私設軍隊 ワグネル
戦争は客観的に見ていると、信じられないような行為が平気で行われます。どうしてそんなことになるのか、第三者は首をかしげるばかりですが、当事者は秘密裏に、或いは大ぴっらに、まさに自分が正義だと言わんばかりに道に外れた行為を平然と行います。
ウクライナの関連ニュースでワグネルと言う軍隊が度々出て来ます。このワグネルと言うのは、正規のロシア軍ではありません。全く表向きは私設の軍隊です。軍隊に個人使用があること自体が不自然ですが、それが存在します。
ところが、この軍隊をプーチンさんは熱烈に支持していて、彼らに強い権限を与え、しかも、兵 士が不足すると、刑務所にいる受刑者をワグネルに入れて兵士として戦わせています。つまりこの軍隊は、限りなく政府が協力をしている私設軍隊なのです。
この組織のリーダーは、エフゲニー・ブリゴジンと言う人で、その経歴は謎で、噂ではペテルブルグでレストラン兼会員クラブを経営していたそうで、度々そこを訪れていたプーチンさんがそこの料理を気に入り、経営者であるブリゴジンを知り、柔軟でやり手なブリゴジンは出世街道を登って行った。と言う話です。
ロシアでは新興の金持ちをオリガルヒと呼びますが、ブリゴジンもそのオリガルヒの一人です。ブリゴジンは上手くプーチンさんに取り入り、陰に日に、あらゆる便宜を図るようになり、やがて私設軍隊、ワグネルを創設するに至ります。
どんな国の歴史でも、政権末期になると必ず、独裁者におもねて、超法規的な行動をして、指導者の関心を買って成功して行く人が現れます。無論そうした人は、指導者が失脚すれば消えてしまいますが、こうしたお調子者のお陰で、戦争中に、多くの人が粛清されたり、とんでもない戦争をしたり、多くの市民が困窮したりします。
独裁者に対して、批判をする、理性ある人たちを、まともに法律で裁けないような場合に、闇の力を利用して葬り去ります。闇の勢力は、良くも悪くも、指導者に絶対の忠誠を誓います。それによって、どんな相手でも指導者の意に添わなければ粛清されます。
指導者は、闇の勢力が、法の力が及ばないように匿（かくま）って、自分の主張を押し通します。こうなると闇の勢力はやりたい放題で、もう闇の世界の人ではなくなり、大胆な行動を取るようになります。
この一年、オリガルヒと呼ばれるロシアの富裕層が、何人も家族ごと自殺をしています。大富豪となって、何不自由のない生活をしていた人たちが、一家そろって自殺をすると言うのは不自然です。彼らは、ロシアがウクライナの侵攻をしたことで、世界中から経済制裁を受け、その反動で物の輸出入が止まり、会社の経営が思わしくなくなり、プーチン批判をしたのです。彼らのプーチン批判は秘密警察が聞きつけ、その結果が粛清になったわけです。
何人ものオリガルヒが亡くなりましたが、誰もその原因を突き止めようとはしません。何か言えば、次の粛清の対象になるからでしょう。まさに今のロシアの中でブリゴジン率いるワグネルは闇の勢力から躍り出た悪魔集団なのです。
プーチンさんにすれば、思わぬ作戦の失敗で多くの兵士を失い、兵の補給もはかばかしく進まないときに、ブリゴジンの発案で受刑者を使うと言う手段が出たときは、起死回生の策だったでしょう。然し、それは大きな危険が伴っています。
受刑者は、ウクライナで戦うことで、一定の時期が来たなら、過去の犯罪が帳消しになります。彼らは、無罪になることは喜ばしいと考えていますが、そんなことよりも、銃がもらえて、無法な行動が取れることの方が嬉しいのです。彼らを無条件で軍隊に入れたらどういうことになるのか、彼らは銃を持って、ウクライナの家に入り込み、金品財産を奪い、若い女性を犯し、言うことを聞かなければ殺害します。ウクライナの町は全く無法地帯となります。
如何なる戦争でもルールがあります。ロシアの正規軍なら遠慮してやらないことでも、ワグネルなら何ら問題はないのです。すべては戦時中のことと言う理由で犯罪は許されます。しかも、彼らが、金品を奪って、脱走して、それを元手にロシア領内に逃げ帰って、暴力的な活動を始めたら、どうなるのか。彼らは一層大っぴらに強奪や殺人を繰り返すでしょう。刑務所にいたものに銃を与えて、何でも許されるとなれば、もう法律は通用しないのです。
そんな社会を作ってしまったロシアはこの先、上手く国を治めて行けるのでしょうか。難しいと思います。世界中からの非難の目が注がれています。
無論ロシア陸軍は、ワグネルに対して批判的です。なぜなら、彼らのしていることは、ロシア軍の行為とみなされて、ロシア軍の評判を落としているからです。然し、兵器の不足、人員の不足はいかんともしがたく、更に、武器の不足から大胆な作戦も立てられず、手をこまねいて見ているのが現状です。
ワグネルもブリゴジンも、戦争のどさくさに現れた一輪のあだ花であることには間違いないのですが。そんなどうしようもない連中に頼らなければならないほどプーチンさんの力は衰えているのです。
この先ヨーロッパからドイツ製の戦車が続々と届くでしょう。そうなればウクライナ東側の平原で大きな戦いが起こると予想されます。東側を占領しているワグネルやロシア軍が、諸都市を守り切れるのかどうか。今の現状では難しいと思います。
矢張り防衛意識の強いウクライナ軍の方が戦意は高いでしょうし、今度はドイツの戦車が活躍しますので。力は随分違うと思います。ドイツ製の戦車軍団とロシア戦車の戦いに注目したいと思います。
続く
