手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

敗者のプライド

敗者のプライド

 

 日本に来る観光客の一位が韓国人、二位が中国人、三位が台湾人だそうです。コロナ以前は、一位が中国人だったのですが、このところは韓国が一位になっています。彼らは日本のことを良く知っていますし、日本文化も、日本の製品も大好きです。

 そうなら、日本が好きかと言うと好き嫌いに関しては少し複雑で、台湾人は日本が大好きでも、韓国中国は複雑な思いを持っています。韓国人中国人が日本を好きと言えない理由は歴史的に根深い事情があります。

 そもそも中国人には今でも中華思想が根深く残っていて、中国こそ世界の文化の中心地、最も高度で優れた国家だ、という意識を強く持っています。実際かつてはその通りだったでしょう。その思いが崩れ始めたのは、19世紀になってからでした。阿片戦争で、イギリスに敗れて、香港を失って以降。中国の優位が崩れ始めます。

 その後、西欧各国に不平等な条約を結ばされて、中国の威信は低下します。然し、まだ欧米の先進国に敗れてもアジアの雄であると言う自負はあったのでしょう。その後になって、日清戦争によって、日本に完敗して、台湾を盗られ、莫大な賠償金を盗られたことは、中国人の自尊心は粉々に砕かれたのです。

 日本にすれば、アジアの中でいち早く明治維新を達成して、西洋の産業を取り入れ近代化を図って、日清戦争日露戦争に勝利して、輝かしい成功を達成したのですが、それは同時に中国の国力の低下を意味したのです。日本に負けて中国は世界の進歩から取り残されていることを知りました。日本の成功が、中国の劣等意識を強く植え付けたのです。

 その後、昭和の末期から、中国が徐々に発展を始めました。それは欧米や日本の協力があってなされたことだったのですが、経済大国になった中国は、欧米や日本の支援のことは語ろうとはしません。そればかりか、日本に敗北した19世紀のことは、日本が一方的に中国を収奪した歴史だと語って、すべて日本のせいにしています。自国の無知蒙昧が欧米に付け入られたことを認めようとはしないのです。

 中国がそうなら、長らく中国に隷属していた朝鮮半島の国は同様に自国の文化や産業の遅れを認めようとはしません。いや、多少、産業の遅れは認めたとしても、稼げるようになって、国民が高収入になったなら、もう世界の先進国と肩を並べたと勘違いをします。金を手に入れたから先進国ではないのに、自国に都合のいい数字やデーターを並べ立てて、しきりに自国の優位を語ります。

 でも現代の社会は、民主主義が根付いて、平等がもたらされなければ、先進国にはなれないのです。中国は、2000兆円もの不動産の焦げ付きをきっちり認めて、処理しない限りまともな国にはなれません。然し、2000兆円もの赤字は埋め切れるものではありません。元々、共産主義国が、資本主義の考えを接ぎ木して、経済成長をしてきた国ですから、仮に成功したとしても、必ず大きなひずみを生みます。

 元々共産主義は、全ての土地は国有です。そうであるなら、個人や、企業が土地を担保に金を借りることなどできないのです。然し資本主義の原点は資本がなければ産業が育たないのです。資本とは基本的に土地建物です。土地建物を担保に資金を産業に回すことで国は発展するわけです。共産主義が発展しないのは土地を共有して、個人使用を認めないからです。

 つまり奈良、平安時代と同じ、公地公民制度を敷いているから、経済が発展しなかったのです。ところが現実に中国では、それが出来るのです。なぜかと言えば、土地の売買は出来なくても、土地の使用権は転売できると言う、不思議な法律を作ってしまったからです。

 これは言って見れば日本の借地権法と同じです。他人の土地ではあっても、借地人は使用権の売買が出来るのです。中国は使用権を認めたことで経済活動が大きく発展したのです。ところが、商取引が進み過ぎて、経済が過熱すると、極端な金持ちと極端な貧しい人が生まれます。これは共産主義に反する社会です。

 そうなって初めて土地売買の取り締まりを始めます。ところが、経営者も、国も地方自治体も、既にべったり土地を担保に事業をしていて、しかもその大部分が焦げ付いていることに気が付いて、今や中国自体がにっちもさっちもいかなくなってしまったのです。

 物の本質を理解しないまま、目先の利益のみを追いかて経済活動をすればこうした結果に陥るのです。ロシアもかつてのスターリン時代に同じようなことをして国が危うくなりました。そしてその後制度を改めなかった結果社会主義が立ち行かなくなり、19990年にソ連は崩壊しました。

 中国も間違いなくそうなるでしょう。今ソ連と言う国が無くなったように、あと数年もすれば中華人民共和国と言う国はなくなっているでしょう。そのことは韓国も北朝鮮も同じです。中国に近づき過ぎれば、資本主義の韓国も危険なわけです。ましてや北朝鮮はすでに死に体です。

 幸い中国人も、韓国人もそのことに気付きつつあります。ひところ日本の経済低迷を見て、中国人も韓国人も「日本は過去の国だ」、「日本はもう終わった」。と言う人がたくさんいました。ところがこの一年、自国の経済が傾き出したら、そんなことを言う中国人も韓国人も、殆どいなくなりました。

 彼らのプライドは金がある時だけは強気なようです。終わって行くはずの日本が、依然として国は破綻せず、観光客はひっきりなしにやって来ますし、文化においても、大谷選手や、ゴジラが世界中に強い影響を与えています。

 正月早々能登半島で大きな地震がありましたが、だからと言って日本の経済が圧迫され、立ち行かなくなったわけではありません。大多数の日本人の生活は以前と変わりません。どこが過去の国ですか。

 今や、中国も、韓国も、北朝鮮は勿論のこと、どこも国自体の存亡そのものが怪しくなっています。そんな中で、彼らは日本に旅行して、なぜ日本の国が安定しているのかを見ているのでしょう。能登の被害を見ていながら、ゴジラが東京の町を破壊する映画を平常心で見ていられることは、日本に生まれたからこそなのでしょう。いくら経済が悪くなっても、都市が壊されても日本はつぶれません。日本人がいる限りは安泰です。

続く