手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

焼鮭に飯

焼鮭に飯

 

 昨晩(2日)は、一日遅れで女房と娘すみれとで私の誕生日を祝ってくれました。寿司は桃太郎から買って来て、ケーキは高円寺駅前のジュン本間のショートケーキでした。更に、福井のサイキックKさんから福井の帰りに、銘酒梵を頂き、それを開けました。数日前に、秋田の小野学さんからぐい飲みと徳利を頂いたので、そこに梵を入れ、娘と共に乾杯をしました。

 寿司で、梵で、ショートケーキが付いて、ささやかな誕生日ながら、結構贅沢でした。いまさら別段誕生日は嬉しくはありませんが、祝ってもらうのは有り難いと思います。

 

 今日(12月3日)は朝から糖尿病の定期検査。毎月一回、もう15年以上も続いている検査です。最近は、アルコールもあまり飲まなくなりましたし、脂肪の多い食べ物もあまり採りません。数値はこの頃安定していて、大きな問題はありません。つまり、糖尿病と共生して行く道を見つけたのです。

 30代40代の頃の暴飲暴食を続けていたなら、私は今生きていなかったでしょう。50歳の時に毎日アルコールを飲んでいたものを改めました。なぜかというと、その時点で家のローンが残っていたからです。

 30代で銀行から6000万円借金しまして今の家を建てました。その頃はチームでイリュージョンをしていまして、そのチームも株式会社にして大きな仕事ばかりしていました。舞台は連日忙しく、これくらいの金はすぐに返せると思っていました。

 初めの頃はローンだけでも毎月42万円支払っていました。今では考えられません。その頃は難なく支払えたのです。

 然し、家が建って二年ほどしたらバブルが弾けてたちまち返済に困りました。その後、国の政策で利息も下がりましたが、仕事が少なくなってからの借金は年貢のような苦しみでした。

 それでも何とか必死で支払いをしてきましたが、50歳で糖尿病が発覚し、その時点でまだ返済が15年も残っていたので愕然としました。

 ここで私が倒れるようなことがあると、女房や、幼い子供に負担がかかります。何とか自分で働いて返済しなければなりません。そのため、生活を変えるしかないと判断したのです。

 アルコールは週に一回にしました。肉や鰻などの脂肪の多い食べ物は月に一回程度にしました。私はいつも、「あれが食べたい、これが食べたい」。と食べることばかり考えていましたが、毎日我慢して、ここぞというときに心に決めていたものを食べるようにしました。

 アルコールは、一人で呑み歩くことはやめました。仲間と呑む日を決めて、その日を愉しみにして呑みに行きました。思えば随分地味な生活になってしまいました。

 不思議なもので、そうした生活に慣れると、週に一遍のアルコールでもそう不満に感じなくなりました。脂肪の強い食べ物も、控えるようにすると体の調子がいいことに気付きました。日常は野菜や魚をよく食べています。何のことはないごく普通の生活をしているわけです。

 65歳の時にローンが完済しました。あとで考えたら、私の人生は幸運だと思いました。もしあと2年ローンが残っていたら、コロナの影響で仕事が激減し、返済できなくなっていたでしょう。うまく逃げ切ったわけです。

 ローンが済んでも、さほどに酒が飲みたいとも、ステーキが食べたいとも思わなくなりました。今の生活がすっかり馴染んでしまったのでしょう。

 

 病院の帰り道、前に行ったおひつ飯の店「田んぼ」に入りました。検査の日には朝食を抜いていますので、帰り道は空腹です。そこで焼鮭とおひつ飯、味噌汁を頂きました。

 前回は鯖味噌だったのですが、今回は焼鮭です。出て来た定食はどうと言うものではなく、旅館の朝食のようです。然し、鮭の焼き具合がちょうどよく、ハラミの脂の乗り具合が素晴らしく、鮭の皮についている塩と一緒にハラミを口に含むと、じわっと脂が広がります。塩気が脂を引き立てます。

 「旨い、なんて幸せなんだ」。人の幸せ何て小さなものです。鮭のかけら一つで幸せになれるのですから。それを飯と一緒にほおばると、鮭の塩辛さが飯の甘みを引き出して、飯がことのほかうまく感じられます。何のことはない日本人が普通に食べている食事なのですが、旨いと再認識します。

 味噌汁と漬物をつまみ、一杯目の飯は終わります。二杯目の飯は鮭を乗せ、身をほぐして出汁をかけて、お茶漬けにします。私は、本当は飯は二膳食べてはいけないのです。カロリーオーバーですから。

 でも今日は朝飯を抜いていますので、朝飯と昼飯が一緒と思えば二膳も許されるでしょう。と言い訳をして、鮭でお茶漬けを食べます。鮭の脂身が出汁の上に浮かんで食欲をそそります。

 あっという間のランチを済ませ、店を出ましたが、この店は惹かれます。何でもない食べ物を出しながらお客を納得させます。普通のことが普通にできて人を納得させられるなら名人です。つくづく納得します。

 

 その後渋谷の東急ハンズに行き小道具を買い、その後、本郷の藤間章吾先生の稽古場に行き、踊りの稽古。事務所に戻ったのが4時近く、前田は事務仕事をしていました。前の晩の私の誕生日のケーキを食べて、前田は喜んでいました。

 何のかんのと雑用をするうちに一日は終わりです。でも充実した日々でした。

続く

 

明日はブログを休みます。