手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

パスポート

パスポート

 

 昨日(28日)はパスポートの取り直しに出かけました。来月海外での出演が決まったのですが、パスポートを出してみてびっくりしました。昨年で期限が切れていたのです。何と、もう一年近くも海外に出ていなかったことになります。

 いろいろな意味でコロナはすべての活動を狂わせてしまいました。ようやくここへ来て、ぽつぽつと出演依頼も来ています。有難いことではありますが、そのためには急ぎパスポートを取らないと仕事を失うことになります。

 そこで、朝からセシオン杉並に出かけ、先ず戸籍謄本を取りました。次に新宿に出て、都庁にあるパスポートセンターに行きました。滅多に行かないところですが、都庁に着くと11年前を思い出し、迷わずに行けました。この部屋だけはいつも賑わっています。

 先ず、写真を撮り、そして受付に向います。春休みを利用しての海外旅行のためでしょうか、人が賑わっています。以前とは違い、戸籍謄本と身分証明書があれば取得はOKで、かつてのように印鑑も住民票も必要ありません。随分簡略化されて便利になっています。

 私は念のため、印鑑を持参してきました。かつてはどこの役所でも、印鑑を捺していない書類は一切受け付けなかったのに、今では印鑑を押す場所も書かれてはいません。高校の入試受付で、一緒に行った同級生が印鑑を押していないことに気付き、用紙を返されました。この時の同級生の落胆は見るも気の毒でした。

 落ち込んだ彼と共に、帰り際に、文房具屋で三文判を売っているのを見つけ、「君の苗字ならきっとあるんじゃないか」。と教えると、果たしてありました。幸運です。私の本名だったら絶対にアウトです。私もかつては印鑑一つのために出直しを求められたことが一度や二度ではありませんでした。あれは一体何だったのでしょうか。三文判で済む捺印なら一体何の判断基準になるのでしょうか。役所の国民への嫌がらせだったのでしょうか。

 パスポートの窓口もかつては、有楽町の交通会館に出かけたり、サンシャインのパスポートセンターに出かけたりしていましたが、今は都庁が最も近く便利です。と言っても、東京全体で、パスポートを受け付ける所が4か所か5か所しかなく、1000万人の住民が、パスポートを求めるのに5か所の窓口では、一か所200万人担当しなければなりません。当然大混雑です。特に春休みを控えている今はとても混んでいます。

 

この日も、11時に手続きを始めて、書類提出まで2時間かかりました。働いている人たちは全く休みなく、次々と書類をさばいています。大変な作業です。然し、待つ身としては2時間用事がありません。2時間もあるなら、待合室に映画一本流してもらえれば、その間楽しめます。そんな工夫をしてもらえませんか。こんなことなら単行本を持ってくればよかったと思いました。とにかく大病院の待合室のようなところに2時間座っていて、手続きを済ませました。パスポート取得は一週間後です。良かった。仕事に間に合います。

 帰りに都庁内の中のレストランに入りました、とんかつの専門店がありました。1時を過ぎていましたので、中はそう混ではいません。ランチのロースとんかつを頼みました。やってきたロースは、見た目は衣が荒く、食欲をそそります。味はさほどしつこさがなく、巧く揚がっていました。味噌汁は豚汁ではなく、シジミ汁でした。とんかつにはむしろシジミ汁の方がさっぱりしていて気が利いています。これで1000円なら満足です。

 さて、その後東急ハンズに向かいました。スライハンドの小道具や、そのほか考えている道具を作らなければなりません。ここであれこれ考えながら品物を探したため、2時間以上も東急ハンズを彷徨(さまよ)いました。

 残念なことは、かつての東急ハンズと違い、品数が激減しています。今となっては日曜大工専門店とそう内容が変わらなくなっています。かつてのようなビックリするような品揃えは見られなくなりました。

 それでもちらりちらりと欲しいものがあります。午前中はパスポートのために2時間座り続け、午後はハンズで3時間立ち続けました。いい加減疲れました、もっと早くに用事が済むなら、映画の「ナポレオン」か、宮崎駿さんの「君たちはどう生きるか」、を見て帰ろうか、と思いましたが、朝から活動をして動き回り、もう映画を見るゆとりはありません。少し疲れました。大人しく帰ることにしました。

 高円寺に着いてから東急ストアに寄り、刺身でも買おうかと思ったら、焼き芋を売っていました。考えたなら、朝から朗磨が事務所で仕事をしています。おやつに甘いものも食べたいでしょう。珍しいので買って帰ることにしました。それと、桃の花が枝ごと一本だけ売れ残っていました。一週間前にひな祭りを当て込んでたくさん仕入れて、店の入り口近くに飾ってありました。もうひな祭りも間近で、今更桃の花を買う人もいないのでしょう。

 私の家には、一週間前から、玄関に陶器の小さなお雛様を飾っています。私がふと思い出して飾ったのです。すると、翌々日、娘がふいに泊まりに来ました。ネイルアートの帰りに話し込んでしまったのか、とにかくやって来ました。不思議なこともあるものです。お雛様を飾ったらめったに来ない娘が来ました。

 お雛様効果でしょうか。そうなら、せっかくだから桃の花も飾って見ようと考えて買いました。桃の花は枝ぶりが大きく、まっすぐに伸びた枝に、たくさんの桃色の花がついて、なかなか華やかです。私はめったなことでは花は買わないのですが、私が買わなければこの花は売れ残って捨てられてしまうだろうと思いました。残り物には福があると言います。

 たった一つ残った桃の枝は何かの縁です。幸運を呼ぶ桃です。桃の花と、焼き芋を買って帰宅しました。事務所で、朗磨と休憩をして、お茶で焼き芋を食べました。朗磨は朝9時からマジックセッションのチケットをまとめています。私が5時に帰っておやつを食べながら談笑をしました。なかなか話をする時間もありませんでした。

 3月9日のマジックセッションの申し込みが結構来ていて、昨日、朗磨はその配送を一日やっていました。4月12日には屋形船で手妻をする企画を立てて、こちらも既に26人の申し込みがあります。このまま行くと30人を超えるかも知れません。そうなると船のサイズを大きいものに変えなければならないかも知れません。明日には船清さんと相談をしてみます。

 6月30日の三鷹の芸能劇場で開催されるマジックマイスターも申し込みが来ています。徐々にではありますが、舞台活動も復活して来ています。陽気も良くなってきて、よき方向に向かっているように思います。明日は、東急ハンズで買ってきた素材でマジックの試作品を作って見ます。

続く