手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

EV車が動かない

EV車が動かない

 

 今年の冬は欧州やアメリカでは大寒波になりました。そのさ中、欧州のあちこちで道路を走るEV車が電池切れで動かなくなっています。そもそも動力を電気に頼るEV車は、バッテリーが切れたらすべてが終わってしまいます。

 動力は止まり、暖房も切れて、ラジオも、ワイパーも効かなくなります。その結果、ドライバーは車に取り残され、零下の中で救助を待たなければなりません。上手く救助が駆けつけてくれればよいのですが、これが大渋滞の中の一台となると、身動きもできません。ノルウェーで大渋滞中に、二百数十人が凍死するなどと言う事態が発生しています。

 EV車は急な温度の変化に対して、一気に電力を消費するため、機能が停止することがあります。人の少ない地域で走行していたりすると、世界中で充電装置がまだ充実していないため身動きできなくなります。仮にバッテリーの充電気があるスタンドがあったとしても、一台に90分の充電時間がかかりますので、20代も車が並んだら、最後尾の車が充電完了するのは30時間後になります。その間マイナス30度などと言う寒冷地でじっと耐えなければなりません。

 EV車の問題は様々あります。先ず、バッテリーそのものが3年くらいの使用期間で交換しなければなりません。しかもその価格がきわめて高価なのです。その上、交換したバッテリーをどこに処分するのか、処分場所が決まっていません。バッテリーの中には人体に有害な物質が含まれていますので、そこらに捨てることは出来ないのです。しかも一般ガソリン車に比べて価格が高く、EU各国は補助金まで出して、EV車を支援しています。

 然し、世界的に不景気が広がっている中で、車に補助金を出すと言う行為は、だんだん難しくなってきています。すべては地球環境に良い。という前提があっての上でしょう。ところが、いろいろEV車の問題点が出てくると、必ずしもEV車が地球環境にやさしいわけではないことが分かって来ました。尚且つ、今回のように零下に取り残されて死者が出る事態が起こるとなると、この政策は行き過ぎではないか。とEU各国でも問題にする人たちが出て来ました。

 それがほかでもないドイツです。ドイツは始め積極的にEV車を支持していたのですが、EV車は、ガソリンエンジンの車と比べてはるかに部品点数が少なくて車を作れます。そうなると、自動車生産にかかわってきた企業の労働者が大勢失業することになるのではないかと気付きます(そんなことはもっと早くに気付くべきことなのですが)。

 そうなるとドイツ国内で大量の失業者を生む結果になり、ベンツも、ワーゲンも、BMWも、このままでは会社存亡の危機に陥ることに気付きます。

 どうもドイツの企業は、日本の自動車産業を一気に叩き潰す手段として、日本が立ち遅れていたEV自動車にEUごと乗っかって行ったように思えます。いち早くEV車を作れば、技術でトヨタを引き離し、自国が世界で優位に立てると判断したようです。

 実は日本がEV車の開発に及び腰だったのは、トヨタの開発したプリウスなどのハイブリッド車が好調だったためです。ハイブリッド車と言うのは、ガソリン車と、EV車の両方を積み込んで、走行の際に、燃費の良い方に切り替えて動く装置を作ったのです。EV車とガソリン車の折衷に位置して、両方の長所を生かしたものです。

 都市部の信号機の多い道路では、電気を使って走行したほうが燃費が良く、安定してスピードを出せる道路ではガソリンの方が燃費がよい、排気ガスも少ない優れ物として活躍しています。

 いきなり未解決な部分の多いEV車に移行するよりは、ハイブリッド車を使った方がはるかに有効なはずです。然し、ドイツを始めとするEU各国の自動車会社は、ハイブリッドの開発に遅れていたため、ハイブリッドを認めたらトヨタの後塵を拝することになると考え、トヨタの技術を認めずに、いきなりEV車に移行しようとしたのです。その結果はこの冬のEV車の大失敗です。

 初めEUは、2035年にはガソリン車を全廃する、と宣言をしていたのですが、ここへ来て、EV車の急先鋒であったはずのドイツの自動車メーカー各社は、ガソリン車の販売を日延べするように働きかけています。全く発言が180度入れ替わっています。

 実際、EU内は大混乱です。せっかくEV車のために新工場を作っていた欧州各国のメーカーは急遽工場を閉鎖して、エンジン車に戻そうとしていますが、そうなれば、今まで以上にハイブリッド車の評価はあがる結果になるでしょうし、ハイブリッドの技術に出遅れている欧州自動車メーカーは一層の苦境に立たされることになります。

 結果、日本を追い落として一気に優位に立とうとした欧州の自動車メーカーは、ハイブリッド車の方が圧倒的に欧州国民に支持されるようになって大破綻をすることになります。大山鳴動して鼠一匹、どころか、今や欧州は瀕死の状態です。

 EUの政策の失敗が、欧州中の自動車メーカーが存続できるかどうかの瀬戸際に立たされています。更には、欧州への販路を当て込んで、EV車を大量生産している中国、韓国は、ひょっとすると自動車産業が倒産する可能性すらあります。

 youtubeを見ると、生産したEV車が売れ残って野原に並んでいる写真があちこちで見られます。ひょっとすると、今年から来年にかけて、日本のみが、欧州、アメリカ、アジアを凌いで、経済で大発展するかも知れません。

 日本一国だけが良くなればいい、とは思いませんが、バブル以降、久々の日本の技術のヒットで景気は上向いて行くのは素晴らしいことです。芸能の繁栄は実業の繁栄無くしては成り立ちません。企業がいい商品を作って、売ってくれなくては、マジシャンも儲からないのです。贅沢は言いません。儲けのほんの一部で結構ですので町に落としてください。

続く