経済を疲弊させてしまったからです。そうした先進国に引っ張られて、韓国、中国、ロシアと言った中進国は簡単に自力では経済復活できないでしょう。更には、まだコロナウイルスが広がっていないアフリカ地域で大きな感染が起きないとも限りません。

 言ってみれば世界の先進国中で日本だけがコロナウイルスの被害を大した受けなかったのです。それでも現状を見ればズタズタの経済です。ズタズタにしてしまったのはロックダウンを受け入れたからです。ロックダウンは決してやってはいけない悪手なのです。これをすると国の経済が破綻します。「それほどのことにはならないだろう」。と思っている人がありますが、とんでもない。

 前回書きましたように、網の目のように組まれた人々の生き方をひとたび切り取ってしまうと容易な事では繋がらなくなります。その危険に気づいていないのです。この先、ロックダウンをしたイギリスもアメリカも、国としての活力を失ってゆきます。

 コロナウイルスを広がらないようにするなら、具合の悪くなった人を病院に送ればいいだけの話です。全く健全に働く人すべてに、「仕事をするな」、「店を開くな」、「家で寝ていろ」、そんなことを要求する政府がありますか。

 それがために休養保証をする。と言って、せっかく集めた税金を再度ばらまき始めています。それも10万円。10万円が何の役に立ちますか。せっかく集めた税金をばらまくのは愚策です。何もするな、金は払う。と言うのは、国を上げて国民をニートに育て上げることにしかなりません。

 おまけにルールを守らない人をやり玉に挙げて、攻め立てます。外出するな、と言うのは自粛であって、法律ではないはずです。パチンコをしようが、河原でバーべキューをしようが、個人の勝手のはずです。人が自分の金でパチンコをして何がいけませんか。それを自警団のような連中がパチンコ屋にまで入り込んで、お楽しみの中のお客様をやめろと言う理由はどこにありますか。それをまたマスコミはニュースに流して悪者に仕立てる理由がどこにありますか。河原でのバーべキューがなぜいけないのですか。50人以下の集会なら問題ないでしょうし、しかも河原です。誰にも迷惑はかけていないでしょう。

 あんな姿を見ると、日本は村社会です。自分が正しい道を行くために自らを律して生きるのは美しいことです。然しそれを第三者に押し付けて、こう生きろと命令することは誤謬(ごびゅう)です。昔、昭和19年ごろ、私の親父が、楽器を持って慰問の興行に行こうとしたときに、国防婦人会に囲まれて、「この戦時の時に、楽器をもって歌を歌っているとは何事か」。と攻め立てられたのと同じことです。戦時であろうが、平和な時期であろうが、芸人は、面白いことを言って、歌を歌って人を慰めるものなのです。それを第三者からとやかく言われる筋合いなどないのです。「これが俺の仕事だ」、と、いくら言っても、「不謹慎だ」、と言って聞き入れようとしない戦時下の人に親父は悔しい思いをしたでしょう。然しそれと同じことをいま日本人はバーベキューをする人に罵声を浴びせています。コロナウイルスのニュースを見て、「あぁ、結局、日本人の頭の中は昭和19年以来全く成長していないのだなぁ」。と思いました。自粛自粛と言いながらも、人は人を強制しているのです。

 

 ロックダウンのお陰で、子供はいまだいつ学校に行ったらいいのかもわかりません。デパートとも、ホテルも自警団のような連中が鵜の目鷹の目で見ています。人の批判を受けるといけないため、おっかなびっくりで再開もできません。人の生活を邪魔して何が楽しいのでしょう。

 それでも海外から比べたら日本の現状はまだましな方なのです。つまり海外はもっとひどい状況なのです。これまでマジシャンは、例えば、ヨーロッパが不況だったら、アメリカに行ったり、アジアで稼いだり、あの手この手で世界を回っているうちに何とかなりましたが、この先はどこも不況です。そんな中で多少経済の回復が早くなりそうなのは日本でしょう。でもその日本がいまだ混沌としています。

 

 私自身も責任を感じていますが、5月9日に地震が来ると以前に書きました。多くの人は11日が危ないと書きました。しかしどちらも地震は来ませんでした。良かったと思います。これで地震が来ていたなら、日本は壊滅的な打撃を受けたでしょう。

 しかし、だからと言って、もう地震は来ないのかと言うとそうではないでしょう。いつとは区切れないまでも、大きな地震が来る可能性は消えてはいません。但し、今を天から与えられたチャンスだと思うことです。今こそ地震の対策をしておくべきです。古い橋や、古いトンネルは点検しておいたほうがいいでしょうし、古い建造物も対処しなければならないでしょう。今、地震災害が起こらなかったことを幸いとして、補修や、整備に費用をかけたなら、めぐりめぐって経済もよくなってゆくでしょう。

 

続く