手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

うなぎを食す

うなぎを食す

 

 昨日(5月1日)ようやく風呂場が完成しました。丸一週間銭湯に通っていたため、昨晩、風呂に入って、「風呂のある生活がなんと贅沢なことか」、と改めて有難みを感じました。内壁はタイル張りの壁をすべて剥がし、琺瑯(ほうろう)引きの鋼板を四面に貼りました。お陰で壁はつやつやして、まるでホテルの浴室のようです。現代ではそうして風呂場の壁を作るようです。

 タイルでは隙間にカビが生えて汚れが取れないため、大きな鋼板を全面にに貼ることで湿気やカビに対抗する方法を考えたようです。白系統の壁で、浴槽はピンクです。ピンクの浴槽と言うのはどうかと思いますが、昨晩入った印象では、壁も浴槽も床も何もかもが新しくて快適です。

 風呂場は良くなりましたが、3階のトイレ、洗面所は改装中で全く使用できません。洗面所はすべての壁紙を剥がすため、流しから棚から、洗濯機から居間に移しました。これによって居間はまったく身動きできません。今日には壁紙が貼られ、新たな洗面棚が入ってくるので、部屋の混乱も解決するのでしょう。

 洗面所の後は、3階のトイレ、2階のトイレを新規にするそうです。結局すべての水回りは新規です。私は、2階の事務所のトイレなどは別段傷んでもいないので、そのままでいいように思いますが、女房はすべてやる気です。ピンクのトイレにならなければいいがと思います。

 

 さて、風呂場は良くなりましたが、そのために台所と居間が物置に変わってしまいました。これでは食事が出来ません。そこで晩飯は外で食べることにしました。女房に希望を聞くと「うなぎが食べたい」、と言います。「贅沢だなぁ」。「今月誕生日だから、そのお祝いでいいから、うなぎにしたい」。

 誕生日の前倒しだそうです。そうなら反対もできません。二人で高円寺の駅まで歩いてうなぎ屋さんに入りました。席について、「すみれはどうする。土産を持って帰る?」。と聞くと、会社帰りの途中で近くの病院にいるみたいです。携帯に電話をすると、30分くらいで来ると言います。一緒に食事ができるなら好都合です。うなぎは3人前注文して、私はハイボールを注文しました。

 高円寺はどこの飲食店もアルコールは出しませんが、ここは出ました。幸いです。晩にアルコールがなければ飲食店も売り上げが大きく響くでしょう。今や飲食店は生きるか死ぬかの瀬戸際に立っています。政府や都の言うことをまともに聞いていては店が倒産してしまいます。反旗を翻して酒を出す飲食店も少なくないようです。生きるためならやむを得ません。

 ただし、酒を出す店は都の要請を断ったわけですから、補助金が出ません。補助金を選ぶか、アルコールを選ぶかは微妙な判断です。聞くところによると、補助金は申請してもなかなか渋くて、毎月すんなり出さないようです。出すものを出さずに締め付けばかりきつくすれば、人は嫌気がさします。かくして、緊急事態宣言は尻抜けになって行きます。

 

 奇しくも親子三人でうなぎが食べられることになりました。こんな日があってもいいのでしょう。家を大改装し、親子でうなぎを食べている姿を傍から見たなら、随分儲かっている家族に思われるでしょう。すべては借金ですが、金持ちに見えたならそれも財産のうちかもしれません。

 ところで、ふと20年前、女房のお母さんが東京に出て来た折に食事に招待し、「何が好物ですか」、と尋ねると「うなぎ」と言ったのを思い出しました。それなら東京の最高のうなぎ屋さんにお連れしようと、飯倉片町の野田岩に行きました。

 お母さんはあのトロリと甘いたれで焼いたうなぎをとても喜んで、「人生で一番おいしいうなぎだった」。と言いました。結局私が女房のお母さんに親孝行したのは後にも先にもこの時だけでした。「また東京に来ることがあればいろいろなところにお連れしますよ」。と言いましたが、秋田から東京に出て来ることは一大決心のようで、そのあとはついぞ果たせませんでした。そして昨年亡くなりました。

 人の縁とは淡く儚いものです。それだけに今この時を大切に生きなければいけないのでしょう。今している何気ないことが、もう二度と出来ないことになるかも知れないのです。女房と娘は脇で、「おいしい、おいしい」と言ってうな重を食べています。庶民の喜びはささやかなものです。贅沢だと言っても所詮小さな重箱一つの話です。困難な望みではありません。二人の姿を横目で見ながら、ハイボールを飲んでいると、今、この時を幸せと言うのかなぁ。と、つい自問しています。

 

 私も本来は、カロリーの高いものや、アルコールは控えなければいけないのですが、実は、昨日朝、糖尿病の定期検査に行ったら、数値が改善されていました。私は元々血圧が安定しており、血管に問題はありません。糖分、脂肪分をもう少し抑えたなら何の問題もないのです。それに気をよくして、久々この晩はアルコールを飲みました。ハイボールを二杯。何ともおとなしい酒です。

 帰り道も女房娘は大満足です。然し、よく考えて見ると、今日はまだ6月1日です。女房の誕生日は6月28日です。ほぼ一か月先です。誕生日の前倒しなどと言ってご馳走をしましたが、誕生日が近づけばまた何か別のものが食べたいと言い出さないとは限りません。そうそう贅沢はさせられません。

 そうなら、延び延びになっている猿ヶ京の合宿を7月にせずに、前倒しして、6月末に持っていったら、誕生日を交わすことが出来ます。いや、それだと梅雨のさ中で雨ばかり降って、山歩きもできません。

 やはり猿ヶ京は7月がいいでしょう。そうなら、月末の富士や、大阪の指導の日数を少し伸ばして、福井の天一祭の下見を加えたらいいかもしれません。帰りに焼き鯖寿司を買って帰って、誕生日の代わりだよ。と言えば、これは安上がりです。これに決めましょう。

 と言うわけで、月末は大阪の指導から福井の下見に行こうと考えています。ちなみの天一祭は11月27日、フェニックスホールで開催します。前日26日は大阪でヤングマジシャンズセッションです。道頓堀のZAZAで開催します。今から予定をしておいてください。

 

踊り をどるなら 2 は明日書きます。

続く