ボストーチヌイ
昨日北朝鮮の金正恩さんは、自国の列車で、ロシア領のウラジオストックまで出かけました。何をしに行ったのかと言えば、プーチンさん他、ロシアの首脳と会うためです。その会う場所と言うのが、ボストーチヌイと言う町です。
ボストーチヌイと言うのはどこにあるのか、恐らく、今回の会談がなかったなら、私はその名前さえ記憶することはなかったでしょう。シベリアの東寄りの中央部にあり、中国との国境にも近い地域です。
恐らく人も少なく、寂しいところだろうと思われます、冬の寒さなどは、マイナス30度くらいになるのではないかと思われます。そんな土地になぜロシアと北朝鮮の首脳が集まるのか。と言えば、この町は、ロシアの宇宙基地だからです。かつてソ連時代に飛ばした、ロケットの多くはこの町から発射されたのです。
この町に行きたいと望んだのは北朝鮮でしょう。北朝鮮は、このところ宇宙ロケット発射に失敗をしています。北朝鮮は何としても偵察衛星が欲しいのです。然しそれを自国で製造できないため、ジレンマに陥っています。そんな中、ロシアから、北朝鮮に、武器弾薬の供与を求められてきました。
元々北朝鮮の武器はほとんどがロシア製ですから、今ある武器をロシアに貸して、後で最新式の武器と交換できれば、北朝鮮に取って悪い話ではありません。そうならすんなり武器を貸し出せば良さそうなものですが、ここで、北朝鮮は更に条件を付けます。宇宙ロケットを飛ばす技術をロシアに求めたのです。
ロシアにとって、武器の不足は喫緊の問題です。今北朝鮮から武器が借りられれば、ウクライナでの戦闘も有利に侵攻するでしょう。そこで、北朝鮮に宇宙ロケットの作り方を教える代わりに、武器を求めると言う話が成立したのでしょう。
クレムリンから余り移動したがらないプーチンさんにすれば、ボストーチヌイに行くのは異例のことです。シェイグ国防大臣まで連れて行くと言うのですから、極めて重要な会議だと思います。今まで、北朝鮮の金一族を軽く見ていたきらいのあるプーチンさんですが、前回のクレムリンでの話し合いと言い、今回のボストーチヌイでの会談と言い、金一族を粗略には扱えなくなったのでしょう。
この会議は利害が一致していますから、きっと上手く行くでしょう。ただ、プーチンさんの、このところの権力は目に見えて落ちています。中国には勝手に地図の国境を書き換えられたにもかかわらず、兵も動かさずに、口だけの抗議で済ませたり、今回のように、わざわざ金さんを迎えにシベリア迄出向かなければならないと言うのは、何とも落ち目になったものだと思います。
ウクライナにはじわじわ陣地を取られて、占領地を失っていますし、近隣のアルメニアはロシアから気持ちが離れて行っています。フィンランドは早々にNATOへの加盟を決めてしまい。ロシアに忠実なベラルーシだって、この先はいつ手のひら返しするかわかりません。ロシアの衛星国はどんどん狭められています。
このままではロシアの分裂は必至です。そのロシアの今後の成否が、北朝鮮の武器供与にあると言うのはどうも頼りない話です。親子孫三代が君臨した北朝鮮と言う国自体が、民主主義とは程遠い国です。社会主義と言いながら、世襲制で支配していては、社会主義自体も嘘だと言うことがばれています。
とにかく、この会議で、北朝鮮は、ロケット開発の技術を手に入れるでしょう。そしてロシアは北朝鮮の武器弾薬を手に入れて、一時的にウクライナ戦に投入して、現状維持は可能でしょう。でもどちらの国も危ういと思います。
私のような政治、軍事の素人の一介のマジシャンがニュースを見ていても、この二人はもう持たないなぁ。と思います。なぜなら、世界の人々が見たなら、どちらも時代を掴むセンスが欠けています。
アメリカの子供が、インドの子供が、ブラジルの子供がニュースを見ていて、こうした政治家になりたいとは思わないでしょう。この二人には時代の先端に生きるリーダーが持っているある種の輝きがないのです。
優れたリーダーには次の時代を予感させる明確なメッセージがあります。かつてのプーチンさんも出て来た時には輝きがありました。
然し、クレムリンに10年居座って、大統領と首相の座を行き来し始めた頃から、彼は急に自分の地位に固執し始めました。ロシアをどこに持って行くかという目的が見えなくなり、自分が長く居座ることに目的を置くようになったのです。それは北朝鮮の金一族が三代北朝鮮に君臨したことと結果は同じです。
同様な話は、隣の中国でも起こっています。習近平さんが出て来た時は、経済を発展させる有力なリーダーが出たと思わせました。実際、習さんによって中国経済は上昇しました。然し、その習さんは、実は資本主義の柱が土地所有にあることを知らなかったのです。先週、習さんが、土地は投資の対象ではない、と宣言してしまったことは、これまで発展してきた中国の経済発展を否定してしまいました。多くの不動産企業や、地方政治はこれで破綻します。
土地が担保になると言うことを否定してしまうと、何を担保に金を借りたらいいか、経済の根本が失われてしまいます。当初中国は、かつて徐々に自由経済を認めて行ったように、土地所有も少しずつ開放するものだと思われていたのです。それが思いのほか、国は土地を手放そうとはしなかったのです。
そうなら、いま中国で売られているマンションは、借地権の上に建物を建てているのと同じことです。建物以外、担保にできる不動産がないのです。然し建物には耐用年数があります。古くなれば無価値です。これでは経済の発展は無理なのです。早晩中国はとんでもない大不況が来るでしょう。それは経済を知らない政治家が招いた大失敗なのです。明日は、土地と資産のお話をしましょう。
続く