手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

プリゴジンさん暗殺

プリゴジンさん暗殺

 

 何とも呆気ない最後でした。小型飛行機に乗って、モスクワからサンクトペテルブルグに移動しようとした、プリゴジンさんとワグネルの将校たちが、ミサイルによって、一瞬に撃ち落され、全員暗殺されました。

 誰がやったかは明らかでしょう。然し、ロシアのニュースはそのことを一言も報道しません。散々ロシアのために働いた、プーチンさんにとっては古い仲間だったプリゴジンさんを、用事が済めばいとも簡単に粛清してしまいます。ロシアの政治家の伝統的なやり方です。この国に民主主義などありません。強いものが正義です。

 プリゴジンと言う人は、敵ながらはっきりと物を言う人で、行動が明快です。困ったときにこうした人が近くにいることは、政治家にとってとても助けになるはずです。実際ウクライナ戦線では抜群の活躍をしました。案外ウクライナ侵攻も、プリゴジンさんによって早期に達成を見るのではないかとさえ思っていました。

 戦場でもロシア兵は縮こまって、逃げ惑うばかり、ロシア軍は消極的で、大きな作戦を立てようとしない。恐らくプリゴジンさんにすれば友軍に歯がゆい思いをしていたのでしょう。ワグネルだけが必死に戦っても、それではロシア軍が戦っていることにはなりません。

 プリゴジンさんは、戦場のロシア兵を見て、明らかにこの戦いに嫌気がさしたのでしょう。マスコミに向かって、散々ロシア軍に対しての不満を語っていました。思い余って、ウクライナの戦場から、自軍を引き連れ、モスクワに向かって行進したときに、躊躇しないでモスクワへ入っていたなら。あるいは大きな革命に発展していたかもしれません。

 うっかりプーチンさんの説得を聞いてしまったことが運命の分かれ道だったようです。まったくお気の毒と言うほかはありません。

 ただ、ロシアと言う国が、こうして仲間をあっさりと粛正する国であることが世界中に知れ渡りると、世界ではもうロシアの味方をする国は現れないでしょう。

 第一、ウクライナの戦線はどうするのでしょうか。ロシアの兵士は、どんどん前線から離脱して、ウクライナ軍に投降しています。ウクライナ軍は、携帯電話や、通信機で、ロシア軍の投降を呼びかけています。

 投降すれば、すぐに温かい食事と傷の手当てをして、保護することを約束しています。それに応えて、連日、ロシア兵から、投降したいと言うメッセージが大量に届いているそうです。但し、実際の戦線では、将校の目が光っていて、簡単に戦線を離脱することができません。そのため兵士は投降のノウハウをウクライナ側に尋ねているのです。

 何とも頼りないロシア軍です。それにしても、唯一本気で戦っていた、ワグネルの指導者を粛正して、この先どうやって、ウクライナに勝とうと言うのでしょうか。

 

 そのウクライナの戦いですが、三日前、クリミア半島に、ウクライナ軍が上陸して、ロシアの拠点を襲撃しました。相当な激戦になっているようです。それでもとにかく、半島に上陸したことが大きな成果です。本来なら軍艦を使って海から攻めたなら、次々にクリミア半島の拠点を落とすことができるでしょう。然し、ウクライナ海軍はお粗末です。大した戦艦を備えていないのです。そのため陸戦で一歩一歩陣地を押さえて行く以外ありません。

 それは時間と兵士の損傷を強いることですが、そうする以外解決がないようです。

但し、クリミア半島に攻め込まれたと言う情報は、ロシア軍にとって、衝撃は大きいようです。そもそも、10年前にクリミア半島を制圧したときには、何ら大きな反攻が起きないままロシアは勝利しました。

 そのことは、ロシア兵にすれば、ウクライナ人はロシア軍を歓迎しているんだ。ロシア国民になりたがっているんだ。と思い込んでしまうに十分な状況だったのです。ロシア兵にすれば、クリミア半島侵攻は、何ら罪の意識はなかったのです。

 ところが、今回は大きく変わっています。戦いはどこでも激しい反撃があります。常に地雷に悩まされ、ドローンと迫撃砲がどこからともなく飛んできます。市民は全く非協力的で、時にはゲリラとなってロシア兵に発砲してきます。

 ロシアを出る時には、彼らはウクライナの間違った政治姿勢を正すため、と言われてやってきたものが、実際来てみると、誰もロシア軍を望んでいないばかりか、敵対心に満ちています。

 今戦っていることが、本当に正義の戦いなのかどうか、ロシア軍はウクライナ市民にとって一つも役に立っていないのではないか。よくよく見れば、明らかに他国を侵略しているロシア軍の中で戦っていると言うことは、兵士にとっての大きな不安なようです。それはそうでしょう。

 ロシア兵にすれば、このまま基地を守りながら、攻撃され、撃ち殺されて、野晒にされるくらい情けないことはないのです。何のためにクリミア半島にいなければならないのか、自問自答しているのです。

 

 クリミア半島ウクライナ軍の拠点が出来たなら、徐々にクリミア半島ウクライナの掌中に落ちて行くようになるでしょう。そうなると、今回の戦いはウクライナ侵攻のターニングポイントを迎えることになります。

 東部を制圧するのはもっと時間がかかると思いますが、ロシアが本来したかったのは、クリミア半島のロシアの軍事基地をより強固にするために、海岸沿いの地域をロシア領にして、クリミアへの物資輸送をより強固にする。と言うのが目的だったのです。それが、クリミア半島が取られてしまっては全く目的を失ってしまいます。

 NATO軍からウクライナ軍に、次々と戦闘機や、戦車が届いてきています。この先は案外早くにクリミア半島を奪還できるのではないかと思います。そうなるとロシア軍は守勢に回り、徐々に拠点を失って行くでしょう。

 それでも年内の終戦は無理かもしれません。でもそう遠くない将来に終結するでしょう。プーチンさんはやらなくていい戦いを無理強いして晩節を汚し。ロシアを地獄に落とし込みました。その責任は重大です。

続く