手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

屋形船ツアー

屋形船ツアー

 

 陽気が良くなってきましたので、屋形船ツアーを企画しました。品川から、屋形船に乗って、お台場、隅田川を回ってまた品川に戻って来ます。日時は、4月12日(金)、12時に出航します。約2時間のツアーです。既に20人の参加希望者が集まっています。数席空きがありますので、これを機会に船遊びを体験してみませんか。

 屋形船と言うのは、船の上にお座敷が拵えてあって、屋根や障子が取り付けてあって畳敷きの日本建築になっている船です。中で座ってアルコールを飲んでいる分には料理屋の座敷に居るのと一緒です。然し、窓を開ければ、東京湾の景色がゆっくり移動して、日頃見ることのない景色が楽しめます。船は20人から40人くらい乗れるサイズです。

 内容は、東京湾を品川からゆっくり北上して、お台場あたりで一度船を止めて、食事を致します。アルコールは飲み放題です。そのあと私の手妻があって、それから再度船が動き出し、隅田川まで北上して、スカイツリーを眺め、また品川に戻ります。

 私は度々屋形船を体験しています。東京湾は一年中波が静かで、揺れがほとんど感じられません。私自身は過去に一度だけ雨が降った日もありましたが、雨の東京湾がまた雰囲気があって綺麗でした。4月12日だと、花見はもう終わっていますが、それでも遅咲きの桜がちらほらまだ咲いているでしょう。

 滝廉太郎の花と言う音楽に、隅田川の様子が出て来ます。

 「春のうららの隅田川、上り下りの船人が、櫂のしずくも花と散る、眺めを何に例うべき」。恐らく明治30年ごろの隅田川の景色なのだと思います。当時は今よりずっと船の数は多く、ほとんどは世活物資を北関東から運んできて東京に卸していたのでしょう。 櫂(かい)とはボートのパドルのことで、私の記憶では慶応大学(と記憶しています)のボート部の学生が隅田川でボートを浮かべて練習をしていた様を詩に取り入れたものだと聞いています。

 生活のために北関東から野菜や、米芋などを運ぶ人があるかと思えば、大学生がボートを漕ぐ。そしてお金持ちが舟遊びをする。何とものどかな風景です。

 4月の陽気は、暑くなく寒くなく、船の窓を開けて、風に吹かれながら何も考えず東京湾を眺めるのはとても贅沢です。特にお台場のあたりから眺める東京の景色は素晴らしく大きく、他に比べようのない眺めです。東京は高層ビルがいつの間にかたくさん立ち並ぶようになって、街全体を一目で見渡せないほど巨大です。香港の夜景が素晴らしいと言いますが、香港は町のサイズが小さく凝縮されていて、東京ほどの雄大な広がりを感じません。同様にアメリカの中核都市は、ダウンタウンに高層ビルが立ち並んでいますが、それでも、高層ビルの数は10棟とか20棟ぐらいでしょう。どんなに大きな街でも一目で見渡せてしまいます。

 そこへ行くと、東京のように、ぐるりと半円、高層ビルが連なっている都市と言うのは、世界中見渡してもまずありません。東京の南にあるレインボーブリッジあたりから、高いビル群が続き、東京タワー、そして中心部、そのまま北を眺めて上野、浅草、スカイツリー。更に江東区から千葉にかけて、まだまだ高層ビルが続きます。東京に住んでいても、東京を俯瞰で眺めることはめったにありません。それを屋形船から眺めてみると、東京が如何に大きな街かが良くわかります。

 そして東京は大きなだけでなく、とても美しい町並みをしています。ところどころ緑も多く、名所となる建物もたくさん見えます。最近では東京湾の浄化が進み、水がとても綺麗になりました。船の上から小魚が飛び跳ねる姿を何度も見ることになるでしょう。

 船の上で出て来る料理は、海老や穴子やきすなどの近海物の魚の天ぷらがメインです。船の中で揚げたての天ぷらを食して、アルコールを頂くのは江戸の時代から変わらない楽しみです。

 

 さてそこで私が手妻を演じるのですが、実は、船の上でマジックをすると言うのは、なかなか大変な仕事なのです。東京湾は揺れないとは言いますが、全く揺れないわけではなく、常にさざ波が押し寄せて来て、船は小さく動きます。

 これが、演じていて度々体のバランスを崩します。立っていられないと言うほどではないのですが、バランスが不安定になります。そのため、両足を踏ん張って構えたりします。踏ん張っているときはいいのですが、テーブルにものを取りに行こうと動き出すと、よろけてしまいます。何とも勝手が違ってうまく行きません。

 それでも、障子に囲まれて、和の雰囲気が統一された場所での手妻ですから、とても情緒があって美しいものです。特に、20人30人と言う、少人数でのショウは、まるで江戸時代の金持ちが、芸人を座敷に呼んで芸を独占するような気持になれますので、お大尽遊びを満喫できます。

 私は毎回、ショウが終わるまではアルコールを飲みません。演技が終わってからいただきますが、その時のアルコールの旨さは格別です。

 さて、屋形船のツアーは、食事の都合などもあり、全て予約制です。料金は飲み放題、税込みで一人17000円くらいになると思います。残りは8席です。ご興味ありましたら、東京イリュージョンまでお尋ねください。03-5378-2882

 集合場所など後日お知らせします。

続く