手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

EV車は大丈夫?

EV車は大丈夫?

 

 この数年のEV自動車(電気自動車)の飛躍は著しくて、将来的に世界の産業の核になって行くだろう。と多くの人が予測をしていました。世界中の自動車産業メーカーは、それに乗り遅れまいとして、必死になってEV車の開発をしています。欧米各国の政府も、補助金まで出してEV車を支援し、ゆくゆくはガソリン自動車を全廃すると言う宣言まで出しました。

 これは大変な事件です。世界を見渡しても自動車産業と言うのは、どこの国でもその国を代表する産業です。自動車メーカーに部品を収めている企業まで合わせると、とてつもない多くの人が自動車で生活しています。

 それがある日から、EV車と入れ替わってしまうとしたら、自動車産業の人たちの多くは失業することになり、逆にEV車を作るメーカーは一躍一国のトップの会社になって行くわけです。いわば下克上の時代がやってくるわけです。

 これまでEV車を積極的に販売してきたのは、イーロンマスクさんの会社テスラです。テスラはこの数年売り上げを大きく伸ばしてきました。そして中国は、この流れに遅れまいとして、国を挙げてEV車に注目して、積極的に国産メーカーを支援して来ました。

 この流れに否定的な反応を示したのは、日本の自動車メーカーです。特にトヨタは、EV車に真っ向から反対の意見を持っていました。

 EV車は見た目、排気ガスを出さずに走るため、クリーンな印象を与えますが、動力は、電気を使わなければなりません。国内の自動車がみんな電力を使えば、電力は不足し、新たな発電所をいくつもつくらなければいけません。大きな発電量は、水力や、風力では賄いきれません。結果、石油石炭の化石燃料を消費して電力を起こさなければなりません。発電所が大きくCO2を吐き出すようになれば、個々の自動車が排気ガスを出さなくても、結果は同じことです。

 それどころか、EV車は、バッテリーシステムがまだ不完全で、バッテリーは、車を動かさなくてもどんどん放電して行きます。発電所で起こした電力が、どれだけ直接自動車を動かす動力になるかと言えば、今のバッテリーを使う限り、かなり効率が悪いのです。

 更にバッテリーの寿命が三年ももたないため、その都度高価なバッテリーを替えることになります。そもそもEV車はガソリン車よりも高価で、補助金まで国からもらっているにもかかわらず、三年に一度バッテリーをそっくり交換するなどして、果たして効率がいい車なのかどうか疑問です。今のEV車は地球に優しい車ではなく、かなり非効率な車だと言えます。

 早くからトヨタは、EV車の問題を指摘して、「同じ排ガスを出さない自動車ならばEV車ではなく、ハイブリット車の方がよほどクリーンだ」。と主張していました。ところが欧米ではEV車を支持し続けました。日本の経済評論家も、「トヨタは時代遅れ、このままだと世界の大きな流れに乗り遅れる。日本の自動車産業ガラパゴス化する」。と脅迫していたのです。

 このガラパゴス化、という言葉こそ日本の産業界が恐怖におびえるキーワードで、かつて日本の家電メーカーが、ビデオデッキを作っていた時に、VHSかべーターかと言う選択で、性能としてはSONYが開発したベーターマックスのほうが圧倒的に優れていたにもかかわらず、録画時間の長さがVHSの方が勝っていたために後れを取ってしまい、世界の流れは、VHSに偏って行った経緯があります。

 更には、携帯電話でも世界中のシステムを取り入れなかった日本が取り残されて、携帯電話の販売量を大きく下げてしまいました。

 あの悪夢が今度はEV車となって、自動車業界に襲い掛かって来るのか、と日本の自動車メーカーは恐々としたのです。

 

 ところが、ところがです。大躍進のEV車が、このところほころび始めて来たのです。やはりバッテリーがうまく行かないのだそうです。テスラはこのところ、車が火を噴いて壊れたりして、売り上げを減少させています。

 そこへもって来て、ドイツのメーカーが、「このままEV車に移行するとなると。これまでガソリン車に従事していたたくさんの自動車関連会社の社員を失業に追い込むことになる」。と発言をして、EV車の開発に後ろ向きになってきたのです。

 一体ドイツ人は何を考えているのか。と突っ込みたくなります。その話はトヨタの社長が前から言っていたことで、今更気づく話ではないはずです。つまり、EV車の開発は、国も企業もあまりに解決しなければならない問題が多すぎる上、問題解決に金と時間ががかかり過ぎるのです。

 例えば、ガソリンスタンドに変わって、全国にEV車のために充電スタンドを作らなければならない。と言うことだけでも一大事業です。都市の中に充電スタンドを作るのは何とかできても、砂漠地や、人のいない寒冷地にどうやって充電スタンドを作って維持しますか。更に巨大な電力を使うとなったら、不足分を補う発電所はすぐに作れますか。

 第一、世界を見渡しても、補助金までもらっても500万円以上もするEV車を買えるのは先進国の一部の人だけです。ほとんどの国の人は、20万㎞走っても壊れない、安い日本の中古車を買って再利用しています。修理もいらない、故障もしない日本の中古車を長く使う方がよっぽど省エネルギーなのです。

 いろいろ考えると、欧州のメーカーがいきなりEV車に切り替えることは不可能なのです。結局、トヨタの社長が言うように、ハイブリッド車を普及させた方が現実的ですし、地球に優しいのです。

 ところが、欧州もアメリカもハイブリッド車には反対です。なぜかは明らかで、ハイブリッドの技術を持っているのはトヨタだけだからです。ハイブリッドの方が優れている。と認めてしまえば、世界中の車はトヨタ車になってしまいます。それを認めるのが嫌さに、欧州アメリカのメーカーはEV 車にしがみついているのです。

 年間1000万台も車を作るトヨタは、それだけで世界の脅威なのです。別段何一つ悪いことをしているわけではないのに、大きいと言うことはそれだけで嫌がられるのでしょう。

 とは言っても、EV車に頼っていた欧米の自動車会社は今、大きな壁が立ちはだかっています。これは私の考えですが、トヨタはハイブリッドのノウハウを世界中のメーカーに無償で教えてあげてはどうでしょう。無論、ハイブリッドの技術を持っていればトヨタは大きな利益を上げるでしょうが、過去の、べーターや携帯電話のような、多勢に無勢の状況に置かれて、せっかくの技術が生かせずに世界から拒否されて終わってしまうようでは、まことに勿体ないことです。

 そうならないためにも、ここは仲間を作って、仲間を少し儲けさせてやれば、欧米から嫉妬されることなく、大きく生き残れるのではないかと思います。まぁ、無責任な手妻師のたわごとに過ぎませんが・・・。

続く