手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

空撮やめろ

空撮やめろ

 

 大谷翔平選手が、日本のマスコミの傍若無人な態度に、ついに怒りをぶちまけて、フジテレビと日本テレビに対して取材禁止にしました。マスコミの取材の姿勢が常識はずれで余りに失礼だからです。

 ビバリーヒルズにほど近い、大谷選手の住まいは、恐らく隣近所の家も、千坪とか、二千坪と言った、大きな邸宅で、そこには専門の警備員がいたり、人には見えないようにしていても、塀の上に高熱電圧が通っていたり、カメラだけでも何十台も仕込んであって、何かあればすぐに警察が来てくれるような体制が出来ている家ばかりなのでしょう。

 つまり、家の価格が12億円かかるとしても、それは大した驚きではなく、年間維持費がまた5千万円とか1億円とかかかる家に住んでいるのでしょう。大谷選手の住む地域は、そうした、所得の高い人、事業などで重要なポストについている人達が暮らしている地域で、彼らにすれば、自分と自分の家族を守ることに、常に大きな保険を賭けておかなければとても安全に暮らして行けないような人たちなのです。

 そんな厳重なセキュリティを施した家であっても、ギャングに襲われるのは一瞬ですから、手薄なところから入り込まれて、金品を盗まれたり、家族や、親戚などが誘拐でもされれば取返しのつかないことになります。金があって、地位があって、大きな仕事をしている人やその家族は、同時に、常に命を狙われているわけです。

 そうした地域に住む人に対して、家を空撮されて、建物の間取り云々をテレビで報道されるなどと言うことは以ての外なのです。ましてや、隣近所の人達に、インターフォンで大谷選手の近況を聞き出そうなんて言う行為は全く常識はずれで、考え違いも甚だしいのです。

 インターフォンを鳴らせば、前掛け姿で奥さんが手をタオルで拭きながら出て来て、「ええ、大谷さんですよね、あの人はいつ会っても挨拶を欠かさない人で、いい人ですよ」。なんてセレブの奥様が言うわけがないのです。ご近所のおばさんとは違うのです。周辺を嗅ぎまわって情報を取ること自体失礼を通り越して犯罪なのです。

 彼らは高額な土地の料金や、セキュリティを支払って、徹底して、人知れず、静かに家族と暮らしたいのです。それが、大谷選手が引っ越して来たら、たちまち、取材陣が押し掛けただとか、ドローンを飛ばして町に様子がテレビに映ったなどと言われることは、大谷選手に対しても失礼なことですし、そこに住む人にとっては家族の生命にかかわるほどに重大なことであり、やってはいけないことなのです。

 こうなると、せっかく引っ越してきた大谷選手ですが、あの一途な性格からすると、あっさり引っ越すかもしれません。何十億かかろうとも、安全が侵されてしまえば、どんな家も無価値になります。日本のマスコミは余りに礼儀知らずです。大谷選手が何のために多額の費用を賭けたのかを知らないのです。

 純真で誠実な、東北出身の青年が、マスコミや、世間に揉まれて行くうちに、人間不信に陥ってしまうのではないかと不安になります。

 それでなくても、長年二人三脚でやってきた水原一平さんに裏切られて、そのショックはおいそれと解決するものではありません。大谷選手にすれば、自分と一緒に「大谷翔平出世物語」をがむしゃらに突き進んで行く行為は、スリリングで、二度と体験することのない面白い人生に違いない、と思っていたのに、水原一平さんにすれば、一緒にいること自体がストレスだったと言うことが気付いてとても悲しかったのです。

 一平さんは、そのストレスのはけ口として、無断で銀行口座から金を抜き取ってギャンブルをしていたわけで、大谷選手の成功が、一平さんにとってはフラストレーションがたまる原因だったのです。26億円は、大谷選手の成功に対しての嫉妬だったのかも知れません。

 大谷選手にすれば、結局自分を理解してくれる仲間なんていないと言うことが分かって、その失望感は大きかったのです。26億円を失うよりも、水原さんの心が読めなかったことがショックだったのでしょう。

 その心の傷が癒されるまもなく、今回のマスコミの過熱報道です。マスコミが勝手に土足で入り込んできて、やりたい放題やって無責任に荒らして行く姿を見て、初めのうちは善意で対応しようと思っていた気持ちが、親切心も薄れて、余りに身勝手な行動に憎悪すら感じて行くのは当然です。大谷選手の天真爛漫な陽気な顔が、辛気臭く、人間不信で凝り固まったような人相に変わって行かないことを願います。

 

 それにしてもこのところは気持ちを切り替えたのか、連日ホームランが続いています。昨日6月13日は、17号ホームランが出ました。ドジャースはそもそもが実力のあるチームではありますが、大谷選手の活躍があると、その効果は何倍も跳ね上がります。やはり彼はスターなのです。

 逆に、大谷選手のいなくなったエンジェルスは観客動員もがったり落ちて、集まってくるマスコミもわずかで、大谷選手のいた頃と余りの様変わりにチーム自体も意気消沈しているそうです。尤もそれが本来のエンジェルスだったわけですから、元に戻ったと言えばその通りなのです。

 さて、この先も気を取り直して順調に記録を伸ばして行くことを願います。要するに大谷選手は、野球が出来ればそれだけで幸せな人なのです。金のことも、豪邸のことも、実はどうでもいい話なのです。

 彼は世間に対して野球すること以外、何一つ望んでいないのです。その純粋な気持ちを周囲の人たちが壊さないよう。暖かく見つめて行ってあげられるようにしなければいけないのです。こんな純粋な心を持った人が今の時代にいること自体が貴重です。

 続く