手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

創作意欲

一昨日は、NHKの番組制作者さんが来て、打ち合わせをしました。詳細は今は話せませんが、決まりましたらお知らせします。

 昨日は東京会館で、ショウの打ち合わせをしました。東京会館の料理長、鈴木直人様の叙勲パーティーでの手妻のショウです。その打ち合わせを兼ねて、東京会館二階のレストランでランチをいただきました。和室です。外は皇居が広々と見渡せます。

 鈴木料理長をご紹介くださったのは、小堺ひとみさんで、いつも私のショウを支援してくださるお客様です。小堺さんは伝承会と言う歴史を研究する団体を組織していて、毎月日本橋にある小堺科学の会議室で、能の先生や、琵琶の先生などを招いて実演や、お話会などを催されています。私も何度か公演しています。小堺さんと言う方は、見るからに育ちのよろしい方で、しかも愛嬌のある大きな瞳を持っていて、自然に人を引き付ける才能をお持ちです。これまでも多くのアッパークラスのお客様を私に紹介してくださっています。その小堺さんと皇居を見ながら談笑していると、やがて料理が運ばれてきました。

 食事はミニ会席で、弁当箱が二段重ねで、漆塗りの箱の横に、二重橋の蒔絵が施されています。まさに向かいの皇居を眺めているようで、ここならではの趣向です。初めに刺身が出ました。鯛とマグロです。弁当箱の中にはローストビーフまであります。小さな細工の料理がたくさん並んでいます。生湯葉にウニを乗せた料理は、さっぱりとしていて相性がよく、印象に残りました。

 椀は澄ましで、鰺のつみれが二つ入っています。鰺は臭みもなく、しっかりとした出汁と合わせていただくと旨味が増します。おしまいに寿司が出ました。細かな料理をつまんでいるうちにいい加減満足してきましたので、ここで寿司はどうかと思いましたが、よく見ると、魚が大降りに切ってある割には飯が少ないため、これなら食べられるかなと、安心しました。大トロ、サバ、サヨリ、などですが、大トロの濃厚さは見事でした。逆に、サヨリの淡い味も忘れられません。

思いがけずもいい食事をいただいて大満足です。

 鈴木料理長と、小堺さんに別れを告げて。その後、私は急ぎ高円寺に戻り、生徒さんの指導をしました。生徒さんは時間をずらして、二人見えます。このお二人を指導すると、ようやく昨日のスケジュールは終わります。

 

 さて今日は、朝から鼓の稽古です。そのあと、日本舞踊に出かけます。舞踊から帰ったら、傘手順と、私自身が前々から考えていた、ミニ龍の浮揚を作ってみようと考えています。そのための素材探しに、東急ハンズと岡田屋に寄って、小物を買い集めてこようと思います。このところ久々に創作意欲が湧いて来ました。

 毎年少しずつ新しいものを作ってはいるのですが、まとまった手順と言うものはなかなかできません。しかし来年は、今まで温めてきたアイディアを一気に何作か出せるかもしれません。私は作り始めると、すべてのことを忘れて作品に集中します。夜も昼もありません。ごちゃごちゃと得体のしれない小道具がアトリエに散乱します。初めは何のことだかわからない、今まで世の中になかったものが、どんどん形になってゆくことはとても楽しいことです。

 ただし、悩みます。どうでもいいことにまで悩みます。私が作る以上。くだらないものではだめです。充分、人を納得させるような、面白い作品でなければ意味がありません。日頃私は、マジックの世界で偉そうなことを言っていますから。その私が、何か考えたとなると、小うるさい連中が集まってきて、あれやこれや言います。

 それがある水準を超えていないと、めちゃくちゃ悪く言われます。何とかみんなを納得させつつ、私の夢を実現させなければいけません。これが結構難しく、大いに悩むところです。それでも何とか作ってみます。ご期待ください。