手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

一平さんの裁判

一平さんの裁判

 

 長らく大谷翔平選手の通訳をしていた、水原一平さんが、大谷選手の預金26億円を使い込んで、訴えられて、昨日(5月15日)から裁判が始まりました。アメリカでもこの事件は相当に話題になっているようで、昨日のニュースを見ると、物凄い数の取材陣が一平さんの周りを取り巻いていました。

 この事件は、すでに一平さんがおおよその犯罪を認めています。大谷選手の口座から、無断で現金を引き出し、使い込み、銀行には、大谷選手を装い電話で了解した旨を伝えたなど。明らかに横領の目的で使い込んだもの。そして、その金の支払いは、スポーツ賭博の赤字補填に充てたと言う話です。

 大谷選手はこの件を知らずに使い込まれていたそうで、一平さんを解雇して、横領した金の返金を求めています。何にしても、使い込んだ金額が大きすぎることと、大谷選手と言う話題の人の活躍の裏でこんな事件があったことで盛り上がり、アメリカも日本も、ニュース番組や、新聞雑誌などで大騒ぎです。

 この事件は、ドジャースが4月に韓国で試合を行った数日前に、借金に行き詰った一平さんが大谷選手に問題を打ち明けたことで表面化し、当初一平さんはドジャースのチーム全員に謝罪し、大谷選手も知っている中でこうした事態になった、と言っていたのですが、どうも実態は数日前に大谷選手に知らせる以前には全く何も伝えていなかったようです。

 そのため、当初はある程度大谷選手が関与していた中での問題なのかと疑われましたが、全く大谷選手の了解なしで行われたことであって、話が進むうちに、一平さんの立場は悪くなって行きました。

 そもそもが、26億円もの金が、当人が全く知ることなく引き出された事が不自然で、銀行から届く残高明細などがあるはずですから、いくら何でも大谷選手がそれを見ないはずはないだろう、と世間の人は思いました。

 その銀行とのやり取りが不明まま、事件が進んで行きます。そもそも、FBIは別件でスポーツギャンブルを捜査している中に、大谷翔平と言う名で銀行口座から多額の振り込みがあったことを知り驚きます。当然銀行口座を調べているうちに、その口座に水原一平さんが関与していることを知って、事件が発覚しました。

 そして、事件の責任は一平さんにあり、大谷選手は被害者であると言う結論に至ったのです。26億円の使い込みに気付かなかった大谷選手はやはり大物です。恐らく口座はこれ一つだけではなく、幾つかあるのでしょう。

 それにしても、自らの体を犠牲にしつつ野球に捧げて稼いだ金が、そっくり通訳に抜き取られ、無くなってしまったと言うのはショックでしょう。しかも、その金をきれいさっぱりギャンブルに使いこんだと言うのは唖然とさせられます。なかなか世間の人からの同情は得られないでしょう。

 あえて弁護をするなら、大谷選手という世界的にも希な野球選手の脇で彼の活動を見ているうちに、自分も何かで世間をあっと言わせるような活動をして、一稼ぎしたい。という思いが募って行ったのではないかと思います。そして彼の願い通り、世間をあっと言わせるような話題の人にはなりましたが、その代償が昨日の裁判に至ったのでしょう。

 

 以前私は、起死回生の手段として、この事件を小説にして売りだしたらベストセラー間違いなしだ。と書きました。今、最もホットな話題ですから、小説にしても、映画化しても、ヒットは間違いないでしょう。巧くすれば借金も返せるかも知れません。

 実際今、アメリカでこれを小説にしようとか、映画化しようとする動きがあるようです。そうなら話にうまく乗るのは一平さんの新たな成功の道です。

 無論、借金は返せても、罪は償わなければなりませんから、刑務所に入らなければなりませんが、これだけ話題が大きいと、おとなしく刑務所に納まってもいられないでしょう。

 人は考えようです。絶望感が先立ってしまったら、もうそこから先には何もありません。まだ稼げる、まだ生きる道はあると、自分を生かす方法を考えて行けば、いくらでもこの先の成功の種は転がっています。

 何にしても大谷選手と数年間一緒に仕事をしていた人物ですから、話題には事欠きませんし、誰も成し遂げなかった大借金をしたのですから、ストーリー展開には事欠きません。何とか保釈金を支払って、早めに出所して講演活動などしたら、いくらでも依頼は来るでしょう。

 私ならギャンブルをやめる方法と題して講演をします。タイトルは「ギャンブルは必ず止められる、嘘だと思うなら5000ドル賭ける」。です。つまり、ギャンブルはいけない、然し簡単にはやめられない、でも、やめるも続けるも同じこと。所詮浮世はみな夢じゃ。と言う話です。

 私ならそれを語り続けて公演料を稼ぎます。いけないことだからやめなさいとは誰でも言えます。然し実際、いけないことだと知りつつ止められないことはいくらでもあります。酒でも、結婚詐欺でも、犯罪でも、あらゆる罪を思えば、ギャンブルの借金など可愛いものかも知れません。

 それを大上段に構えて、間違いだ。ギャンブルはいけない。と言ったところで、本当にやめられるものなのか。26億円もつぎ込んでまでやった遊びはよほど面白い遊びだったのでしょう。そうなら、どうしてそこまでの遊びが止められますか。いっそのことその夢の根源はどこにあるのか、そこのところを、26億円使い込んだ当人が真実を正直に語れば、その業の深さを多くの人は共鳴することになるでしょう。そこまで踏み込んで自分を見つめ語ったならば、一平さんは大きな功績を残すことになります。

 彼は大谷選手の通訳をしていた時には、献身的ないい青年だと、あらゆるマスコミが褒め契っていたのです。それが彼が不正を働いた途端、過去のことから、親のことまで、不都合なことを暴き出して、みんなで犯罪者扱いにしました。そんな問題児なら、なぜ先にそのことを言わないのですか。一度社会から批判されて、手負いになったとたん、みんなでいじめて奈落の底の叩き落しました。誰か一人でも、「いや一平さんは親孝行なところもあるんですよ」。と百に一つも褒める人はいませんか。

 今度、小説を書く時には、如何にマスコミと言うものが悪意に満ちたものなのか、社会は常に一面でしかものを見ないかと言うことを詳しく書いて仇を取りなさい。言って見れば正義をかざして物を言う人はみんな偽善者です。本物と偽物の区別は、自分が奈落に落ちて初めて分かることです。

 せいぜい小説で、社会の偽善を暴きなさい。そして稼ぎで借金を返しなさい。その上で、如何にギャンブルが面白いかを心から伝て下さい。そして長く生きた上で、「あぁ、面白い人生だった」。と言ってやりなさい。

続く