手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

35年前のビデオ

35年前のビデオ

 

指導

 昨日(14日)一昨日(13日)は指導が続きました。13日は紙幣のプロダクションを指導しました。14日は12本リングでした。いずれも私が20代の頃に悩み、苦しみつつ拵え上げた手順です。それが今に役立っているのは幸いです。

 紙幣は4作。どれも個性的な作品で受けがよく。随分いろいろなところで使いました。生徒さんには珍しかったようで、好評でした。紙幣はまだ何作か作品があります。時間をおいて別の作品の指導をしようと思います。

 12本の方は、14日で3回目の指導が終わりました。ここからは細かなテクニックの指導をして行きます。12本は指導ビデオをただ流して見ていたのでは見落としてしまうような小さな工夫があちこちにあります。今まで生徒さんから求められれば詳しく指導をしましたが、なかなか奥の奥まで詳しく聞き出そうとする生徒さんは少ないものですから、尋ねられなければそのままスルーしていました。

 しかし昨日の生徒さんから、かなり突っ込んだ質問を受けました。彼らは私の昔の映像を探し出して、繰り返し見て、疑問となる部分を調べ上げて来ています。時代が進むと、ネットでいくつもの古い映像を探し出して、それを見比べて、疑問の部分をリピートしてみることが出来ます。

 12本リングは私が20代の末にレクチュアービデオを出しています。私の指導ビデオの第一作です。今見ると恥ずかしい教え方をしています。逆に、演技の方は手慣れていて、手がいくらでも動きましたので、とにかく演技が早かったのです。今見ると見せることにゆとりがなく、お恥ずかしい演技です。

 その後60になってそっくり撮り直しをしています。これは演技の仕方もしっかりできていますし、見せる力もついていますので安心して見ていられます。然し、何となく面白味がありません。安定しているのは間違いないのですが、芸としてみると、20代のほうがキラキラ輝いて見えます。何がキラキラしていたのかはわかりませんが、自分自身がこの作品を惚れ込んでいて、しかも自信を持って演じていることがよくわかります。まるで強力な武器を持って戦っているように見えます。若いうちは怖いものなしです。

 

 昨日は、指導ビデオではなく、実際にショウの中で12本リングを演じている映像が見たいと言うことで、生徒さんに求められるままに、35年前のリサイタルで演じた12本リングのビデオを見てみました。その当時どんなふうにやったのかは全く忘れています。私としては、「突っ走らなければいいが」。と祈るようにして見ていました。

 初めに、伸びるロープから三本ロープに行く私のいつも演じていた手順です。喋りの数は多く、喋りのスピードもかなり速いです。どこと言って問題はありませんが、何とも心が休まりません。

 そして12本リングです。「うーん」、思っていたほどひどいものではありませんでした。と言うよりも技術的には今よりもこの時のほうがベストに近いと思いました。

 然し、昔の演技を見ることは恥ずかしいものです。リングは手慣れていて、曲によくはまっています。ビデオに映し出された30代の私は、予想したほどには、忙しい演技をしてはいませんでした。「あぁ、よかった、お粗末な演技でなくて」。ほっと一安心です。この当時(昭和60年)はバブル最盛期の最も仕事量の多かった時代でした。恐らく年間120回くらい舞台上でリングを見せていたと思います。

 ビデオを見せた後は、生徒さんから質問攻めでした。実に丹念に小技を見つけ出して技法を取ろうとしています。いいことです。この人たちが、12本リングを継承して、次の時代に続けてくれたならこの芸はこの先も残ります。

 

道具が手に入らない

 但し、12本リングがどこからも入手できません。私が持っていた在庫も底をついてしまいました。リングだけではありません。四つ玉も、ピラミッドも、中華蒸籠も、何もかも、ステージマジックはいい道具がどんどんなくなってきています。この先道具をどうやって確保して行ったらいいのかが不安です。

 私にまとまった資金があれば、リングでも、ゾンビボールでも、四つ玉でも職人に頼んで十年分くらいの在庫を確保しておくのですが、とてもそんなことは出来ません。粗悪な道具を我慢して使うなどと言うことはしたくはありません。何とか良い道具を確保したいと思いつつ果たせず何とも残念です。

 

 玉ひで

 20日玉ひででの公演です。毎回安定してお客様が見えます。有難いことです。残りあと4席です。ご希望ありましたら、お早めにお申し込みください。

 

 入院ご安心ください

 私が来月15日から一週間入院すると書いたら、心配して電話やらメールをくださる方が何人もありました。すいません言葉足らずで、大した入院ではありません。大腸のポリープを取るための入院です。手術と言うほどのものではないのです。また肛門から内視鏡を入れて、中を覗きながらポリープを取るだけです。前回取り切れなかった、2つを取るそうです。

 但し、時節柄、面会謝絶です。病院は虎ノ門にあります。そうなら、夜な夜な抜け出して銀座に遊びに行こうかと考えていましたが、それができません。外出禁止です。そうなると全くやることがありません。

 然し、これは考えようによってはじっくり自分の知識を広げるためのチャンスかもしれません。そこで、日頃読みたかった本を本屋さんに注文しました。しっかり本を読もうと考えています。エンターテイメント2.0も読みかけていますので、これは来月の入院で読了させます。(今月中には読み終えてしまうかも知れません)。ブログも十分書けると思います。病院からも連日発信しますのでご期待ください。

続く