手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

色々あるよね、福井天一祭

色々あるよね、福井天一

 

 話は大阪セッションから続いています。一昨日(12月10日)、大阪のホテルで朝5時30分に起床して、シャワーを浴びて、6時30分にロビーに出ると、もう大成も朗磨も待っていました。そのまま新大阪駅に行き、ハンバーガー屋さんで朝食。

 そして、7時04分発のサンダーバードで福井へ。もう11年間このコースを続けています。然し、たぶんこのコースは今回で最後になると思います。来年3月には新幹線が完成しますので、北陸本線の特急は大幅に縮小されるそうです。そう考えると、毎年乗っていたサンダーバードが妙に愛おしくなります。

 9時福井着。日頃閑散としている福井駅も、この日は、新幹線を迎えるために大改装中でした。タクシーでこども歴史博物館へ。ここも、天一祭開始以来毎年出演している場所です。博物館内に100人ほど入るホールがあって、そこに子供たちを招待して毎年、マジックショウを見せています。

 開始は11時。朗磨が中華蒸籠を演じ、大成が洋装で、ロープや12本リング。テーブルクロス引きを演じました。大成の12本リングは実際演じているのを見たことがなかったのですが、結構あちこちでやっているそうです。いや、覚えた芸が役に立っているなら結構です。クロス引きはよく受けていました。

 そのあと私が出て、二つ引き出し。植瓜術、そしてサムタイを演じました。実はこの三作を演じると優に30分の演技になってしまいます。都合三人で1時間のショウです。

 植瓜術の才蔵役に初めて朗磨を使ってみました。まだ掛け合いがうまく嵌りません。声もはっきりしません。表情も今一つです。やりにくくはありますが、ここで育てなければ上手くなりません。我慢して使います。

 終演後、こども歴史博物館から繊協ホールに移動して、天一祭のリハーサルをします。前日の大阪から、ずっとリハーサルと出演を繰り返しています。休んだのは深夜の数時間だけ。随分疲れます。それでも以前は少しも疲労などなかったのですが、今回は少々疲れました。楽屋で休んでいる間にうっかり30分ほど転寝(うたたね)をしました。

 「師匠、リハーサルです」。と言う朗磨の声で起こされました。はっと目覚めて、一瞬今、ここはどこ、という気持ちになりました。

 

 リハーサル中は、お客様はディーラーショップを覗いたり、レクチュアーを見て楽しんでいます。講師はボナ植木。この人は永遠のアマチュアです。マジック大好きで、いろいろ自分で工夫したアイディアを話していましたが、自分で考えたことを教えるのが好きなようで、嬉々として指導しているのが良くわかります。

 3時ショウスタート。以下感想。

 

 一本目、大成。ロープアクトとテーブルクロス引き。クロス引きは、福井のお客様は初のようで、よく受けていました。大成はそのまま居残りで、今回の司会を担当。喋りは相変わらず内容不明なところが多々あります。当人は自分の喋りのまずさを知っているため、積極的に司会をやろうとしていますが、もう少し語る内容をメモなどにまとめてから話をしなければだめです。

 

 二本目は、RENA。金沢の女流マジシャン。和風ドレスを着てシルクマジックなどを見せます。そのあとヒンズーバスケットなど、イリュージョンを演じました。いろいろやりたい気持ちはわかります。見栄えのする女性ですから、仕事の依頼は多そうです。前半のアクトはもっと整理して、特徴を作って行けばよくなるでしょう。後半のイリュージョンはアシスタントにステージングをもっと教えると、きびきび見ごたえのあるアクトになるでしょう。

 

 三本目はサイキックK。天一祭役員の一人、毎回出演しています。福井ではテレビのレギュラー番組を持って活動しています。福井ではおなじみのスターです。

 

 四本目はTOMMY 。金沢のマルチマジシャン。今回はイリュージョンをたくさん持参して、リングエスケープや、チェアサスペンション、人体交換など、盛りだくさん。狭い舞台だけに道具の出はけに時間がかかりました。目いっぱいの演技でした。

 

 5本目はばね人間、ささまん。不思議な人です。ストリートパフォーマンスだそうですが、かつてスプリングで階段を落ちて行くおもちゃがありましたが、あれを使ってジャグリングをします。始めはあまり期待していなかったのですが、ささまんさんの演技が熱を帯びて来て、観客が釣られて興奮して行くのが分かりました。よく受けていました。

 ここで10分間の休憩。

 

 後半一本目は岡田透。天一祭の会長です。近所で空と言うマジックバーを経営しています。毎回のレギュラーです。

 

 実は、休憩以降、岡田さんまでで公演予定の2時間を過ぎてしまいました。そのあとまだ3本も出演者があると言うのは確実の時間オーバーです。ボナ氏と私が、「我々が詰めようか」。と相談をしていましたが、私とすれば「ボナさんを楽しみに来ている人が多いんだから、あなたは詰めなくていいよ」。と言い、私の演技を詰めることにしました。

 

 二本目はMASAYO。.福井のマジシャン。女性でありながらロープマジック。こちらもレギュラーで毎回出演しています。

 

 三本目はボナ植木。大阪セッションと同じ、小さなギャグを繰り返して、自分の世界を作っています。本来トリを取る人であるのに、頑なにトリを拒否。それはそれでいいのでしょう。

 

 と言うわけで、四本目、即ちトリが私。前半に引き出しをしようと思ったものをカット、植瓜術一演目です。客席と舞台がフラットなため、座って演じる植瓜術は見えなくなります。やむなく、TOMMYさんからイリュージョンの外箱を借りて、箱の上に笊を乗せて演じました。なかなかやりずらかったのですが、何とかできました。

 終演に、ボナ氏に天一賞を渡して、めでたく閉幕。なんと3時間近いショウになってしまいました。

 もしこうしたショウを来年もするとなったなら、演出と舞台監督を付けて、各出演者に厳重に時間を守ってもらわなければ無理です。第10回の開催に際して、もう一つランクを上げて公演するには、個々の演技ももちろんですが、それ以前にショウ全体のレベルを高めることが課題です。

 来年は、福井に新幹線が通ります。きっといろいろなイベントが発生するでしょう。マジックもそのイベントの一部を飾ることになると思います。何とか福井を盛り立てて行きたいと考えています。

 

 終演後、出演者は帰り、大成、朗磨も東京に戻って行きましたが、私は福井に残り、夜は元こども歴史博物館の笠松館長に招かれて会食をしました。明日は、坂井市の龍翔閣博物館を見学します。その様子はまた明日お伝えします。

続く