手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

ご難続き

ご難続き

 

 今年になってからの大谷選手は、余りに変化の多い日々で、山あり谷あり、全くジェットコースターのような毎日だったでしょう。エンジェルスからドジャースに移って、全米一番の契約金を貰い、真美子さんと結婚をし、新居を建てて移り住んで、と、出世コースを順調に昇って行ったかと思いきや、

 水原一平さんの問題で28億円が消えてしまい、裁判にまでなり、未だに係争中です。そして家を建てたら、それを空撮されたり、余りにマスコミにあおられ続けて、ついに大谷選手は腹を立てて、日本テレビとフジテレビを出入り禁止にする事態に至りました。

 大谷選手としては珍しいほどの感情表現で、これは、愛する家族を思うあまり、プライバシーに土足で踏み込んで来て、礼後もないマスコミに対して堪忍袋の緒が切れたのでしょう。分かります。その気持ちよくわかります。

 これからもまだまだ予測不可能なことは怒るでしょう。人気があって収入がある大スターですから、何が起こるかわかりません。大スターが何一つ世間に迷惑を掛けずに生活していても、世間の人はそれを嫉妬して足を引っ張るようなことを平気ですることがあります。

 俳優で司会を得意にしていた高島忠夫さんと宝塚スターの須美花代さんの夫婦は、世間がうらやむほどの美男美女の夫婦でした。このご夫婦の息子さんが高嶋正宏、高嶋政伸さんです。結婚するとすぐに子供が生まれ、夫婦は映画にテレビに出演が忙しく、子育てはずっとお手伝いさんに任せっぱなしだったのです。

 ところが、お手伝いさんは、この夫婦が余りに恵まれすぎていて、世の中は不公平だと考えたらしく、生まれた子供を風呂に漬けて殺害してしまったのです。全てに満たされ順風満帆だった夫婦が、幸せであるが故に人から嫉妬され、どん底に落とされたのです。世の中は何が起こるかわかりません。恨まれるようなことを一切していなくても、災難は起こるのです。

 話は古くなりますが、明治時代の歌舞伎役者の初代中村鴈治郎は大変な二枚目で、舞踊がうまく、芝居が達者で、口跡がいい、申し分のない花形役者でした。当然上方歌舞伎の大看板として大出世しますが、ある時、弟子に嫉妬され、食べ物の中に水銀を混ぜられます。水銀は、少量でも死に至ります。処置が早かったために、命は助かりましたが、水銀の毒素でのどが侵され、この事件以降、声が皴枯声(しわがれごえ)になってしまいました。

 恐らく理不尽な仕打ちを受けた後、鴈治郎は泣きはらす日々だったでしょう。然し、彼は、毎日、そのしわがれた声でセリフの稽古を始めました。すると、美声ではなくても、何とも言えない魅力のある語り口で芝居を見せる力を付けて行ったのです。その後も上方を代表する俳優として今日までも名前を残すに至ったのです。

 

 人は、何が災いとなり、何が幸いするのかはわかりませんが、恵まれた生活に甘んじていてもいけませんし、又不幸にめげてしまってもどうにもならないのでしょう。

 大谷選手を見ていると、様々な困難があっても、マウンドの上では活躍が続いています。本日も対ロッキーズ戦で、21号ホームランを飛ばしています。順調に記録を伸ばしています。この分では年間40本のホームランは固いのではないかと思います。

 どんなに苦しく、辛いときがあっても、全てのことは野球で答えを出すと言うのは素晴らしいことです。彼自身は体に時限爆弾を抱えていますので、いつまた肩や腰が悪くならないとも限りません。人間技として、160㎞の球を投げ続けるなどと言うのは体によい訳はないのです。

 ホームランも同様で、140mもの飛距離をバット一本で撃つと言うのは、体の負担は相当に大きいはずです。それを傍から見たなら、何ら無理なく軽く打ち続けているように見えますが、実は相当に体を酷使しているはずなのです。恐らく試合から帰ってきたなら、体の疲労は相当に大きく、ベットに入ったらぐったりしてしまうのではないかと思います。

 辛いそぶりは一切見せない大谷選手ですが、それでも、あと10年、この生き方を維持できるかどうか、と考えたなら、相当に険しい道のりだと思います。世界一になると言うことは無理に無理を重ねて毎日生きて行かなければならないのです。決して天賦の才能だけで生きて行けるものではないはずです。

 色々な問題があっても、それを全く意に返さないそぶりで、次々に自己の目標を達成させてゆく姿は大したものだと思います。

 

 長らく人気低迷していたアメリカの野球界も、大谷選手が出てきたおかげで、マスコミの話題の中心になり、人気も急上昇しています。ドジャースにすれば、1000億円は、決して高い買い物だったわけではないはずです。宣伝広告費としても充分それに見合うだけの活躍をしています。

 アメリカの中の話題の中心に日本人がいて大活躍をしていると言うことは何とも同じ日本人として晴れがましい思いがします。大谷選手と同じ時代を生きていることが幸せです。別段私が支援してどうなるものではないのですが、この先もずっと応援したいと思います。

続く