手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

峯ゼミ活況

峯ゼミ活況

 

 昨日は峯ゼミの日、今月から元の神田のレンタルルームに戻りました。狭い部屋ですが、環境が良く、鏡もあり、じっくり習うにはいい場所です。

 峯村さんのシルク手順は、断片的にはDVD化されてUGMで販売されています。マーコニックの小さなリングを使ったシルクの変化作品が中心で、これは峯村さんが長い時間をかけて、マーコニックの作品にいろいろなシルクマジックを加え、長い手順にしたもの。オープニングは、一枚のシルクが次々に三枚になるもの。三枚目がぴょんと飛び出てくるところに才能を感じます。こうした何気ない発想こそが人を引き付ける要素なのです。

 続いてマーコニックのリングシステムによるシルク変化。これは今から50年以上も前に、オランダのマーコニックが来日してレクチュアーしたときの作品で、一時は随分はやったマジックでした。縦一列に繋いだ三枚のハンカチーフが、一瞬で三菱のマークの様に中心で三枚がつながると言うもの。

 このマーコニックの作品を峯村さんはよほど気に入っているらしく、そこにいろいろなアイディアを加えて手順にし、迷宮シルクと言うタイトルを付けて3分以上の手順に仕上げています。後半には、首抜けシルクや、センチュリーシルク、更には天海のシルクバニッシュまで加えて、内容たっぷりの指導。

 その一つ一つがが自身の考えでまとまっていて、どれも納得します。お終いは三枚のシルクの中から大きなボトルが出現します。その出し方にも細部に工夫がしてあって、聞くと納得でした。

 

 現代のクリエーターは、多くの場合、自作品をDVDにして、付属品とともに販売します。しかし、これは相手の技量も知らない人に闇雲に道具とアイディアを販売してしまいます。本来は、きっちり指導をした上で作品の価値を伝え、その後に、道具の解説をし、演技を伝授しなければ、相手に作品の価値は伝わらないはずです。

 今、世界的にスライハンドが低迷していますが、低迷の理由は、作品の未熟でもなければ、マジシャンのレベルの低下でもなく、作品をどう伝えるかと言う、指導システムに根本的な間違いがあるからだと思います。

 つまり相手の技量も見極めず、作品を金でやり取りすることがまず間違い。次に、先にDVDと小道具が手元に渡り、先に種仕掛けが分かってしまうことで、作品の工夫の感動がないこと。更に、それを不慣れな状態でDVDを見て練習をして(練習するならまだましですが、ろくすっぽ連取しないで)、人前に出してしまう。こんなマジックの習得方法で観客に感動が与えられるのかと考えれば、今のスライハンドの現状が結果を表していると思います。

 つまり、スライハンド復権は、「ちゃんと教える」。と言うことに尽きます。簡単にできない芸能を、簡単に教えてしまう現代のシステムがスライハンドを堕落させているのです。今回の峯ゼミの一連の企画はその問題点を見事に実証しています。つまり、かつての昭和40年代までの子弟の指導が徐々になされなくなって以来、技の指導方法が考えられて来なかったのだと言えます。

 私は今回の峯村さんのシルク指導を見て、わずか一時間のDVDの内容でさえも、細かく指導すれば、10時間以上の指導をしなければ伝わらないと言うことを、多くのマジシャンに身を以て伝えたのは素晴らしい指導だと再認識しました。

 毎回毎回、峯村さんが長い時間かけて研究してきたことを指導していただいて、どれも目から鱗の作品ばかりでした。こんなレベルの高い指導はほかに考えられません。次回が楽しみです。

 

 さて、4時30分に指導が終わり、私は、ザッキーさんと、早稲田さんと、近くのレストランに入りました。ビールとつまみを頼んで、6月からのマジックショウについて企画を話し合いました。

 当初、私の手妻公演を玉ひでさんから、別の会場に移すと言う話をしていたのですが、先方のホテルの意向で、毎週マジックショウがしたいと言う要望を受け取りました。然し、毎週、つまり月4回の公演となると、私自身がそう簡単には人を集めることが難しくなります。

 そこで、4週を4組の責任者に分けて、それぞれに担当してもらい、その週の内容には私は関与しないことにしました。つまり4つのタイプの違うマジックショウをこれから少なくとも一年開催されることにしたのです。

 つまり、第一週は私が手妻を演じます。第二週は、ザッキーさん、早稲田さん、諭吉さん、前田将太、この4組が代わる代わるトリを取って、ほかの三組は脇にまわって出演する。と言う方式にしようと考えました。

 第三集はカズカタヤマさんにお願います。第四週は、別のマジシャンを企画しています。実はこの数日、私はその打ち合わせで関係者と何度も顔を合わせてパンフレットの製作などをしています。この企画が達成できれば、東京にも毎週マジックの見られるカフェのシアターが出来ます。

 これまで、マジックはどうしてもアルコールが主となる場所での開催が多かったのですが、そうした場所では子供さんや母親は参加しにくかったのです。今度は、カフェでの開催ですので、飲み物、食事をすることでマジックショウを楽しめます。そうなれば多くのファンを作り出せることになるでしょう。

 長いこと私の望んでいたことが一気に達成できます。私の人生にこんな時が来るとは幸運です。もう少し打ち合わせを重ねて、6月からのマジックショウの開催をやって行きたいと考えています。

 

 打ち合わせの途中で、峯村さんと前田がやって来て、久々賑やかに一杯呑みました。但し私は、マギーさんボナさんとの呑み会以来、連日、打ち合わせなどで呑んでいます。呑み過ぎは危険です。ハイボールは三杯まで。如何に三杯で二時間楽しく呑むか、時間計算をして、少しずつ呑んでいます。

続く

 

 玉ひで最終公演

 玉ひででの公演は、5月21日を最終として、ひとまず休演します。恐らく2年後に玉ひで新築落成の際にはマジックショウを再開するでしょう。その時までしばしお待ちください。21日のお申し込みは東京イリュージョンまで。03-5378-2882