手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

ウクライナは停戦なるか

ウクライナは停戦なるか

 

 どうも、このところロシアはウクライナ軍によって基地を次々に爆破され、劣勢に立たされています。ロシア兵の戦意も低下して、軍は機能しなくなりつつあるようです。それでもロシア軍は、一昨日、昨日とオデッサ港をミサイル攻撃したようですが、既に停戦合意がされている地域で、繰り返しミサイル攻撃する理由がわかりません。しかも、それ以外の地域の戦闘は止まった状態のようです。

 どうしたのでしょう。ロシア軍はなぜ動かないのでしょう。どうも兵士の数が圧倒的に不足しているようです。プーチンは急ぎ、国内の刑務所にいる囚人に徴兵を呼び掛けていると言いますが、それはロシア国内で兵隊に志願する若者が足らないためのようです。

 実際この5か月で、ロシア軍は既に、4万人以上の死者を出しているため、負け戦になっていると言う情報がロシア国内にも知られて来ていて、志願兵も集まらないようです。それで、苦肉の策として、刑務所の囚人を兵士にしよう、と言う案が出てくるのでしょうが、囚人をいきなり兵士にするのではまるっきり泥縄です。囚人を集めて兵士にしてもすぐに使えないだろうと言うことは、私のようなマジシャンですらわかります。

どうもプーチンは万策尽きた感があります。

 

 ロシアの衛星国の支援を求めるにしても、衛星国はNATOの積極的な支援を見たうえで、この戦いには疑問を感じているらしく。衛星国の動きは鈍いようです。頼みの綱の中国も、支援には消極的です。それに反比例するかのようにNATOATOのウクライナへの支援はますます活発化しています。

 

 ポーランドは、元ロシアの戦車を近代的に改修したPT-91戦車を232両、ウクライナに提供すると言っています。PT-91 は今現在、ウクライナ国内でロシアが使っている戦車よりも性能が良く、確実にロシア軍を殲滅し得る機能を備えています。更にスペイン が、ドイツ製のレオパルト2と言う戦車をウクライナに提供すると言っています。

 ウクライナはこの先、続々強力な兵器が入って来ることになります。但し、どうもNATO軍は、今回のウクライナ侵攻を機会に、今自国にあるロシア製の武器をウクライナに売却して、自国はそっくりアメリカ製の最新式の武器に取り換えるように動いています。ある意味ウクライナ侵攻はポーランドにもスペインにも、その他NATO軍にとっても、装備の近代化を図る意味において、まことに好都合だったわけです。

 一見ポーランドや、スペインがウクライナに武器を供与することは善意の行為に見えますが、国と国との関係は必ずしも善意で行動するわけではありません。ウクライナポーランドが戦車を提供するのは、今ある戦車よりも性能の良い戦車を手に入れるためにするのであり、もし将来、何かの行き違いが生じて、ウクライナポーランドが戦うようなことになったときに、昔戦車を譲ったことが、後に仇(あだ)とならぬよう、先々の利害を考えた上で行動するのは当然のことなのです。

 ウクライナも当然それを知った上で武器の供与を受けています。仮に、少し古い武器でも、とにかく手に入りさえすれば、装備の遅れたロシアの軍隊を倒すことが出来るから喜んで引き取るのです。

 

 いずれにしても、プーチンはどんどん追い詰められています。強力な武器がウクライナに集まって、ウクライナの戦意はどんどん高まって行く。対してロシアは、自国の武器の不備が露呈して、ミサイル攻撃にさらされています。更に、衛星国の支援も受けられず、ロシア兵も集まらない、三重苦の中で戦況は好転していません。

 ロシアに対する金融制裁や経済制裁も徐々に効果を上げてきています。プーチンは望まないとしても、もうロシアとしては戦いを継続することは不可能になりつつあります。そうなると結果として、そう遠くない将来、停戦になるでしょう。

 ウクライナとすれば当初の目的は達成できたことになります。然し、勝利のために支払った代償はとてつもなく大きなものです。都市と言う都市は破壊され、兵士だけでなく、多くの一般国民の人命が失われ、経済活動は全く機能しなくなってしまいました。仮に、今停戦合意が出来たとしても、これから国を再建することは簡単ではありません。

 

 それにしても、ウクライナを含めて、ヨーロッパの国民の祖国愛は相当に強いものを感じます。一旦敵国に攻められたなら、自国民の男性を皆兵士にして、国外から出られないようにして、戦争に無条件に参加させる。そのことを国民も一切反対しない。その強固な姿勢こそ、今回のロシアを撃退する戦争につながっています。

 当然なことではありますが、ウクライナがロシアと戦うことは簡単なことではありません。ましてや勝利を掴むにはよほどのウルトラCの技を駆使して闘わなければなりません。ゼレンスキーさんは大した政治家だと思います。

 当初ウクライナ侵攻に非関与で、非協力的だったドイツをここまで支援させるようにしたことは大きな成果だったと思いますし、他のNATO各国にも武器供与を積極的にしてもらうようになったこと、バルト三国がロシアと対立して側面支援してくれたこと、スゥエーデン、フィンランドが率先してNATO加盟を申し込んだこと、そして加盟を認められたこと、そのことから、トルコも、中立を保っていることが出来なくなり、NATO寄りの姿勢を取らざるを得なくなったこと。これによってロシアを包囲する一連の戦略が大きく形作られたことになり、長年NATOの裏でなかなかまとまらない話を続けていたことが、驚くほどの短期間に大きな輪になって団結が生まれたことになります。

 この先、プーチンがあっさり失脚して、新しい政権が出来るならめでたしなのですが、これから先がどうなるかはまだわかりません。また、中国が何をやりだすのかもわかりません。大きな戦争につながらなければいいのですが。但し、今世紀の前半はあちこちで戦争が起こりそうです。

続く