手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

熱狂の大阪セッション

熱狂の大阪セッション

 

 今日(27日)は早朝、大阪から特急サンダーバードに乗って福井に向かい、福井の天一祭に出演します。そのためまだ夜が明けやらぬうちに起床しました。

 今、ブログを書こうと、数時間前に終わった大阪マジックセッションのことを思い出しています。昨晩(26日)は、18時30分から、道頓堀のZAZAで大阪マジックセッションが開始されました。客席は満席、早くから劇場前に並んでくれたお客さんはこの日を楽しみにしていたようです。

 何しろ、コロナの影響で、この2年間、マジックショウはことごとく中止の憂き目に遭っています。マジック愛好家なら誰でもいいショウが見たいと、待ち望んでいたところにセッションが始まったのですから、一本目からお客様の期待が伝わってきました。以下昨晩の感想。

 

 一本目は前田将太。もう来年夏には弟子修行も卒業です。名前をもらって一本立ちします。もともと几帳面な性格ですから、演技はしっかりしています。

 卵の袋から、紙テープの復活、そして紙片を扇子に乗せて卵を作る紙卵。藤山流の定番物。翔太よ、もっとお客様に愛されるマジシャンになりなさい。

 

 JunMakiさん、藤山流の大阪教室で習っている女流プロマジシャン。仕事も結構安定しているようです。傘出しと日本蒸籠(せいろう)。お終いに大きな扇子出し。細かく一つ一つのクオリティを高めればいい得意芸になるでしょう。女性の愛嬌は最強の武器です。

 

 サクさん。東京理科大学のマジッククラブの4年生。カードの変化とウォンド。最低限の簡単な素材でうまく演技をまとめています。随所にマジックが愛が伝わってきます。育ちの良さそうな坊ちゃんが、さりげなくマジックを演じているところが東京的な魅力なのでしょうか。

 

 ノエルさん。女性のジャグラー。4本のリングを歯車に見立てて大きな柱時計を完成させようと言うストーリー。まるで小人が時計の仕掛けの中に入り込んで、時計修理をしているかのような健気さがメルヘンチックで可愛らしい。

 

 黒川智紀さん、いつもはマイムを取り入れてのダイスのプロダクション。今回はキューブの変化を様々見せて不思議を構成しました。矢印の変化、四角が三角に、三角が増加したり、ウォンドのアクトに変化したり、この人のアマチュアイズムは健在です。

 性格の素直さが演技に現れていて、それでお客様がついつい引き込まれてみてしまうのでしょう。ただ、プロとして生きるなら、もっと現象を明確に割り切って、どん欲な舞台作りが必要です。心に突き刺さるようなインパクトがないと数あるマジシャンの中で埋没してしまいます。関西の若きリーダーである黒川さんは正念場を迎えたわけです。

 

 ザッキーさん。東京理科大のOB、藤山流のマジック教室で学び、サラリーマンをしながらプロを目指しています。シルクのプロダクションから、12本リング。本数の多いリングとしては最大本数を使います。

 今となっては藤山一門が唯一継承している作品。陽気で素直な性格のザッキーが演じると古さが目立ちません。マジックは作品の新しい古いを問うよりも、演じ手のセンスが決め手になるのでしょう。予想以上に大きな拍手で当人も満足な様子。

 

 hannahさん、九州福岡から、ジミー菊池さんの娘さん。噂には聞いていましたが、今回初めて見ました。演技はダンシングケーン。飛距離が自在に伸びる特殊ギミックで演技は一層大胆に見せます。間にカードを挟んだり、後半には二本のケーンを振って、お客様を飽きさせません。

 リズム感もよく、ショウとしての出来も素晴らしい。お終いに飛行機がたくさん飛ぶのはメルヘンの世界を感じさせ、動画を見ているよう。いいものを見ました。

 ハンナさんの演技が終わって一部の休憩。

 

 藤山新太郎、サムタイと蝶のたはむれ。私としては定番物。40年以上これを本業にして来た演技です。

 

 鈴木駿さん、以前に出演して頂いたときのことを思うとその進歩に著しいものがあります。先ず、普通に舞台に出て来ますが、その足音が強調されます。やがて足音がリズムを表現し、エアーのドラムと合わせて独自の音楽に発展します。そのリズムに乗りながら、ウォンドや四つ玉の演技が加味されて行き、カードの色彩変化などを見せます。

 抜群のセンスです。マジックをマジックの中に閉じ込めていないところが秀逸です。お客様も乗って来て、お終いは熱狂していました。

 

 バーディーさん。神戸のマジシャン。メンタルマジックなのか、超能力なのか。お客様を上げて拳に握った方のコインを当てます。喋りは関西弁で誠に達者です。何度やっても当たるので不思議。次にフォーク曲げ。独自の見せ方でお客さⅿを乗せて行きます。さりげない語り口が見る人を飽きさせません。

 

 伝々さん。おなじみの鶴のプロダクションと変化です。見るたび細かなところに新規の工夫が入ります。まったく当人の創作力は衰えていません。昔から見て知っているお客様も新たに感動します。この人は志のあるマジシャンです。

 

 と言うわけで、トリに出演した伝々さんが人気を浚って終演。お客様は感動冷めやらず。終演後も立ち去ろうとしません。

 

 終演後は出演者は、道頓堀にある千房さんのビルで打ち上げ。楽しく飲んで、道頓堀の夜も更けて行きます。

 来年は大阪セッションも二日間の開催をします。観客が大きく増加してくれることを望みます。

続く