手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

7月第二週のアゴラカフェ

7月第二週のアゴラカフェ

 

 今日(7月10日)は朝8時に選挙に行きました。別段この人に入れたいと言う人はありません。ただ義務感で出かけました。毎回、投票所に行って、誰に入れていいかを迷います。候補者に関する知識がないのです。

 食レポナビがあるなら、選挙レポナビがあってもいいでしょう。参議院も、区議会議員も、残念ながら、私は詳しく知っている候補者がいません。そうなら、何人かの信じられる人(選挙研究家などという人がいるなら)のナビがあれば、そこから何人かの候補者のデーターを紹介してもらい、そこから絞り込んで投票を考えるなら便利です。丸のみで信頼することは危険でも、数名絞り込めるだけでも便利ではあります。誰かやってくれませんか。

 

 3日前に小野坂東さんから電話があり、今日のアゴラカフェを見に行きたいと言われました。私が一か月前に、「若手の演技が良くなりましたよ」。と吹いたため、その気になったようです。

 ところが、前日に、コロナの予防注射をしたところ、熱が出てしまい、来れないという連絡を、今朝頂きました。残念です。でも東さんも88歳です。無理は出来ません。それでも来てみて見たいという熱意はすごいと思います。アゴラカフェのあの場の雰囲気と若手の熱演を見てもらえたなら、きっと満足してくれると思います。

 然し、又来月と言うこともあります。その時はぜひお誘いしようと考えています。

 

 家に戻って、9時から、二人の生徒さんの稽古を致しました。そして、12時少し前に日本橋マンダリンホテルのアゴラカフェに行きました。12時50分。ちょうどザッキーさんのクロースアップが終わり、ステージショウが始まる所で入場しました。お客様は16名。司会はザッキー、

 彼は人や組織を取りまとめて行くことに手慣れています。正直、こうした才能があったことを今迄知りませんでした。彼がこのショウをリードして行くことで、お客様は安心して見ています。

 

 一本目は前田将太。洋装で、シルクからカードマニュピレーション。最近カード手順を持つことの必要性に気付いたようで、このところ真剣にカードを練習しています。いいことです。苦手を克服してこそいいプロに成れます。そのあとはサムタイ。洋服で演じました。但し、気を付けないと、「技物、プラス喋りネタ」の典型的な営業手順に陥ってしまいます。サムタイはもっともっと神秘的な崇高なものです。カードとの取り合わせは、安易に並べて演じるのではなく、もう一つ、センスを加えて洗練さを追求する必要があります。

 

 二本目は黒川智紀。三本目の菰原裕と同じく、今月末にカナダでFISMがあるため、稽古がてらの出演。大きなダイスの傍にまどろんでいるピエロが目覚め、ネジがまかれると動き出します。メルヘンの世界です。そこから、ダイス、カードのプロダクション、ウォンドの変化など、いろいろマジックを見せて、お終いはEND マークで終わり。

 演技は後半に進むにつれ、細かなハンドリングが加えられ、より不思議さが加味されて、内容はよりマジック化しています。そうなると、自身が作り上げたメルヘンの世界と、職人的なスライハンドの演技にギャップが生じてきます。

 巧い人ですし、マジックが好きなことは演技からひしひしと伝わってきます。さりながら、彼がもう少し大きな成功を掴み取ろうと考えているなら。今の状態はカオスのるつぼの中で答えを見出だせず苦闘中の状態と言えます。

 

 三本目、菰原裕。会社勤めをしつつアマチュアとして活動。数年前から演じ続けている得意芸。手順はより細部まで不思議が加味されて、実際不思議さを増しています。元々テンポのある演技ですから、見ていて見飽きがしません。

 今回見ていて彼が何を語りたいのかが初めてわかりました。夏の暑い日に、冷たい水を飲みたいと紙コップに口をつけると、出てきたものはボール。そのボールが出たり消えたり、そのうちにはコップがやたら増えたり、糸電話にLED電気が出て来たりして、お終いにようやく液体が出現。彼が必死で演じているボールも、カップの増加も本質とは何ら関係なく、ただ水が飲みたかったのですね。小さなエピソードを着真面目に演じている姿が好感が持てます。マジック愛が伝わってくる演技でした。

 

 四本目、ザッキーの演技。伸びるロープから、結び目の移動。そして12本リング。卒なく演じる優等生の演技。店からもお客様からも愛されるような、万人受けするタレントです。マジック界に貴重な人となって行くでしょう。

 

 再度、前田将太登場。和服を着て、「双つ引き出し」と「連理の曲」。卒なくこなしています。これも優等生の演技。こうした基本的な演技ですら、ちゃんと型が出来て、見得が切れて、安定して見せられる手妻師は日本に数人です。ちゃんと演じたなら自身の一生の得意芸になるものを、きっちり演じる人が少ないことは残念です。逆に考えるなら前田は大きな武器を手に入れたと言えます。

 

 全体を見て、今回の4組はバランスが良く、見ていて見飽きがしませんでした。若いお客様が多くて、反応が良かったことも雰囲気を盛り上げたと思います。何とかこのレベルが維持されたなら、若手のマジックショウは、この先1年、2ねん先までも続いて行くでしょう。少し安心しました。

 

 客席に藤山大樹と、和泉さんが来ていました。終演後、地下のハンバーガーショップへ行き、一緒にビールを飲みました。大樹と一緒に飲むのは正月以来です。たまに会って話をするのは楽しいものです。

 

 来週は「カズカタヤマと若手マジシャン」です。又時間を作って見に行こうと思います。マジックが毎週見られることはなんて幸せなのかと思います。

続く