手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

雪の後

雪の後

 

 昨晩の東海、関東の雪は、深夜に至っても降り続けましたが、雪質がみぞれ状であったため、思ったほどには積もらず、多くの人たちはほっと胸をなで下ろしていることでしょう。

 東京は昔から、雪が降るたびに車も電車も大渋滞をして、通勤客を混乱させていました。私の家の前には「環7(かんなな)」と言う環状道路があります。この道は立体交差になっていて、今から60年近く前に完成しました。

 立体交差などと言えば聞こえはいいのですが、このわずかばかりの道の高低が、雪になると渋滞を招きます。スパイクタイヤを履いていない関東の車は、雪になると立体交差が登れないのです。一台が坂の前で止まってしまうと、後は渋滞です。有志が必死になって車を押して坂の上まで上げても、二代目の車がやはり登れずに止まってしまいます。わずか数㎝の雪で都内は大混乱です。

 私の子供のころから雪対策を唱える政治家がいましたが、結局50年以上経っても対策と言えるものは生まれませんでした。関東地方の雪は、年に二、三回しか降らず、しかも一回の雪が数㎝と言うものですから、雪が消えるとともに、対策は忘れられて行きます。

 但し、天気予報が昔よりもより正確になり、しかも予報地域がかなり限定して報道されるようになりましたので、各家庭での対策は昔よりもはるかに容易になりました。

 私の子供のころは、明日は雪だと言うと、会社勤めのお父さんは朝からゴム長靴で会社に出かけましたが、早くに雪がやむと、今度はその恰好で夜に繁華街へ出掛けます。こんな日ぐらい早く帰ればいいものを、と思うのは酒を飲まない人の考えで、呑みたい人は長靴をはいても飲みに行きます。

 不思議なのは、雨や雪の翌日の繁華街で必ず長靴の片方が落ちているのです。誰かが履いていた長靴であることには間違いないと思いますが、片方を残してどうやって家に帰って行ったのか、その実態は謎です。

 

 今日は私の事務所は休みです。さて今日は何をしようと考えて、午後には買い物に出かけようと思います。今、新しいテーブルを木工所に注文しています。今週中には出来上がると言うことですので、見に行ってみようと思います。

 和にも洋にも使えて、4本足で車輪付き。全体の重さが3㎏以下と言う条件で図面をこしらえて見ました。和に使う場合は、金襴の生地のクロスを使い、洋の時にはビロードか、もしくは少し派手な柄のクロスを使うようにします。

 クロスを両方持参していれば、和と洋の手順の際にクロスを変えることで一台のテーブルで二つの手順が出来ます。こんなことを考えるのは、昔、私自身が手で道具を持って歩いていた時の経験が生きています。

 今まで簡易テーブルとして、一本足のものを使っていたのですが、傘の様に重い道具を吊るしたり上に置いたりするとどうしても一本足では無理がかかります。今度のものは四つ足で、しかも折り畳みが出来ますのでかなりいい出来です。

 9本、12本のリングのスチールも容易にできるように仕掛けを付けました。またリングを一本、二本途中で掛けられるような金具もつけて見ました。この金具は、くす玉や、提灯を下げる時にも使えますので、手妻にも生かせます。

 テーブルの上は黒の漆調(漆ではありません)に仕上げてあります。テーブルの盤面には黒のビロードを張ってあります。上に乗せたもので盤面に傷がつかないように配慮しました。どうですか、いいでしょう。ご興味の方はご一報ください。

 既に5人の希望者がいますので、出来たものはすぐに捌けてしまうでしょう。出来上がりを見るのが楽しみです。

 

 

 午前中は、カードマニュピレーションの稽古をしてみようと思います。今、7人の生徒さんがカードを習っています。週末には富士に指導に出かけますが、富士でもカードの指導をすることになりました。

 どうしたものか、このところ急にカードマニュピレーションを習いたがる人が増えました。それはいいのですが、私がかつて演じていた手順は、20代前半に拵えたもので、それも30になったころにはもう演じていません。演じていた頃はそれなりに自信を持ってやっていたのですが、習いたい人が増えたなら、もう一度全体を見直して、細かく手順を組み直してみようと考えています。

 かつては稼ぐためにマジックをしていたのですが、今は純粋にマジックを愉しみながら演じることが出来ます。いいことです。冷静に自分がしてきたことを見つめて、マジックを考えると新たな発見が生まれると思います。

 演技がまとまったなら、5月のマジックマイスターか、秋のリサイタル公演に出してみようかと考えています。全体で5分程度の手順です。なるべく簡潔にして、洗練されたものに仕上げたいと思います。私が洋装でマジックをすること自体久々です。新たな方向が生まれるかも知れません。

 せっかく雪かきもせずに済み、時間が出来たことを幸いとし、少し自身の練習して見ます。

続く