手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

マイスター20年

マイスター20年

 

 昨日、マジックマイスターを公演しました。20回目です。開始当初から、プロもアマチュアセミプロも一緒になってマジックをする、と言うコンセプトのもとに、会を行って来ました。その基本姿勢は崩れずに、毎回、いろいろなマジシャンが出演しています。

 今回は出演者が20本を超え、真ん中に10分間の休憩を入れましたが、前後、時間にして3時間に及ぶショウでした。かなりのお客様が初めからお終いまでご覧になっていましたので、さぞや疲れたのではないかと思います。

 

 会場の武蔵野芸能劇場は、開館してもう40年になる劇場で、さすがに多少老朽化してきました。然し、私はこの劇場が好きです。特に、マジックマイスターに関しては、ここで開催するのが一番いいのではないかと思っています。

 と言うのも、楽屋が一つで、常にみんな一緒に話をしながらお昼を食べたり、セットをするのが面白く、こういう場所を楽しみにしている会員さんもかなりあります。ところが、今回、余りに参加者が多くなり、やむなく地下の会議室も借りました。そこには若いマジシャンや、若手に入ってもらいました。

 そのため二階の楽屋はすっきりしたのですが、逆にごちゃごちゃした賑わいはなくなりました。どっちがいいのでしょうか。

 会場を押さえる際に、座高円寺と、武蔵野芸能劇場のいずれかの抽選をします。多くの参加者は綺麗な座高円寺の出演を望むと思われますが、私は武蔵野芸能劇場がいいと思います。まぁ、来年も、くじ次第でどっちになるかわかりませんが、私はどちらでもいいと思います。以下私の出演者の感想。

 

 開演は16時30分。150の席数のうち、100人を超えるお客様が開始と同時にお越しくださいました。

 一本目は高橋朗磨、4月から私のところに弟子入りしました。日大に通う傍らの弟子修行です。学業が中心ですので、稽古も限られています。演目は中華蒸籠(せいろう)。今はなかなか演じる人もありません。これを和風にアレンジしました。10代で、着物袴姿での演技です。先ず先ず上手く行きました。ひょっとするとこれがこの先、朗磨の得意芸になるのかも知れません。

 二本目は、高橋洋子さん。黒の和服姿で袴、日本蒸籠です。同じ蒸籠でも、中華の蒸籠と和の蒸籠では随分演じ方も違います。随所に扇子や、毬など、ご当人の工夫があり、演技も巧くまとまりました。

 三本目の穂積みゆきさんは、風邪でお休み、

 四本目は松野正義さん、独自の世界を作りつつあります。扇子のプロダクション。100%成功したわけではありませんが、自身の工夫が詰め込まれています。この先この手順を発展させて、巧さが出て来たなら素晴らしいものになると思います。

 五本目は高橋入也さん。18歳。ロープとリング。不慣れが色々見えましたが、当人の見た目と燕尾服姿が良く、基礎を積んでゆくうちに上手くなるでしょう。

 六本目は磯部利光さん。富士市から、70歳を過ぎていらっしゃいますが、スライハンドが好きで、熱心です。今回は12本リングに挑戦。喋りの壁は相当に厳しかったようですが、よく演じ切りました。

 七本目は川上一樹さん。東京を中心に活動するプロマジシャン。180㎝の長身が目立ちます。演技はシルク。独自の感性がマッチして、デリケートな演技。ビッグフィニッシュを作らず、さりげない小さな不思議の積み重ねで自分の世界を作っています。

 八本目は高橋正樹さん。毎年出演しています。これまでも何度か演じたキューピープロダクション。場内爆笑で一番の受け。

 九本目は小林拓磨さん。スライハンドが大好きで、これまでカード一本でしたが、今回はシンブルや、四つ玉を加えて厚みのある演技を作りました。巧さが光っています。

 十本目は日向大祐さん。無理のない手順構成で、芝居心を加味して、シルクや傘でまとめました。オーヴァーザレインボーの曲でいい世界を作っています。

 ここで休憩。

 後半、一本目はMITSUBAさん。名古屋在住、21歳。クロースアップでプロ活動をしています。田代茂さんから習っています。3本リング。シルクなど、少し照れながら見せるのが若々しくて好感が持てます。

 二本目はスマイル藤山さん。富士市から。ボランティアで活躍、オレンジの花のプロダクション。大きなメガネが印象的、音楽のノリが良くて、人に愛される演技です。

 三本目は名古屋から、小林歩夢さん。12本リング。今回同種目が重なりました。かなり忠実に手順をこなしました。ボランティアなどでは十分に受ける演技です。

 四本目、伊東市から、稲葉美穂子さん。和風ドレスで、袖卵。上手く綺麗に演じました。音楽もマッチしています。曲の終わりと演技の礼がピタリ一致しました。

 五本目は藤山郁代さん。20回続けてきたマイスターに初回から出演しています。今回はお椀と玉。小さなマジックですが、巧く演じています。

 六本目は愛知県一宮から、小川慶子さん。銭太鼓の踊りから始まり、五宝蒸籠。蒸籠の演技も重なりましたが、演じる人によって随分違って見えます。ボランティアで活躍。明るい陽気な演技が好感が持たれます。

 七本目は、銀座でマジックバーをしている、早稲田康平さん。背が高く、タキシードが似合います。ザッツエンターテインメントの曲で、カードマニュピレーション。後半はゾンビボール。ともに手慣れた手順。今どき珍しいくらいのスライハンドマジシャンです。

 八本目はザッキー&大成。スーツ姿のザッキーと、和服の大成がコラボして、卵のアクト。いろいろ模索中の二人です。二人の対比が際立って、互いにうまさが出て来たなら、面白くなるでしょう。大成は何があっても自分のスタイルを変えないタイプ。方や、ザッキーは協調型で、人に寄り添うタイプ。この違いをもっと強調したら、学校や、会社内によくあるタイプの人格を表現できて面白いと思います。

 九本目は田代茂さん。埼玉の医師です。小学生のころから村上正洋さんに学び、今では数少ない村上流のマジックの継承者。前後に激しく動いて、踊るような振りが特徴的。今回は村上さんお得意のハンカチ切りや、ビール瓶プロダクション。杉やんと言うプロ志望の18歳が手伝っていました。賑やかな舞台でした。

 お終いは、私の蝶。本当は、植瓜術を演じる予定でしたが、出演者が多すぎて、持ち時間が少ないため、急遽、蝶に変えました。古風な蝋燭灯りの演出を加えました。弟子の大成と朗磨が面灯り(つらあかり)を手伝いました。

 全体が済んで7時50分。スタッフ一同の努力で時間オ-バーもなく、上手く行きました。何にしても毎年続けて来られたことは幸いです。さて来年はどうなるか。又みんなでマジックをしましょう。

続く