手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

ブログの始まり

ブログの始まり

 

 このブログは2019年8月26日から始まりました。以来、ほぼ毎日書き続けて、4年が経ちました。何でブログを書くのかと言うと、それにはいろいろ理由があります。

 一番大きな理由は、頭の中の整理です。子供のころから、何か気が付くと、すぐに紙に書いたり、原稿用紙に書いたりしていましたので、物を書くことには何ら億劫には思いませんでした。むしろ物を書くことは楽しみでさえありました。

 気が付いたことはノートの片隅にでも、ちょっと書いておく。そして時間が経ってからもう一度読み直してみる。これがとても効果があります。ほんの30分、別のことをした後でもう一度見直してみる。それだけでも初めに書いたときとはずいぶん考えが変わって来ます。そんなことを繰り返して行くと、自然自然に思ったことが整理がつくのです。頭の中で思いついたときには、いいセンスの話だな。と思って書き残しておいても、時間が経って見返せばつまらない内容だったことはいくらもあります。

 それだけ頭の中で思いついたことは頼りにならないのです。自分の頭の中はアイディア満載だ。と思っていても、実際頭で思っていたことを、紙に書き出してみると、大したことのない内容が二つ三つ出て来るだけ。それが頭の中で逡巡しているだけだったりします。思いついたことが本当にいい考えなのか、人に話すほどの内容なのか。紙や、パソコンに残しておいて、少し時間を置いてから見直す癖をつけるのは大切なことなのです。

 ましてや、半年前に書いたこと、一年前に書いたことなど読み返すと、未熟だったり、価値のないものだったりします。ときに、考えが根本から間違っていたりします。それゆえに見直すことはとても大切なのです。

 そんなことを繰り返しているうちに、書いたものもたくさん集まって来ましたので、ブログに載せてみようと考えました。余り古い話は、少し書き換えたり、新しい話題と抱き合わせたりして、マイナーチェンジをします。そして、古い内容ばかりでは飽きが来ますので、前日にあったこと、新しい話題なども足して、ブログに出すようにしました。日々思ったことを半分、溜まった考えから半分、ブログに載せています。

 先ず、試しに一年やって見ようと思いはじめました。それがわりと苦も無く出来たので、また一年、また一年と続けて行って、四年経ったわけです。毎日200人から300人の読者が見に来てくれます。少し話題の内容だと、500人700人と言うこともあります。

 私が朝の稽古や、資料の提出や、来客などあって、なかなかブログが書けないときもあります。そんな時に、何度も何度もブログを覗きに来てくれる人もいます。あまり期待して頂くのは申し訳ないと思いつつ、そうまで楽しみにされているなら、少しでも面白い内容を届けたいと、見えない読者に気を使いつつ、時間がない中を書き上げて、午後になってしまう時もあります。

 時にブログを二日も三日も出せないときもあります。そんな時に、読者からメールや電話が来ます。「どうしたんですか?」。別にどうしたわけでもありません。パソコンが故障したり、地方公演などあって移動で忙しかったりしただけです。そうまで心配してくれることは有り難いと思います。

 

 こうして毎日ブログを書いて来たことは大きな効果を生みました。それは、日々の人との会話に整理がついて、話の内容が少し白くなったと思います。話ながらも、「いつもならこう話す話の組み立てを、順番を変えたことで少し面白くなったなぁ」。などと気付くことがあります。舞台の話し方も同様で、頭の中の整理がついて、アドリブで受け答えをしなければならないときでも、適切に話が出来るようになりました。

 ブログを書く前から、自分自身では、台本を書いたりしてましたから、きっちり話をしていると言う自負はあったのですが、それが実際はかなり曖昧だったり、不適切な言い方をしたり、面白い話を決して面白く話していないことに気付きました。話はしっかり整理を付ければもっともっと面白くなるのです。

 特に、政治や戦争の話題などは、自分自身でこう思う、こうしなければならない、などと思っていても、それを人に話すのはほとんど意味がありません。私から聞かされてもどうという話ではないのでしょう。それを、人が聞いても面白い。と思ってもらうにはどうしたらいいのか、固い内容は、ブログで伝えるには技術が必要です。こんなことも書き続けて行くと徐々に知識が身について来ます。ブログを四年続けたことは結果として、いい効果が生まれたなぁ。と思っています。

 

 さて、この先どうしようかなぁ。と考えています。久々手妻の本を出そうか、あるいは小説を書こうか。いずれにしてもまとまったものを書くとなると、ブログは回数を減らさなければなりません。週に一回とか、二回くらいにして、残りの時間で創作活動をして見ようかと思います。

 50歳で糖尿病になり、毎日飲んでいたアルコールを大幅に控えるようになりました。そうすると夜の時間を持て余すようになりました。そこで本を書くことにしました、「そもそもプロと言うものは」、とか、「手妻のはなし」、などはそうして生まれました。結果糖尿病は、創作を生み、いい結果になったわけです。糖尿病になってよかったとは思いませんが、考えを切り替えて成功したわけです。

 いろいろなものを書き続けて、来年は70歳になります。ここらで何か20年間のまとめをしたいと考えています。いくつかのアイディアはあります。その時のために今、資料を集めています。

続く