手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

新年会

新年会

 

 昨日(4日)は、自宅で新年会をしました。昼過ぎから始めて、終了は成り行きで、夜9時くらいまで続きました。私のアトリエは、目いっぱい人が入って10人ほどですので、ほとんど声掛けをしないで、弟子と、少しのマジシャンだけでパーティーをしました

 コロナの前までは前に借りていた事務所に集まっていましたので、50人くらいのお客様ががとっかえひっかえ訪ねて来て、寿司も二度、三度注文しなければ間に合わないほどでしたが、今年はぐっと小さな新年会になりました。

 今までは常に、私がたこ焼きを作ったり、うどんを作ったり、ほとんど休むまもなく作業をししなければなりませんでしたが、今回は作るものがなく、並べた食事ですべてが賄え、時折ホットプレートで、焼売や、餃子を焼く程度で、作業が簡単でした。

 何と言っても、大変なのは、たこ焼きでした。下ごしらえに時間がかかります。まず、生地を作るのが一仕事です。50人前のたこ焼きの生地は大きなボウル一杯必要です。そして、細かな具を用意するのが大変、そしてタコを細かく切っておく作業に時間がかかります。たこ焼き一つで下ごしらえが1時間はかかります。

 そこで、今年はたこ焼きを諦めました。そのお陰で下ごしらえが少なくて済み、出来上がりの食材で、温めて食べる程度の簡単なものにしました。お陰で、私の体の負担が楽でした。

 考えて見ると、こうした一連の作業は、猿ヶ京の合宿で毎回繰り返されて来たことでした。みんなでこしらえた料理を食べるのは格別に楽しいものです。特に、囲炉裏で鮎(あゆ)を焼く作業は、囲炉裏の弱い火で温めるため、とても時間がかかります。

 長箸に突きに立てた鮎を火の回りに立てて並べて、三時間ほど時間をかけて焼いて行くと、鮎は、頭から骨まですべて食べられるほどに骨が柔らかくなります。これを頭からかぶり付くのですが、どんな鮎の料理よりもこのやり方で食べる鮎が一番うまいと思います。東京では部屋の中で囲炉裏で食事をすることなどありませんが、炭火で鍋を煮て、アユを焼いて食べる作業は最高のご馳走です。

 さてその猿ヶ京ですが、結局、昨年は出かけることが出来ませんでした。残念です。今年こそ何とか4月あたりに春合宿をしたいと考えています。合宿人数が、2,3人では寂しく、と言って、10人を超えると食事の手配に苦労します。7,8人くらいがちょうどいいのですが、4月に人が集まるでしょうか。

 

 昨日は1時に大樹が来ました。何とか仕事が少ない仲を無事に活動しているようです。海外の仕事が増えて来ると、元の活動に戻るでしょう。一旦消えた海外とのつながりがうまく戻ればいいと思います。

 高校生の朗磨君と入谷君も来ました。彼らは毎月、自宅のある群馬から手妻を習いに来ています。マジシャンの新年会は初めての体験でしょう。然し猿ヶ京で合宿もしていますので慣れています。朗磨君は昨年推薦で日大芸術学部に入学しました。すばらしいことです。二人ともマジシャンになりたいらしいのですが、その夢がうまく実現して行くといいと思います。

 

 石井裕と和田奈月も日頃は、なかなか会う機会がなく、正月に合って話を聞くくらいしか話す機会がありません。もっともっと私が大きな一座で活動をしていたらいいのですが、今年はそうした機会が来るかどうか。何かとてつもない大仕事が来たならいいと思います。

 

 カズカタヤマさんも来てくれました。今年はジャパンカップのマジックオブザイヤーに選ばれています。私が賞状を読み上げるコメンテーターになるのでしょう。カタヤマさんはマジックオブザイヤーは二回目です。長くマジック活動を続けて来たからこその二度目の受賞です。

 60歳を過ぎての受賞は重みがあります。この先良いことがいくつも出て来るといいと思います。学生のころからカタヤマさんを見ていますが、マジック好きな学生が、紆余曲折あっても、こうしてマジック活動を続けて生きて行くんだ、と改めて眺めてみると、感慨深いものがあります。なかなか簡単にこの道で40年は生きては行けないのです。

 

 夕方5時半を過ぎて、NHK古谷敏郎アナウンサーが来ました。古谷さんは、昨年のカナダで開催されたFISMを番組に取り上げるためにプロデュースした人です。番組中にも司会で活躍されていました。子供のころからのマジック愛好家で、実際番組の中でも、四つ玉を演じていました。45㎜の三瓶クラフトの四つ玉を今も大事に持っていて、その技を披露してくれました。

 長年の夢がかなって、FISMの番組を作ったことは大きく、多くのマジック愛好家は「これでまた、NHKでFISMが見られるようになる」。と、ほのかな期待が生まれたことと思います。このところのマジック番組は、番組の都合上か、際物的な、如何わしい番組が幾つかありますが、暮れのFISMの特集だけは真面目にマジックの面白さが伝えられていて、いい番組でした。ああした番組をこの先も作っていただきたいと思います。

 

 若手の中で、日向大祐、ザッキー、早稲田康平の三人が来てくれました。日向さんはアゴラカフェで、毎月芝居仕立てのマジックショウを公演しています。今月は15日に12時から公演します。日向さんの公演は、全くマジックをしない若い親子連れが大勢来ます。どこからそうしたお客様を引っ張って来るのかわかりませんが、一番理想的な観客層を持っています。良いことです、マジックが好きな人がマジックをする必要はありません。マジックを見ることを愉しみとするお客様が増えることが一番大切なのです。日向さんの表現する世界観も独自です。一度ご覧になっては如何でしょう。

 

 ザッキーさんは今月28日、夜7時からアゴラカフェで公演をします。看板に峯村健二さんを据え、藤山大成とともにザッキーのショウをします。じっくり演技時間を取って、これまでの自身のマジックを大きくまとめてゆく考えです。

 ザッキーさんの性格上、これまではショウの中で、調整役のような役割で、司会をしたり、間、間にマジックを見せたりと、細切れにマジックをして来たのですが、ここらで、自分の芸を一つにまとめてみるのはいいことです。年明け早々、いいチャンスだと思います。

続く