手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

黒海艦隊撤退

黒海艦隊撤退

 

 クリミア半島を守っていたロシア軍の黒海艦隊が、ウクライナ軍の度重なる攻撃に耐えきれず、とうとうクリミア半島から撤退したようです。黒海艦隊が退去したことで、大きな転機になりそうです。

 そもそもが、ウクライナ侵攻の始まりは、クリミア半島の占領から始まったのですから、ここでクリミア半島を手放してしまうと、ロシアとしては全くの振り出しに戻ってしまいます。逆に言えば、それだけウクライナ軍の攻撃が成功したと言えます。

 まだクリミア半島全域の奪還には時間がかかるでしょうが、ロシアの抵抗が弱まれば、ウクライナのクリミア開放はそう遠くないうちに達成するでしょう。

 プーチンさんとしては大きな失敗になります。なおかつ、クリミアが採られたとなると、ロシア軍にとっては、これまでの戦いが何だったのか、戦争そのものの意味を問われることになりますので、ロシア国内で一層の厭戦気分が広がって行くでしょう。

 ロシア人の中でも20代30代の若い人たちから急激に厭戦意識が広まっているそうです。実際、ロシアがウクライナ侵攻したことは欧州からの経済制裁を受け、必要な物資が入手できなくなり、物価が急騰し、税金が上がり、石油までも高騰して入手困難になっています。つまり生活して行く上でいいことなど一つもないのです。

 この状況が3年も続けば、誰でも今の戦争に疑問を感じるのは当然です。徐々にプーチンさんへの不満も募っているでしょう。そうならロシア国内で内乱が起こるかと言うと、どうもそこまでは行っていないようです。もっともっとロシア経済が追い詰められて、どうにもならない状態に至ってからでなければ政変は怒らないでしょう。

 今のところは欧州が積極的にジェット機や戦車、ミサイルなどをウクライナ軍に提供していますので、ウクライナ軍は活気づいています。聴くところによるとNATOウクライナ政府に8兆円の経済支援を約束しているそうです。

 この支援が2年前だったなら、ウクライナ軍は劇的にロシアに対して勝利をしたに違いありません。随分無駄な戦争をしたことになります。アメリカからも大きな支援が得られる予定ですが、仮にトランプさんが大統領になれば、ウクライナ支援は大幅に減額されるでしょう。特にトランプさんが今回選んだヴァンス副大統領は、トランプさん以上にタカ派であり、保守的で、徹底的にウクライナ支援に反対しています。欧州のことは欧州で解決すべきと言うのが彼の言い分です。

 この秋トランプさんが大統領になると、アメリカ政府のウクライナへの予算は大きく削られ、戦略を後退せざるを得なくなります。そうなるとロシアの敗北はかなり遠のくことになりそうです。然し、いずれにしても、今回のクリミア半島からの黒海艦隊撤退は、その後のロシア軍の勝利の可能性が薄くなってしまいました。遅かれ早かれロシアは敗北するでしょう。

 ロシアとすれば、先月まで希望していた東部4州プラスクリミア半島割譲と言う、好条件での和平交渉はもう不可能でしょう。既にクリミア半島を失っています。このままでは東側4州すべてを維持することも難しいかもしれません。当初の目論見の半分くらいしか達成できない可能性があります。

 それでもプーチンさんが渋々にでも納得できるなら、巧い具合ですが、交渉は難航するでしょう。ロシアにはこの先勝算が見えません。すでに物資が枯渇していますし、ストックしていた武器もいよいよ底を尽きようとしています。頼みの綱の北朝鮮製の武器も余り当てにはならないでしょう。

 衛星国のジョージアベラルーシュも、このところNATO寄りの姿勢をちらつかせていて、これではプーチンさんを相当イラつかせているでしょう。こうなるとプーチンさんは四面楚歌の状態です。どうやらロシアの敗北は近付いています。

ゼレンスキーさんのこれまで3年間の功績は偉大です。これで和平交渉が成功すれば、自国は独立し、NATO加入は成功し、ノーベル平和賞の授与の可能性も生まれるでしょう。そうなると歴史に残る名大統領になるでしょう。

 何にしても一刻も早く戦争をやめて、経済復興に全精力を傾けないと、世界の景気がどんどん悪くなります。

 

 どうも人は頂点を極めたその次の瞬間に転落する人が多いように思います。プーチンさんも、コロナ前までは、歴史に残ろ偉大な政治家として全うできる立場にいたのです。それがウクライナ侵攻を始めた途端、自国の欠点が海外に知られ、ロシア軍の弱体化が暴露されました。それにつれてプーチンさんの政治がほころび始めました。

 「強気強気で外国に向か言っていたにもかかわらず、案外その力は大したものではなかった」。ことが見えてしまいました。

 どうやらプーチンさんにとってはウクライナは踏み入れてはならない禁断の土地だったようです。ウクライナ侵攻はもう終盤戦になっていると言えるでしょう。そうなら一刻も早く戦いを終えてウクライナの復興に費用を廻すべきでしょう。こんな時こそ日本の出番のはずですが、日本の次の総理大臣が誰になるのか、まだ混沌としています。とてもウクライナやロシアに乗り込んで、和平をまとめ上げるような人は出て来そうにありません。どうにも頼りない人が出て来て、結局戦争を長引かせるのではないかと心配になります。アメリカも心配、日本も心配です。どうしたらいいのでしょうか。

続く