手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

ポーカーはどうなった

ポーカーはどうなった

 

 一時ネットでにぎやかだったポーカープレイヤーがこのところ、少しおさまったように見えます。私が時々見る、世界のよこさわさん、しゅんポーカーさん、くりもさん、この三組が、ひところ週に一回くらいずつ映像を出していたものが、最近は映像の数が半減しています。

 映像を編集して出すことは時間が掛かるため、なかなか簡単には出来ないとは思いますが、それ以上に、ポーカーをするための資金が続かなくなってきているのではないかと勘繰っています。

 私が注目している、クリモさんは、ワークビザを取得して、オーストラリアに1年滞在して、ポーカーをして暮らそうとしていますが、早々に資金が尽き、やむなく、オーストラリアでウーバーをしながら資金を作って、ポーカーをやっています。全く涙ぐましいプレイヤーです。

 その生き方を見ると、まるで芸人の生活を見るようです。そうまでしてポーカープレイヤーでありたいと願うのはポーカー好きの人が見たならたまらない人生でしょう。この人のファンは結構いるはずです。ただそうした生活を続けていると、日本の競馬場や、競輪場にいる、ギャンブル中毒の人たちと同じ運命になりそうです。

 つまり、競馬の馬券を買う以外に何の趣味もなく、服も一年中同じ服を着て、食べるものもカップラーメンや立ち食いそばばかり、身には何一つ金をかけないで、少しでも金が出来れば、ひたすら馬券を買いまくる人たち、ああした人になりそうです。実際、ラスベガスに行っても、ダウンタウンにはそうした人たちのたまり場があります。

 私はそうした人たちを見ると、「ギャンブルが好きであることはいいけれど、そんな生活では夢がない。少しは世間の流行を見るべきだろうし、ファッションにも凝るべきだ。はた目から見たなら、決して憧れる生活にはならない。ギャンブルでたまに稼いでも、その稼いだ金が次のギャンブルの投資にしかならなければ、少しも身につかない。どこかで気持ちを切り替えて別の楽しみを探さないと、ひたすらのめり込んで行くだけにしかならないだろう」。と、ついつい偉そうに語ってしまいます。

 自分の楽しみがギャンブルだけと言うのは危険です。実際、マジシャンでも、そういう人がいます。全く世間の流行に興味がなくて、ひたすらマジックをしている人があります。でも、そうした人が、マジシャンとして成功して行けるわけはないのです。なぜならマジシャンと言うのは客商売だからです。

 お客様の好みがわかって、人の話題に添って行かなければ人は寄っては来ないのです。それが出来ないと、ただ、自分がマジックが好きで、人に見せているだけの人になってしまうのです。

 

 さて、クリモさんは、ウーバーを一週間やって、生活費を作り、週に一、二度ポーカーをし、その間、ハンバーガーや、カップヌードルを食べて、缶ビールを飲んで暮らしています。私に言わせたなら一番いけない生活をしているのですが、でも、でも、です、その映像を見ると、生き生きしています。それが楽しくって仕方がない。と言う表情をしています。

 それを見ると、「あぁ、こうした生き方もありかなぁ」。と思います。時折仲間のポーカープレイヤーと仲間の家に泊まって呑み会をして遊んでいたりする動画も流しています。それはそれできっと楽しいのでしょう。

 でも、年齢も30近くなっているようで、そこに全く女性が出て来ないのは心配です。最近若いマジシャンを見ていても、女性との交際が少ない人が多いのが気になります。普通なら、男友達と同様に、女性との付き合いがあってもよさそうなものですが、マジックのことには熱く語っても、女性と話もしないのはどうしたものでしょうか。

 この事は、ポーカーの映像を載せている多くのプレイヤーに共通しているように思います。ポーカーを終えたなら、高給なレストランやバーで女性と楽しい話でもしてもおかしくないのに、プレイヤーは決まってホテルに戻って、ハンバーガーを食べてビールを飲んで、そのまま寝てしまいます。本当にそんな生活で満足なのでしょうか。

 もっともっとギャンブルの合間に、普通に人として生きて行く楽しみを見出そうとしてもよいのではないかと思いますが、そんなことは大きなお世話なのでしょうか。とにかく、ポーカーの画像には女性が出て来ません。もっともっといろいろな趣味や遊びがあってもいいでしょう。

 私の親父は「今日は何して遊ぼうか」。と、遊ぶことに人生を賭けた人でした。私の親父はどうでもいいのですが、一生遊んで暮らすための手段としてポーカーをしているのではないのですか。それとも、ひたすら純粋にポーカーだけが好きなのですか。どっちでも結構ですが、ポーカーから離れたら周囲の生活が余りにみすぼらしいのも夢がありません。

 もっともっと馬鹿馬鹿しく、遊ぶ事の楽しさを見せてくれたならポーカー画像も楽しいのですが、ゲームのノウハウにこだわり過ぎて、生きる喜びが見えないのは寂しいです。全くマジックマニアのレクチュアー動画を見ているようです。

 

 しゅんポーカーさんは、映像を面白く見せるために、コスプレのコントを擦入するなどして、芸人臭さを見せています。これはこれで結構撮影に時間がかかっていて苦労が見えます。まぁ、面白いことは面白いのですが、ギャグよりも何よりも、この人はギャンブルの感は鋭いようで、結構勝率も高いようです。時々爆勝ちもしています。然し、食べ物にも、女性にもあまり興味はないようです。

 

 その点よこさわさんはこの社会でも人気があるらしく、シャツを販売したり、時々いいレストランで食事をしたり、結構遊んでいるように見えます。ここに書いた三人と比べたなら、一番生活が充実しているのではないかと思います。勝率も高いように見えます。

 但し、それでも馬鹿馬鹿しく遊んでいるようには見えません。けっこう真面目なのでしょう。肝心のギャンブルの生活は綱渡りです。実際、大きな勝負でブラフを見破られたり、相手のブラフを見抜いたりして、大逆転することが何度もありますから、うっかりすると全財産を取られることもありますし、逆に大勝利もあります。

 そんな中に生きることの危なさ、儚さがギャンブルの魅力なのでしょう。やはり危険な世界であることに変わりはありません。他にも、高学歴な人が結構ギャンブラーになって戦っていますが、そうした人の人生が楽しかった、いい人生だったと言わしめるような実例が見たいと思います。

 他人事ではなくて私も、マジシャンになってよかった、みんなもマジシャンになったらいいよと言えるような人生を送りたいと思います。さて、自分のこととなると、なかなか難しいことではあるのですが・・・。

続く