手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

春は名のみの 1

春は名のみの 1

 

 ブログは二日休んで、その間に香港に行ってきました。出演は一日だったのですが、15日(金)前日に乗り込んで一泊し、翌日16日が出演当日。その晩はまた泊り、そして17日の晩に帰って来ました。

 この仕事は、日本政府と地元の民間企業が協力し合って、日本の文化を広く知ってもらうために、各所で定期的に催されている企画です。今回は、出来て間もない、巨大なショッピングセンターのドーム中央に、日本の祭り広場を作り上げて、お菓子や、伝統工芸などを並べて、そこに舞台を作り、私は手妻を致しました。

 このショッピングセンターは、元々、ここに啓徳空港があった場所です。かつては香港は町の中央に空港があったのです。私も初めて香港に行ったときには啓徳空港を使いました。ところが、この空港は曰く因縁付きの空港で、余りに繁華街に近いため、周辺のビルが、時代と共にどんどん高くなり、空港がビル群の中に埋没してしまったのです。

 そのため、飛行機が着陸するときには、ビルに遮られて、長く低空飛行することができず、周囲のビルをすれすれに飛行機が飛んできて、狙いを定めていきなり体の向きを下げて急降下しなければなりません。日本では飛行機がこんな離着陸をしたら、危険極まりないと、周辺住民の人権問題に発展して、大騒ぎとなるはずですが、そこが中国人の国ですから、何でもありなのです。

 大きな飛行機が、住んでいるいるアパートのベランダに並行して走っている姿は異常な光景ですが、毎日見慣れてしまったのか、これまでは危険とも、騒音の苦情も出ませんでした。中国人はそれを日常と受け入れてしまうのです。

 然し、パイロットにすれば、こうまでビルが近いところにある飛行場は危険極まりなく、評判の悪い空港だったのです。それが、十数年前に、香港島の西の端に新規に空港を建設して、空港から、香港市内を高速道路で結びました。これで香港市内で大きな飛行機の騒音はなくなりました。

 さて、その啓徳空港の跡地ですが、いろいろ開発の話があって、今回もその一つとしてショッピングセンターが出来たのです。名称はARESIDE(エアーサイド)。将来的には劇場ができたり、そごうデパートが出来るそうです。敷地はまだまだたくさんあって、大きな起重機が何十本も並んでいます。

 香港と聞くと、古いビルが林立していて、下は小さな商店がひしめいていて、上層階は何百世帯ものアパートが暮らしている、超過密ビルを連想させますが、数年ぶりに訪れた香港は、とても大きなビルが新たに出来ていますが、ビルの作りが高級化して、住まいの質も向上しているようです。

 ショッピングセンターを歩いている若い子供連れの夫婦を見ていると、みんな幸せそうで、日本の若い夫婦と同じように、いい身なりをしていますし、子供も幸せそうです。所得で言うなら、もう日本と同じくらいの収入を取っているようで、生活も安定しているようです。物価を見ても、ショッピングセンターの中の商品価格は、東京の中心街の価格とほぼ同じで、レストランの食事の質も申し分がありません。

 ほんの数年で、香港は全く日本と同じような生活をする国になっていました。そして、香港の人は日本文化が大好きです。都市国家と言うのは、ある一定の地域に人を押し込んでそこに金融業や、IT企業を持ってきて、産業を発展させました。そこには人が集約して生活しており、仕事をするには便利ではありますが、どこへ行ってもビルばかり、公園もなければ、街路樹も少なく、人が休息する場所がほとんどありません。そうした人たちにすれば、日本の箱根や、富士五湖などの観光名所は魅力です。都市と森がうまくバランスを持って生活している日本は憧れなのです。

 と言うわけで、香港の人は日本のすることが何でも好き、米も秋田こまちや、ひとめぼれが普通に売られています。日頃食べているタイ米ではおにぎりが作れませんので、日本米は大人気です。但し日本で食べるよりも相当に高いので、日本の米を毎日食べられる家庭は限られています。

 日本のラーメンも、たこ焼きも、寿司も、果物も、何でもかでも売られていて、日本と名がつくと高級と言うイメージが定着しています。日本のすることは何でも大好きです。そんな中巨大ショッピングセンターで、ジャパンフェアが開催されれば、彼らは面白がって家族総出でやって来ます。 

 

 15日は、とにかく一日かけて、香港に向かい。到着後、迎えのスタッフと一緒に九龍にあるホテルに入りました。その晩は遅かったのでそのまま休みました。

 16日は、私は朝の5時半に目が覚めました。いつものことです。然し、5時半ではどこも店らしいものはないだろうと思い、7時まで本を読みながら休みました。それから、ホテル周辺を散歩しました。ここは中心街ですから、朝からにぎやかです。

 そこで2ブロックすすんだところにけっこう高級なレストランがあり、そこで粥料理がありましたので入りました。私は香港や、台湾の粥が大好物です。粥は地元ではコンチーと言い、普通に朝食で食べられています。薄く塩味が効いていて、丼いっぱいに熱い粥が盛られます。粥の中には、ピータンが細かく切って入っていて、他に小振りの鶏肉が骨付きで三つ入っていました。内容はこれで充分です。

 鳥の脂身と。ピータンの旨味、粥の塩味で頂きます。これは幸せな料理です。体に優しいですし、丼一杯の米を頂いても決して腹いっぱいにはなりません。サイドディッシュに、焼売と、牛肉饅頭を食べて、十分満足です。値段は70ドル(香港ドルは、1ドル20円=1400円)。値段はまぁまぁです。

 焼売と、牛肉饅頭を食べての粥の値段ですから、普通でしょう。香港に着いたらまず粥が食べたいと思っていましたので、朝から満足に食事ができました。

さてこれから、エアーサイドの会場に入りますが、その話はまた明日。

続く