手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

市民会館でマジック

市民会館でマジック

 

 来週に開催される、ヤングマジシャンズセッション(3月1日2日、18時30~。座高円寺)の中で、メイガスさんと十文字幻斎さんは、マスコミとの繋がりが強く、多くのファンを掴んでいます。ショウの内容も、座高円寺の舞台よりも、もう少し大きな舞台で公演したほうが効果が上がるマジシャンです。

 何とか、こうしたマジシャンが単独で、或いは仲間を組んで、年間数十本、市民会館などの広い会場でマジックショウの公演が出来たなら、マジックは多くの観客に認知され、自然にマジックを支持する観客も増え、マジシャンとしても活動の幅が広がると思います。

 日本には各市町村に立派な劇場施設があります。そこには市の予算もあって、毎年芸術文化活動をしています。交響楽団や、能、狂言、歌舞伎、落語会、など、あらゆる催しをしていて、それぞれが市町村から依頼を受けて公演をしています。

 然し、残念ながら、マジックを定期的に公演しようとする市町村がありません。それがなぜかは言うまでもないことで、マジックは単独で1500人2000人の観客を動員できないからです。時々、芸能活動20周年、30周年などと言った特別な催しをするマジシャンはいます。そんな時には地元の市民会館を満杯にするでしょう。

 然し、これを自身の活動として、毎年30本、40本と、日本各地の市民会館を安定して公演して回れるような活動をするマジシャンは出て来ていませんし、各市町村も、マジックの活動を支援はしていません。

 

 例えば、落語会と言うのは全国の市民会館で頻繁に開催されています。これは、全国に落語ファンが数多くいて、落語会を開催すれば、安定して観客動員が出来るために定期的に公演しているのだと思います。それは長く落語が支持されて来たからこそ達成したことで、立派な活動だと思います。

 但しいつも落語会を見て思うのですが、幅20mもある大舞台で、落語家さんがぽつんと一人座布団に座って、喋る芸が、市民会館にふさわしいかどうか。ショウとしての効果、面白さなどを考えると、落語よりも、マジックの方が効果的で面白いですよ。と言いたくなります。でも現実には落語により支持者が集まるようです。

 市民会館の企画に少しでもマジックが入り込めるようになるには、実際に面白い内容のマジックショウをして見せて、観客を満杯にして見せなければなりません。

 

 それよりも何より、先ず、マジシャン自身が市民会館レベルの劇場を、活動の場にして行こうと考えない限り、現状は変わりません。

 落語家が人をたくさん集めると言っても、実際市民会館を満席にできる落語家は10人いるかどうかでしょう。それ以外の落語家は、小さな活動場所で、数十人の観客を相手に話をしているのです。つまり、リーダーとなって引っ張って行くような人が10人出てこないと、外部の人たちが認めてはくれないのです。マジックも、外部に向かって方向を示せるようなマジシャンが必要なのです。

 

 来週出演の、十文字幻斎さんは、今では催眠術師で名前を上げましたが、元をただせば、京都の高島屋によく遊びに来ていた少年マジックファンで、ディーラーの塩見さんに随分習っていたようです。マジック少年が、なぜ頭のとさかを赤く染めて催眠術をするようになったのか、その経緯はわかりませんが、昨年、福井の天一祭にゲストをお願いした際に、その観客のあしらいを見ていて、お客様の心を掴む巧さを感じました。この人なら無論、市民会館のような大舞台に出しても十分個性を発揮できる人だと思います。

 同様に、メイガスさんです。イリュージョ二ストであるため、大舞台は手慣れています。スタイルもマスクもいいし、アシスタントも美人です。今、マジック界を見渡しても、最もビジュアルで美しいマジシャンでしょう。

 人一倍マジックに熱心で、ディアゴスキーニのマジック指導など、誠実な指導は定評があり、いい活動を続けています。長く道具の製作に携わっていて、メイガスさんの舞台を見るようになったのはこの10年くらいのことですが、ショウにちゃちなところがないのが素晴らしく、大人のショウを感じさせます。この人も市民会館レベルの大きな舞台で頻繁に公演しています。

 

 昨日紹介した内田貴光さんも、イリュージョンとスライハンドでフルショウしています。こうしたマジシャンが核となって、それぞれ、スライハンドや、トークマジシャンと一緒に大きな舞台で公演が定着して行けば、マジックはショウビジネスとして成功して行けるはずです。

 実は今回のヤングマジシャンズセッションは、どうしたらマジックが仕事として成り立つのか。と言う答えを出すためにこのメンバーを組んでみたのです。希望をもってプロマジシャンの道に足を踏み入れた人たちが、数年もすると、「日本では食べて行けない」。だの、「理解あるお客さんがいない」。だのと不満を言いつつ、結局廃業して行きます。

 そうでしょうか、日本にいい仕事はないでしょうか?。いいお客様はいないでしょうか?。アメリカを見ても、ドイツを見ても、フランス、イタリアを見ても、ほとんどの国のマジシャンはいい仕事とは無縁の活動をしています。また、いい支援者も持ってはいません。でも確実に一国に数名、成功しているマジシャンがいます。どこの国でも成功者はわずかです。それに関しては日本も同じです。

 人のやらないこと、人の技量を超えた人には仕事があり、よい活動をしています。そうならマジシャンは何をどうしたならいい活動をして行けるのか。今回はそこに答えを出している人たちを集めて公演しています。

 素晴らしい公演になります。どうぞご興味ございましたら座高円寺にお越しください

詳細は東京イリュージョンの掲示板をご覧ください。

続く