手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

騒動の顛末

騒動の顛末填末

 

 世の中はこの先に何が起きるか全く予想が付きません。日々のことは、「多分大丈夫だろう」。と思って生きています。それがひとたび予定が狂うとまったくどうにもならないことが次々に起こります。その顛末をお話しします。

 

 9日の朝、私は京都にいました。前日リッツカールトンでの舞台を済ませ、爽快な面持ちで朝7時に起床して、身支度を済ませ、京都駅に向かいます。8時30分、新大阪駅着。駅の喫茶店で朝食を済ませます。

 昨日橋本昌也さんが、今日の私のレクチュアーも見たいと言うので、9時30分に新幹線中央改札で待ち合わせをしました。そこへ迎えのキタノ大地さんが来て、キタノさんの車で我孫子前にある北野さんのライブハウスのチチンプイプイに向かいました。

 このところ、大阪の指導はここでしています。この日はお椀と玉の私の改案手順です。これ午前中にひと段落して、昼休憩に入りました。橋本さんは午後から用事があると言うことでこれで帰りました。橋本さんは、2日前の、チチンプイプイでの大成の公演も見に来てくれました。熱心です。

 大成は、昨日の京都の私の出演のアシスタントできていたのですが、せっかく関西まで来たなら、ライブをやって見たらどうかと話すと、当人も乗り気で、7日のライブを引き受けたのです。キタノさんの協力もあって、2回の公演は満席、大成の大阪初ライブは成功しました。

 

 午後からは愛華さんの傘プロダクションの指導。私がアレンジした傘の手順です。道具や衣装が多いために、愛華さんの家の近くでないと不便なため、チチンプイプイで指導をしているわけです。チチンプイプイは舞台もありますし、鏡もありますので、教えるにはとてもいい場所です。

 さてそれが終わると、今度は若狭通いの水。これは江戸時代の方法を私がアレンジして、古い形でまとめたものです。一切種仕掛けを使わない方法のため、徳利二本あればできてしまいます。私のアレンジとしては久々のヒットです。

 ここまでを指導して4時でした。5時には、千房本社にお伺いして、会長さんに挨拶をします。もう出なければいけません。慌ただしく道具をしまい、車に積み込みます。

 この時、携帯電話とパソコンをスーツケースに入れてしまったことを思い出しました。パソコンはともかくも、携帯電話は出しておかなければいけません。然し、スーツケースは先に車に入れてしまっています。「まぁ、いいや、後で出せばいい」。そう思って、車に乗り込みました。これが運命の分かれ道でした。

 

 千房さんの本社に向かう途中、難波の高島屋に寄って、土産のお菓子を買い求めようとしました。いつものことですので、キタノさんに、車で高島屋の横で待っていてもらい、私は高島屋の地下に行き、たねやで水羊羹を買い求めました。この時、どうしたものか、店員が、箱詰めの羊羹を、あれこれ別のものを詰めることを進めます。私は時間がないので、このままでいいと言いますが、「こっちのほうが評判がいい」、などと言って進めます。ごちゃごちゃと言って来るのを断って、とにかく包装してもらい、手に持って、外に出ると、車がいません。

 ちょうど、この一角が舗装工事のため、余り車を長時間停められなかったようです。周辺を歩いてみましたが、キタノさんの車らしきものが見当たりません。困りました。今4時55分です。千房さんとの約束は5時です。「まぁ、私が千房さんにところに行くのは知っているのだから、先に行っていれば、車も来るだろう」。

 そう思って、私はタクシーに乗って、千房本社に向かいました。5時5分に千房本社着。40分ほど会長と話をして、12月8日9日の道頓堀ZAZAシアターで開催される、マジシャンズセッションのご協力をお願いしました。

 さて、外に出ると、キタノさんの車は来ていません。困りました。パソコンも、携帯電話も、指導料もスーツケースの中です。僅かな小遣いと新幹線チケットしか持っていません。「どうしたものか。一度高島屋に戻って見よう」。

 そう考えて、高島屋に戻りました。高島屋の周りをぐるぐる歩きましたが、キタノさんも車も見当たりません。私からキタノさんに連絡をしようにも電話番号が分かりません。キタノさんも私と連絡を取る手段がないのです。さてどうしたものか。

 そこで決断しました。「このまま帰ろう。とにかく新幹線に乗って帰ることまでは出来ます。あとはなるべくお金を使わなければとにかく家までは帰れます。帰りの新幹線は京都から先は既に買ってあります。そのため新大阪から在来線で京都まで行きました。

 弁当を買おうと京都駅で物色していると、牛肉のしぐれ煮と、大きな卵焼きの弁当がありました。しぐれ煮は甘辛く煮てあって、味は濃厚でしょう。脇にある卵焼は、京風ですから、薄い塩味で、出汁が聞いているものでしょう。この取り合わせは抜群に旨そうです。これにハイボールを買って、7時30分に新幹線に乗り込み、東京駅へ。

 車中、このしぐれ煮を肴にハイボールは、十分楽しめました、卵焼きはいかにも京都の味で。これはいい買い物でした。しばし、紛失した荷物の不安も忘れました。

 

 9時40分、東京駅に着きました。家に電話をすると、キタノさんから電話があったことを知りました。常に入れ違いだったようです。翌日キタノさんが宅急便で荷物を送ってくれるそうです。先ずはめでたしめでたし。

 と、そうは言っても、この日の晩(9日)はブログを書くことができません。この日は何もせずに休みました。翌日(10日)は荷物が届かず休み、11日の午前に、荷物が届きました。急ぎトラブルの話を書きましたが、時間がないため、詳細は夜に。と書きました。帰って見ると、今度は事務所のコンピューターの不具合で配信がうまく出来ません。どうも人生トラブル続きです。何のかんのとあって、12日の午後にようやく配信できるようになり、今に至りました。

 いやはや、携帯電話とパソコンがないと如何に不便なものかを思い知らされました。お騒がせいたしました。ブログもようやくかけました。無事にまとまって幸いでした。

続く