手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

年の瀬

年の瀬

 

 昨日(12月28日)は、朝から鼓の稽古。年内の最後の稽古です。毎月4回、梅屋巴先生に来ていただいて、朝から私と弟子が鳴り物の稽古をします。手妻をする人で、日本舞踊を習う人は多いと思いますが、鳴り物までする人は少ないと思います。

 然し、日本の音楽のリズム感を知ることは大切で、学んでいるうちに自ずと曲に合わせて体が微妙な動きが出来るようになります。その辺の呼吸が分かって来ると、手妻は面白くなります。

 

 鼓の稽古が終わると、朗磨の稽古をします。朗磨は今カードマニュピレーションをしています。ようやく全体、5分30秒の手順を覚えましたが、まだまだ全然できません。彼にとってはカードは最難関のようです。無論、手妻の指導もしますが、見習の内はカードコイン、シンブル、四つ玉などのスライハンドを学びます。

 こうした稽古は、自身がプロになった後で随分役に立ちます。いわば基礎指導なのです。但し、基礎だからと言って簡単ではありません。こうした作品を早いうちに勉強しておくことはとても大切です。朗磨の稽古もこれが年内最後です。

 これで午前中の用事は終わり、食事をして、午後からは私の蝶の稽古をしようかと思っていました。然し、何通かの手紙を書かなければならず。ぐずぐず手間取っているうちに、4時を過ぎてしまいました。実は6時に田代茂さんが迎えに来てくれて、食事会をすることになっています。

 これから道具を出して点検して、稽古となると、もう時間がありません。蝶の稽古は中止です。私の稽古は新年の5日に致します。

 

 5時45分田代さんが見えました。タクシーにて有楽町まで、ホテルペニンシュラの二階にある中華レストランを予約してくれました。私はペニンシュラに入るのは初めてです。以前香港のペニンシュラで食事をしたことがありました。とても高級なレストランで、恐らく香港の中でも指折り数えて上位にある店だと思います。

 この晩は暮れの28日。ここに泊まっているお客様はそのまま年内をここで年越しするのでしょうか。日本に観光にくるお客様の中でも最もグレードの高い客層でしょう。何にしてもとても贅沢な時間を過ごしています。

 二階の中華レストランはペニンシュラで一番のレストランのようです。ヘイフンテラスと言う名前です。その一番奥の個室を用意してくれました。贅沢な室内です。有難く食事をさせていただきます。

 前菜4品から始まり、クラゲの酢の物など定番の前菜が出ましたが、並べ方が上品です。中華料理は長いこと世界の料理のトップに君臨していましたが、この20年で、日本料理に抜かれ。味も見た目の演出も日本料理が今や世界一と称されています。

 そんな中で、中華も、大皿に何人前も盛って、みんなで取り分けて食べるやり方から、西洋式に、個々の皿に小分けして出てくる形式に変わって行きました。ここペニンシュラの中華はまさにそれで、西洋式のフルコースを食べる要領で出てきます。

 したがって、前妻の次にスープが出て来ます。ふかひれスープのような、濃厚な味で、ホタテなどが入っています。素材がはっきりしていて、味が際立っています。

 いわゆる中華の定番、チンジャオロースーや酢豚のようなものは出て来ないのですが、一つ一つを味わってみると、記憶にある味付けがされています。

 メインディッシュは、ステーキです。サイズは小さく、しかも幾つかに切り分けてあります。外側を甘辛い味噌味で絡めてあります。豆致と言う小さな豆を使っています。酢豚の味のようでもあり、照り焼きソースのようでもあります。これはとてもいい味でした。肉も脂がのっていて、霜降りに近い濃厚な味わいでした。

 お終いに焼きそばが出ました。スープをしっかり吸わせてできた焼きそばで、ほんの少しだけ盛り付けてあります。平打ち麺で、スープが染みてあっさりとした上品な味でした。卓上にある豆板醤を少しつけて食べると、変化が出て。俄然味が締まります。

 お終いのデザートまで、食事は至れり尽くせりのもてなしで、大満足でした。それにしても、皇居前の景色を眺め、年末の飾りつけをしてお客様を迎えているペニンシュラで、海外のお客様が歓談している中で、私も一緒に食事ができるとは、思いもよらず、有難い体験をしました。

 田代さんは、来年1月7日にマジックフォーラムを開催します。2月にクローズアップのチャレンジャーズライブ(FISMクロースアップコンテストアジア予選)を開催し、又3月にはジャパンカップを開催します。毎月催しが目白押しです。1月と3月は私も協力をしなければなりません。毎年のことですので時間は空けております。

 いい食事をご馳走になって、年の締めくくりとして充実の晩でした。

続く