手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

誤算の連続 ロシア

誤算の連続 ロシア

 

 ロシアによるウクライナ侵攻は、既に1年8か月になります。当初ロシアは20日間でウクライナ全土を制圧すると言っていたものが、今では全く勝利のめどが立たないばかりか、9年前に奪ったクリミア半島すら奪われつつあり、ウクライナ東側の4州も徐々に追い出されつつあります。逆に、ウクライナ政府は、相当に強気になっており、

 「すべてのウクライナ領からロシア兵を全員撤退させるまでは和平交渉に応じない」。と宣言しています。 侵攻が始まった当初は、キウイやハルキウを守ることが精一杯で、その防衛すらもおぼつかなかったのに、20か月経って、ロシアを相手にこの強い発言は驚きです。

 それもこれもNATOからの武器供与を取り付け、アメリカから膨大な戦費と武器供与をしてもらったことが最大の勝因でした。アメリカはこれまで10兆円の資金援助をしたそうです。更にこの先5兆円の支援を約束しています。 自国に直接関与しない地域の戦いに、15兆円もの資金を出すと言うこと自体、アメリカは大した国だと思います。

 15兆円と言うのは、恐らくウクライナの国家予算に匹敵する金額でしょう。そこまでの資金援助をしてもらい、更に欧州各国から戦車やミサイル、迫撃砲などの武器供与を受けての戦いですから、さすがのロシアもたじたじです。

 ロシアからすれば、ウクライナ一国と戦っているのではなく、NATO軍とアメリカ軍を併せた軍隊と戦いをしていることになります。ドイツ製の戦車や、アメリカ製のミサイルなどが飛び交う姿は、まるで武器の見本市の様相を見ているようです。

 

 実際、ロシアが強大な軍事力を持っていたのはベルリンの壁崩壊の時期までで、それ以降、東欧各国の支配権を手放してからのロシアは、自国の経済が混乱し続けて、軍事費に予算を廻せず、ずっと古い武器を使用するのみで、この30年は徐々に国力を落としていたのです。

 そのことに欧州各国は気付かなかったのです。いや、ロシア人さえも気づいてはいなかったのです。実際ロシアの周辺国や、周辺部族を制圧する程度ならば今までのロシアの軍事力で充分足りていたのです。世界の国々はずっとロシアのブラフを信じていたのです。ところが、今回のウクライナの反撃で、ロシアの実際の国力が知れてしまいました。

 ウクライナは、思いのほか、ロシアが弱体化していたことを知って、アメリカやNATO軍の支援を受け続けていれば、確実にウクライナ全土は奪還できると確信を持ったのでしょう。

 対するロシアは、もうどこにも仲間がいません。ロシアの衛星国は、みな今回のウクライナ侵攻に関しては息をひそめて、協力を拒否しています。ウクライナがやむに已まれず決起した気持ちは、周辺衛星国の思いと同じです。それが分かっているだけにウクライナを攻める気持ちにはなれないでしょう。

 ロシアにとっての頼みの綱は中国と北朝鮮ですが、先月北朝鮮から武器の供与を受けたところ、どれも粗悪品ばかりでロシアは失望したようです。頭を下げて北朝鮮に協力を求めて、こんな粗悪品を借りて来たのではロシアの将来は真っ暗です。そもそも、北朝鮮にまですがらなければならない時点でロシアの立場は末期症状です。世の中には頼ってはいけない人と言うのがあるのです。デブで頭が角刈りの人には気を付けなければいけません。その見境すらつかなくなったロシアはもう危険信号が灯っています。

 中国は、ウクライナ侵攻には終始無関心です。協力も関与もしません。今ロシアに協力をしたら、とんでもない負け戦に首を突っ込むことになり、下手をすれば共倒れに陥る可能性すらあります。然し、全く協力をしないわけでもないようです。

 多分ロシアがこの先武器調達に困窮して、窮余の一策で中国に、領土を質に入れて、武器の供与を求めて来るようであれば話は変わります。長い間ロシアの圧力に押されていたのは、ウクライナだけではありません。中国だって、アムール川以北を手に入れられるなら、本気になって武器を提供することはあり得るでしょう。

 但し、ロシアが領土を削ってまで中国の協力を求めるかどうか、仮にそうして中国製の武器を手に入れたとして、実際のウクライナの戦線で使用して、ドイツの戦車、アメリカのミサイルなどと互角か、それ以上の勝負ができるかどうか。

 どうも今のロシア軍の戦意を見ていると、もうすでに勝ち目はないのではないかと思います。この先は傷口を広げないうちに、どこかで和平工作をしたほうが良いのではないかと思います。但しそれは野次馬であるマジシャンの意見です。

 今のところゼレンスキーさんの打った手はすべて成功しています。金も武器も権力も、何一つ持っていなかったゼレンスキーさんが世界の強豪相手に立ち回れたことは素晴らしいことです。偉大な政治家です。

 スーツも着ない。胸に勲章も飾らない。どこにでもいそうな一介の親父が、一切の武器も持たず、素手で武器を持った巨体の悪漢と立ち向かう姿は、昔の日本の柔道映画を見るようでその勇気に敬服します。

 但し、気を付けなければいけません。欧米の協力も、来年秋までが限界でしょう。それ以上長引くと、武器の供与も資金援助もどんどん打ち切られて行くでしょう。どこの国も自国の経済が不安定になって来ています。そうそうはウクライナを支援しきれなくなって来ています。

 先月ポーランドの首相が、武器供与に難色をしめす発言をしましたが、そのことはポーランドに限りません。もう欧州各国はぎりぎり限界に来ているのでしょう。

 そうなら何としても来年秋までにウクライナ終戦に持ち込まなければなりません。仮にウクライナからロシア軍をすべて追い払ったとして、それでめでたく終戦とはならないでしょう。その先、ロシアはウクライナへの賠償交渉に乗って来るでしょうか。何のかのとうやむやに逃げてしまうのではないでしょうか。

 そこで賠償金代わりに、ウクライナ軍が黒海周辺のロシア領を侵攻する段になったら、戦争はますます長引くことになりますし、ウクライナがロシア領を攻める行為に対して、欧州各国が支援するかどうかとなると、話は難しくなるでしょう。

 この先の交渉でよほど政治手腕のあるリーダーが出て来ない限り、ウクライナの平和はそう簡単には達成できないでしょう。

続く