手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

クリミア半島

クリミア半島

 

 このところウクライナでの戦いは、東部は一進一退のようで、あまり大きな進展はしていないように感じられますが、実際には、着実にウクライナ軍は前進しています。但し、ロシア軍も、塹壕を掘ったり、基地をしっかり作り上げていますので、そう簡単には押し込まれることはありません。

 両軍ともに消耗が激しく、多くの犠牲を出しつつ戦いを続けています。むしろ、南部のクリミア半島方面が、攻略がうまく行っているようです。ウクライナ軍は、クリミア半島につながる3つの大きな橋をすべて破壊して、クリミア半島に物資が渡らないようにしました。

 クリミア半島は、半島と言いながらもほぼ島で、3つの橋を利用することで、物資の輸送も、水も電気も対岸から運んでいました。つまり、橋がなければ生活が成り立たないのです。半島には軍港や、基地がたくさんありますので、半島のロシア軍にとっては、物資が届かないことは、戦争を継続すること自体が不可能になります。

 無論、海路を利用して、船で輸送すればいいのですが、水も電気も、となると船の輸送では無理です。それでも武器や食料を船に頼っていますが、ロシアの軍艦も商船も、このところウクライナで開発した、ボートを利用したドローン(無人の爆撃ボート)によって、次々破壊され、大きな損害を被っています。

 こうした状況下で、クリミア半島内の住民によるゲリラ活動が活発化して、軍の施設や、兵器を破壊する市民が出て来て、ロシアを慌てさせています。歴史的にも、クリミアはロシアの領土だった時代が長く、ウクライナが独立した、戦後の60年間だけがウクライナ領であって、多くの市民は、ロシア人の意識が強いと思われていたのです。ところがどうも、クリミアでロシアは愛されてはいなかったようです。

 このままクリミア市民がロシア軍にゲリラ活動を続けて行けば、クリミア半島奪還は案外早まるかも知れません。ロシアの兵士も、半島と言う、閉そく状態の中で、ゲリラ戦を連日体験したなら、精神的に相当ダメージを受けることになるでしょう。更に、外からウクライナ軍が一気に攻め立てれば、案外クリミアを守るロシア軍はもろいかもしれません。

 クリミア半島が戻ってくれば、今回の戦いは10年前の状況に戻り、ロシアにすれば振り出しに返ったことになります。そうなると今ここでウクライナと戦わなければならない理由がなくなってしまいます。クリミア半島奪還が出来れば、ウクライナ戦争は大きなターニングポイントを迎えることになるでしょう。

 

 それにしてもゼレンスキー大統領はすごい政治家です。今回の戦争に勝利した後には確実にノーベル平和賞を取るに値する人です。戦争しているさ中に、アメリカに行って、アメリカ議会で演説をして、支援を取り付けたり、広島のG7サミットにやって来て、欧米各国に協力を求めるなどと言う離れ業をやってのけるのですから、全く新しい時代の政治家です。

 

 ウクライナは、9年前に、クリミア半島をロシアに奪われた時に、「次には、ロシアは、ウクライナ全土を取りに来る」。ということは分かっていました。しかし、そうなったときにどうするのか、ロシアに勝てないまでも、国民が全力で戦って、五分五分の戦いに持って行こうと考えたのです。軍事力で10分の一のウクライナが、どうやって、ロシアと対等に戦ったらいいのか。ウクライナ軍は研究しました。

 そこで生まれたのが、迫撃砲と、ドローン爆弾だったのです。戦車も飛行機も軍艦も不足していたウクライナは、兵士が手に持てる武器でロシア軍と戦うほかはなかったのです。

 そんなウクライナの戦力を見て、アメリカも、NATO軍も、初めは「勝てる見込みがないからやめた方がいい」。と相手にしなかったのです。

しかし、実は、このやり方こそが、新しい時代の戦争方法だったのです。数百両の戦車、大砲を連ねてロシア軍は南下してきました。ウクライナに続く道は、ロシアの大きな戦車が連なっています。ロシア軍は、この威容を見れば、ウクライナ政府はたちまちに降伏すると考えていたのです。

 ところが、この状況こそがウクライナ軍にとってのチャンスだったのです。一本の田舎道に並んだ戦車軍団は、林や農家に潜んでいるウクライナ軍にとって格好の標的でした。ドローンを飛ばして、次々に戦車を破壊して行ったのです。たちまちロシア軍は大混乱をきたしました。破壊された戦車によって、残りの戦車は道をふさがれ、前にも後ろにも進むことができなくなり、後は夜店の射撃と同じように、一台一台並んでいる戦車に向かって、ドローンを飛ばして、次々に破壊して行ったのです。

 こんな簡単な方法で、ロシア軍の戦車が破壊されるとは誰も考えなかったでしょう。アメリカも、NATO軍も、すっかりウクライナの戦術に感心をして、積極的に武器の支援をするようになったのです。それもこれも、ウクライナ人がまず国を守るために本気になって戦うかどうか、弱い立場を認めながらもどうしたら戦えるかを真剣に考えた結果なのです。

 いざ戦ってみると、ロシア軍の多くは、全く訓練もされていない初年兵ばかりで、戦地に行くことすら聞かされていなかった兵士達でした。いきなりウクライナに行き、敵軍の集中砲火を浴びて、恐れおののいて、戦わずして投降するものが続出したのです。世界最強と言われたロシア軍も、いざ戦ってみると、真実は張りぼてだったのです。

 それが分かってしまうと、世界のロシアに対する目は厳しくなります。頼みとしていた中国にまでよそよそしい目で見るようになり、今では四面楚歌の状況です。

 遠からずロシアは崩壊し、分裂するでしょう。そうなればウクライナ戦も続けて行くことは出来なくなります。プーチンさんと言う人は、まったく何がしたかったのかわからない、頓珍漢な政治家として後世にまで悪名を残すことになるでしょう。プーチンさんがどうなろうと自業自得ですが、なるべくなら一刻も早く引退されることが、世界のため、ウクライナのため、ロシアのためでしょう。

続く