手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

看板に偽りあり

看板に偽りあり

 

 アメリカ合衆国と言うのは、それぞれ自治権がある50の州が集まって、大きな国を形作っています。アメリカの国は、州によって法律はそれぞれ違い、細かく調べてみると、やっていいこと、いけないことが州によって違います。

 車の一時停止でも、交差点手前で、必ず止まらなければいけない州と、よく見ながらそのまま進んでいい州などがあります。

 州を日本の県と考えるのは間違いで、州は国家と同じなのです。そのことを国名の中で明確に記してあります。然し、州にない権限もあります。それが軍事であったり、外交であったりです。これらを統治するのは大統領の役目です。

 似たような考え方で連邦国と言うのがあります。ドイツ連邦共和国などがそれです。合衆国と連邦国は意味がほとんど同じです。ドイツは16の州があって、それぞれの州に自治権があります。ドイツの場合は、更に共和国と言う名前が付きます。共和国と言うのは、君主を持たない国家のことで、かつては帝国に対しての対語で共和国を名乗ったのです。

 王と言う世襲制の君主に対して、国民が選挙をして大統領を選ぶのが共和国です。ドイツも、フランスもイタリアも同様です。その中でも、フランスは、大統領の権限が、アメリカ並みに強大です。あらゆる権限を握っています。

 逆に、イタリア、ドイツでは大統領はいることはいますが、一体誰?と尋ねるほど知名度がありません。ある意味、象徴的な存在で、政治的な権限が殆どありません。実際の政治活動は、首相が務めます。サミットの会議でも、アメリカ、フランスは大統領が参加しますが、ドイツ、イタリアは首相が参加します。

 イギリスは王、或いは女王が存在していますので、立憲君主国です。事実上王は政治の権限を殆ど持たないため、象徴的な存在です。イギリスの王の存在はドイツの大統領並みで、直接政治に関与しません。でも君臨しています。政治は首相が努めます。

 カナダ、オーストラリア、ニュージーランドは、その英連邦に所属していますので、君主はイギリスの王です。そのため最高権力者は首相になります。

 その考え方で言うなら、日本は、正式名称は、「日本国」です。共和国でもなく、立憲君主国でもなく(立憲君主国の可能性が大です)、連邦国でもありません。どんな政治によって成り立っているのか、民主主義国であることは間違いありませんが、天皇が存在しています。然し、天皇に政治の権限はないのです。

 政治形態はイギリス王室に似てはいます。大統領はいません。共和国ではないのです。依然として、国の象徴として天皇がいます。民主主義国ではありながら君主がいます。然し、政治権力はありません。一見矛盾をしていますが、国民の多くはそれを受け入れています。

 

 国名によっては、民主主義とか、人民とかを全面に出して表明いる国があります。「北朝鮮人民民主主義共和国」、「中華人民共和国」、人民を名乗る国は社会主義の国のようです。そうならロシアは、というと、「ロシア連邦」です。何も書いてはいませんが共和国であることは間違いありませんし、社会主義ですから、人民を入れてもよさそうなものですが、自らは名乗りません。かつてソビエトと名乗っていた時は、「ソビエト連邦共和国」でした。なぜ共和を名乗らなくなったのか、分かりません。

 いずれにしても君主を置かずに国民自らが選んで元首を決めています。ところがここで少し謎が生まれます。例えば、ロシアは何のかんのと言って、プーチンさんが20年以上も大統領の座に納まっています。そして首相の地位も、表向きは選挙で決めていますが、どうもプーチンさんの計略で決定しているように見えます。選挙のたびごとに、投票数より多くプーチンさんへの票が入ります。これが本当に民主主義かどうか。社会主義国であることは分かりますが、民意によって国が成り立っているのかどうか、疑わしく思います。

 そのことは、中国も同じです。そもそも中国は、建国以来選挙をしたことがありません。共産党員の中で互選で役員や主席(国家元首)が決まっています。習近平さんは、頭が良くて、政治力があるから、ここまで上り詰めたのでしょうが、習さんのこれまでの政策が良かったか悪かったか、国民の審判を一度も仰いだことはありません。常に謎の共産党大会の中で、習さんが選ばれています。

 中華人民共和国と言いながら、一度も人民に考えを問うたこともなければ、責任者が投票で選ばれたこともないのです。北朝鮮も同様です。この国に至っては、朝鮮民主主義人民共和国と言いながら、選挙もないまま親子孫三代が元首に納まっています。世襲制社会主義国と言うのは他にはありません。絶対にあるはずのない国が北朝鮮です。

 それで国がうまく行っていればいいのですが、どうも外から見ていると、仕事がない、米がない、ドルがない、餓死者が連日出ていると。人も国も困窮している情報ばかり聞こえてきます。

 お菓子でも食品でも、裏に使用した食品リストが書かれていますが、砂糖と書きながら、人工甘味料を使っていたり、自然野菜と言いながら農薬を使っていたなら、表示を偽装したことになります。

 そうしたことは消費やを欺く行為につながりますから、メーカーの信頼を落とします。政治も同様で、民主主義国と言いながら選挙もしない、社会主義国と言いながら三代も一家一族が統治し続ける。それは民主主義でもなければ社会主義でもありません。

 そんなインチキを繰り返していて、国が発展するかというと、如何に強い政治家であっても、ある時期までは国を強力に引っ張って行けても、ある所まで来ると発展が急に止まります。なぜかと言えば、その国の中で成功した起業家や、学者、文化人が政治を変えることが不可能だと知って失望するからです。

 有能な人が、いくら努力をしても、ある線まで来ると、自由の裁量が思いっきり狭くなって身動きできなくなるのです。そうなったときに、頭のいい人たちは、国が変わらないことを知り、この国で活動することの無意味を知ります。その時、能力のある人達は、国を捨てて海外に逃れるのです。

 今、中国も、ロシアも、どんどん頭脳も、金が流失しています。何がいけないのか。それは看板に偽りがあるからです。民主主義と言いながらどこにも民主主義がなかったり、社会主義と言いながら国民が参加できない独裁政治が敷かれていたり、嘘の表示を長年繰り返しているうちに、逃れられないところに来てしまっているのです。

 さて、この先は中国も、ロシアも、北朝鮮も、どんどん才能ある人が逃げて行くでしょう。それにつれて経済発展も、国力も落ちて来るでしょう。国が分裂するかもしれません。この先一体どう生きて行くのでしょうか。

続く