手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

大阪セッション28日

大阪セッション28日

 

 昨日は済みません。やはり忙しくてブログが書けませんでした。

28日、東京の自宅を朝5時20分に立ち、6時10分東京駅。6時30分の新幹線に乗り、9時に大阪駅着。9時40分に道頓堀ZAZAに到着。それからセットを始め、リハーサル、そして本番。本番を終えたのは20時30分。それから千房さんに伺い、一日早く打ち上げパーティー

 終わってホテルに到着したのが23時。アルコールも入っていたので、部屋に入って、身支度を済ませ、それから朝4時までぐっすり寝てしまいました。

 まだ少しアルコールが残っていますが、昨日ブログを休んでしまいましたので、28日のセッションの様子を書きます。

 

 この日はお客様の数が少なく、客席全体の半分がようやく埋まった状態でした。それでも中央のS席24席は完売。熱烈なファンによってセッションが支えられていることが分かります。

 

 一本目は、キタノ大地さん、いきなり関西のベテランから始まり、鳩出しのフル手順です。当人も気分を籠めて手堅く演じています。

 演技を終えると、すぐに司会者用の舞台に移動して、司会進行を始めます。この晩のキタノさんは大活躍です。

 

 二本目はすぎけんさん。早稲田のOBで、すぎさんとけんさんによる二人組のコンビで、今年1月の東京セッションのマジックコンテストで優勝。大阪セッションの出場権を獲得しました。演技はウォンド手順を二人が細かく分けて演じるもの。すぎさんの演技に対して、けんさんがその上を演じようと戦いを繰り広げます。

 なんにしても、腕まくりした手で、ウォンドを片手に3本持ったまま3本のウォンドが一瞬に奇麗に消えてしまうところが不思議です。しかも絶対にマジックをやりそうにない顔をしているけんさんが不思議を起こすため、客席からもどよめきが起きます。プロとは遠く離れた、徹底したアマチュアイズムの演技ですが、大阪のマジックマニアには良い刺激になったと思います。

 

 三本目は橋本昌也。長らく京都のギアにて出演し、そこでしっかり基礎を学びました。今はプロとして活動しています。初めに無音で、マイム明けでストーリーが進行します。鞄を見せて、鞄にスマイルシールを張ろうとします。すると、他の鞄のシールが全部取れて落ちてしまったり、知らずにスマイルシールが移動したり、小さな不思議が組み込まれて、大きな流れが作られて行きます。上手い発想です。

 細かく不思議が起こりつつ、話は展開されて行きます。ついついその先を見たくなります。表情も動きも計算されていて安定感を感じます。とてもよく工夫されたエンターティメントです。

 

 4本目はSORA。イギリスのテレビ番組に出演して一躍名前を知られ、国内海外で活躍。ひょうひょうとして、どちらかと言うと頼りなさげなイメージの人ですが、その優柔不断さが喋りに生きています。自称一流マジシャンが、ボトルの移動マジックをする過程で次々にミスをします。然しその都度ボトルが増えて行きます。おなじみのボトルプロダクションですが、SORAが演じると、独特の喋りで引っ張られます。良く計算された演技です。

 その後、お客様にスケッチブックから衣装のコーディネートを選択してもらい、その衣装を既に着ていた。という意外な落ちに客席騒然。一部の演技にふさわしいマジックでした。

 

 休憩後、藤山大成の出世披露。マジックの世界では珍しい披露口上です。これまで前田将太として活動していましたが、この度一本立ちして、藤山大成になりました。それを、峯村健二、SORA,キタノ大地と言った各先輩方が賛辞を述べ、出世を祝いました。

 

 口上の後、一本目に藤山大成の演技、シルク、ロープ、和傘、羽根などを使い独自の演技を見せました。大成は大阪セッション立ち上げから毎年出演してきましたので、大阪でもファンが付いています。上手くプロ活動が出来るといいと思います。

 

 二本目は高重翔。おなじみのFISMでの入賞アクト。ルンペンのマイザースドリームです。前半のコインの出し方が美しく、ZAZAのような小さな舞台で見ると引き立ちます。独自の世界です。

 

 三本目は、私、藤山新太郎の引き出しと若狭通いの水。若狭は古い手妻ですが、今では演じる人もありません。相当に種仕掛けを手直しをして、現代に通用する手妻の作り直しました。蝶や、植瓜術などと比べると、効果の弱い作品ですが、それでも、珍しさからか、これを再々見たがるファンがいます。大阪のマジック愛好家はこれをどう見たでしょうか。

 

 四本目は峯村健二。これまで6回開催された大阪セッションで、3回の出演。最多出演者です。スプーンの演技は看板手順です。ぜひ生の演技が見たいと言う人は世界中に多数います。その期待は大きく、この晩も、一つ一つのエピソードが進行するたびに客席からため息が聞こえました。およそマジックの素材であるカードも四つ玉も演じずにスライハンドが進行します。手順の作り方から、構成の仕方まで考え抜かれた演技です。終わると観客席から凄い反応。

 フィナーレは全員並んで幕。今回のショウは、一人一人のストーリー構成がよく出来ていて見ごたえのあるショウになりました。かなりレベルの高いショウを提供したことと思います。明日、すなわち今日29日ですが、また公演を致します。御見逃しのないようお越しください。

 

 終演後、千房さんのお店で打ち上げ。出演者とスタッフによる宴会、プロもアマチュアも一緒になっての宴会はマジックの世界では珍しく、こうした交流が持てることが大阪セッションの価値です。29日も何とか成功させましょう。29日は昼からコンテストがあります。どんなコンテストになるか楽しみです。

続く