手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

ロシアの衰退

ロシアの衰退

 

 日本では参議院選挙や、それに関連して安倍元首相の狙撃事件などがあって、話題はすっかり国内問題に移ってしまいました。然し、依然として、ウクライナでは戦闘が続いています。マスコミの興味はウクライナから離れたとしても、戦争は終わってはいないのです。

 始末の悪いことに、この戦いは、互いが一気に攻め込んで短期決戦で決める。などという作戦が出来にくい状況です。というのも仮にウクライナが、アメリカや、NATOの支援を受けて、大きな作戦を立てて戦えば、ロシアも総力をかけて戦いに挑むことになり、これは結果としてプーチンを追い詰めることになり、プーチンは自暴自棄になって、場合によっては核兵器の使用も起こしかねません。そうなると世界大戦に発展してしまいます。戦いが拡大すれば簡単には解決しなくなってしまいます。

 そこで、NATOアメリカも、ウクライナに武器を供与して、戦争を継続しつつも、その裏で、ロシアの銀行に制裁を加え、商取引が出来にくくして、ロシア経済を混乱させ。同時に、ロシアの製品や素材(石油、天然ガス等)をなるべく買わないようにして、なおかつ、アメリカヨーロッパの製品(コンピューターや機械類)を輸出しないようにして、経済面で圧迫しています。

 ロシアは大国ですから、経済制裁をしても、いきなり身動きが出来なくなるということはありません。仮に制裁を受けても、中国やインドを仲介して、製品を輸入すれば、当初はなんとか体裁を繕って活動出来るでしょう。

 それでも徐々に物と金が足らなくなり、ロシア国内は混乱してきます。経済制裁が大きく響いてくるのは、半年後、一年後くらいでしょうか。ここに至って、ロシア国民は初めてプーチンのして来たことが間違っていると気付きます。そこでロシア国内でクーデターなり、プーチン失脚があって、指導家が変わるでしょう。

 

 新たな指導家は、不況の原因がウクライナ侵攻であったことは明白ですから、まず第一に休戦を提案するはずです。と、ここまでのシナリオはその通りに進むかと思いますが、問題は、プーチンの後に出て来る政治家(あるいは軍人)です。

 新たに現れた政治家は、金融や、物資の制裁を解いてもらおうとして、休戦協定を結ぶでしょう。然し、彼らは決して物分かりのいい、穏やかな政治家ではないはずです。プーチン以上に強硬で、唯我独尊な考えをする世間知らずな政治家が政権を取る可能性があります。なぜそんなことが分かるのかといえば、社会主義国一党独裁国家だからです。

 これまで、社会主義国のリーダーたちは、自国で自分が思い通りにならなかったことなど何もなく、言ったことはすべて通ってしまっていたからです。そのことは中国しかり、北朝鮮しかりです。始末の悪いことに、社会主義国の国民はそうした、歴史に残る大王のような強権政治家に憧れていますし、政治家自体もそうした立場に立つことを望んでいます。

 ただ、いかな世間知らずの政治家が出て来たとしても、経済が疲弊し、軍事力が衰えてしまっては戦争を継続することは出来ません。ここは休戦しかありません。問題はその後です。ウクライナに対する補償の問題です。

 この4か月。ロシアが破壊したウクライナの都市、工場、交通網、人的被害等の補償、を併せると、200兆円とも300兆円とも言われています。簡単に200兆円と言いますが、ロシアにとっては数年分の国家予算です。そんな巨額の費用を今のロシアは弁済できません。あの手この手で払わない言い訳をしてごねるでしょう。

 然し、経済制裁で締め付けつつ交渉して行けば、ロシアは、国を分割するなりして返済に充てることになるでしょう。筑波大学の中村逸郎教授は、「ロシアは5分割される」。と言っています。結局ロシアは、800年前のモスクワ公国のように、ウラル山脈から西の地域に限定して国を維持するようになるかもしれません。むしろ、この地域のみを守っていたほうが、ロシアにとっては、かなりコンパクトで豊かな地域を所有することになり、国土は小さくはなっても、そこそこ先進国として維持できると思います。

 何にしても、ウクライナの戦後補償は、20年経っても完全復活は出来ないかもしれません。随分先の長い交渉になるでしょう。

 

 一方ゼレンスキーさんは、当初捨て身の戦法でロシアと戦いを挑み、思わぬところでNATOアメリカの支援を受けて、よい方向に戦局を進めました。今世紀の世界中の政治家の中で稀に見る優れたリーダーシップを見せたと言えます。

 この先ロシアが崩壊するようなことがあれば、幕内力士が横綱を倒したようなもので国技館内(世界中)大騒ぎの状況になるでしょう。然しながら、ゼレンスキーさんの鮮やかな成功に比べて、ウクライナ国内は困窮するでしょう。ロシアに勝利した勲章に比して、あまりに大きな代償といえます。

 

 それでも、そう遠くない将来、ロシアも社会主義も崩壊するでしょう。そうなると、それを恐れるのは中国であり、北朝鮮です。中国は、経済力にものを言わせて、ロシアの戦後賠償を引き受ける代わりに、シベリアを手に入れるかも知れません。シベリア全土ではないにしても、ウラジオストック近辺や、そこからカムチャッカ半島沿岸までは魅力です。そうなると中国は世界最大の版図を手に入れることになります。

 ロシアとしても債務を引き受ける国が、日本か中国かアメリカかという選択であれば、中国に委ねるでしょう。その時、日本は、北から南までぐるっと中国領に取り囲まれることになります。その時になって、「そりゃ大変だ」。と慌てても遅いのです。

 この先は、世界中、今までになかった社会の変化が起きるでしょう。今まで通用していた価値観が通用しなくなるでしょう。その時に、自国は自国で守るという信念がなければ、国は生き残れないでしょう。

 ウクライナのことは他人事ではありません。「キエフの都市に空爆があった」と、まるで他人事のように話していてはいけません。沖縄、石垣島尖閣諸島にミサイルが飛んで来る日も近いかもしれないのです。

 今回の選挙は、自民党が大きく伸びました。安倍さんの死は、エポックメーキングな出来事なのかもしれません。今が日本の歴史の大きな転換点を迎えているのだと思います。

続く