手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

ヤングマジシャンズショウ 

ヤングマジシャンズショウ

 

 一昨日(8月14日)アゴラカフェにて、ヤングマジシャンズショウが催されました。

12時入場、12時30分、クロースアップ開始。ザッキー。早稲田康平によるクロースアップです。今日は小野坂東さんとカズカタヤマさんが見に来てくれました。

 私は午前中に一人マジックの指導がありましたので、アトリエで11時30分まで指導をし、12時30分に日本橋に到着。そのままアゴラに入り、クロースアップから拝見しました。

ザッキー早稲田のお二人がテーブルホップを開始すると、「この二人は雰囲気がいいね」。と東さんが褒めていました。確かに二人の雰囲気が、アゴラカフェでのマジックショウを引き上げています。演技も、今回で3回目になりますので大分手慣れてきたように見えます。

 東さんは88歳、元気です。一人で日本橋まで歩いて来るのですから大したものです。ショウを見ながら久々上機嫌で私に話しかけて来ます。

 

 13時からはステージマジック。ザッキーはそのまま残って司会。1本目は藤山大成。先月、名前を前田将太から藤山大成と改めたばかり、和の紐切りから始まり、途中和傘を出しました。卵の袋から紙卵。サムタイで喋りがあって、お客様とのやり取りがあって、陰陽水火の術(真田紐の焼き継ぎ)。一連の手順で17分くらいあったのではないでしょうか。かなりのボリュームでしたが、当人は楽しげに演じていました。

 東さんは、「真面目に演じているのはいいのだけれども、手妻は粋さが肝心だからねぇ。出て来るだけでも色気を感じさせるようになってほしいね」。と言っていました。それが簡単にできれば苦労はないのです。

 

 2本目は新井ショウ、カードマニュピレーション。かなり凝った出し方をします。カードが途中から赤いカードに変化したり、首の後ろからカードが出たり、演じている内容は不思議です。但し、ご当人の性格によるものなのか、全体に地味な印象を受けます。巧いマジシャンであることは分かりますが、平明に演技が進んでしまって、お客様は拍手がしにくく思われます。もっと、別の素材も加えて、演技に厚みを持たせた上で、見せる力を付けたらすごいマジシャンになると思います。

 東さんは「この人は随分前から色々なコンテストで見ているんだ。熱心で、うまいよね。でも顔の印象が残らない。もっと表情に個性を持たせたらどうかな」。と言っていました。

 間にザッキーが出て来て、3枚の中国コインとリボンを使って、リングと紐の手順。

 

 3本目は諭吉、間にカードの演技が挿入されて、持ち時間が少し長くなりました。ズッキューンと初音ミクへの愛を語って、個性が良く出ていて面白い演技です。でも、そろそろ新たな展開が欲しいところです。カードを足しても5分弱と言う演技時間は寂しく感じます。途中スローバージョンのアクトが入ってもいいかと思います。

 

 4本目はザッキーのアクト、伸びるロープをお客様に手伝ってもらい、結び目の移動。何度も結んだ紐が団子になって落ちるのは天海師のアイディアかと思います。ここに持ってくるのはいいアイディアです。喋りがスムーズになっていて手慣れて見えます。そして12本リング。巧くこなしています。

 東さんはザッキーの演技をちゃんと見たのは初めてかも知れません。「彼はショウ全体の取りまとめがうまいね。喋りも達者だし、陽気なところがいい」。と言っていました。

 5本目は早稲田康平。新聞紙の復活。ゾンビボール。タンバリン。かつての昭和40年代のマジシャンの定番手順です。ここまで昭和を見せるなら、曲も思いっきり古くてもいいのでは、マンボナンバー5だの、花まつりだの、コパカバーナだのとラテン音楽で古風にまとめたなら新たな昭和レトロな世界が再現できるかもしれません。

 背の高い早稲田康平は、タキシードを着てゾンビを演じる姿が雰囲気があってよいと思います。スライハンドできれいにまとめています。終わり方も大きくまとまっています。

 東さんは、「何でも卒なくこなして巧いんだけども、自分の個性が欲しいね」。と言っていました。東さんは簡単に言いますが、それが出来たらAランクのマジシャンなのです。

 

 お終いは5人並んであいさつ。みんな楽しげに演じているのが印象的でした。総体を見て、大成、ザッキー、早稲田の3人は10分以上の演技をしましたが、見ていて心配がなく、喋りも上手くなっています。毎月アゴラに出演している成果が少しずつ定着してきたのかと思います。

 出来ることなら、複数のマジシャンが一緒になって演じるパートが一か所あってもいいかなと思います。全員がピン芸ばかり続くのが気になります。また、女性のアシスタントを一人加えてもいいかと思います。舞台に花が加わり、技物が引き立つと思います。この辺りを統括して見られる演出家が必要でしょう。

 

 演技終了後、アゴラカフェと今後の相談がありました。会議は2時間にも及び、来週までに我々の答えを出さなければなりません。来週の日曜日は、カズカタヤマ、再来週はマジシャンDaiの演劇とマジックのコラボショウです。どうぞ一度お越しください。

 

 終了後は自宅に戻りました。このところ睡眠不足が続き、少し疲れを感じます。デスクの前で本を読もうかと思っているうちにそのままうとうとと寝てしまいました。晩飯の呼び出しで目が覚めました。駄目ですねぇ、なすべきことの半分も出来ず、無為に過ごしています。でも若いマジシャンが徐々に安定した演技を見せるようになったことは嬉しく思いました。

続く