手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

サミット G7

サミット G7

 

 毎年開催されている先進7カ国会議、G7が今年は広島で開催されています。先進国の首脳が、広島の原子爆弾被害を見て、互いに考えることはとてもいいことだと思います。広島県出身の岸田総理大臣にすれば、G7の開催を広島で行うことは悲願であったでしょう。なかなかそういうふうに願っても、自身の首相任期中に広島開催できることは難しく、幾つかの幸運が重なったことで開催となったのでしょうから、とてもめでたいことだと思います。

 但し、今、原子爆弾を使用しそうだとみられる、危険な国と言うのは、イギリス、フランス、アメリカ、と言った先進国の国々ではないはずです。先進国の間で、安易に、原子爆弾を使用する可能性あり得ません。

 最も危険な国は、ロシアであり、それを側面支援している中国であり、更には北朝鮮こそが原子爆弾を使用しかねない危険な国です。本来はそうした国々が広島にやって来て、原子爆弾の被害を見ることが大切なはずですが、現実にはそうなってはいません。

 

 ウクライナの戦いがこのまま拡大されれば、ウクライナにはますます欧州各国の武器支援が集まるでしょう。対するロシアは早晩には武器のストックが尽きて来ます。そうなったときに、ひょっとしてロシアは核兵器を使用するのではないか。そうした危険は常にあります。

 ロシアは近年国力を失いつつあります。そのことに対してプーチンさんは躍起になっています。プーチンさんにとってロシアは常に強い国でなければならないようです。彼はかつてのスターリンの時代を再現させたいのです。

 そうあるべきと信じて、ウクライナ侵攻をしたのですが、どうも成果は思わしくありません。然し、彼のブラフ好きは健在です。直接原子爆弾は使わないまでも、窮地に立った時に、使用をほのめかすことで、無理な侵略を押し通して、原子爆弾を外交交渉の種にして周囲の国を威嚇することは効果があると考えているのでしょう。

 このままでは必ず核兵器使用のブラフが始まります。それがどこまで本気なのかは未知数ですが、実際に核兵器を持っているロシアが戦いをしているわけですから、絶対に核兵器を使わないと言う保証はありません。

 核兵器使用が現実に起こったときに、アメリカやイギリス、フランは、核に対して核で対抗するでしょうか。案外腰砕けになって、右往左往するだけではないでしょうか。

 

 かつて第一次世界大戦が終わったときに、戦争の被害の大きさに恐れおののいた、奥州各国が、二度と戦争を起こさないために、ベルサイユ条約を結び、戦争を食い止める方策を作り上げたのです。然しその方策とは、徹底して、ドイツを封じ込めるためのものでィtz。巨額な賠償金、領土の割譲。飛行機などの製造禁止など、ドイツを身動きできなくすることが世界平和だと考えて、ベルサイユ条約を作り上げたのです。

 当然ドイツはそのことに不満を抱いていました。そもそも第一次世界大戦というのは、どちら側の国に正義があったのかなど、皆目わからない、混沌とした戦いだったのです。たまたまドイツは負けたのであって、誤った考え方をしていたから負けたわけではないのです。

 連合国側の身勝手な条約にくすぶり続けていたドイツ国民に、反旗を翻したのが、ヒトラー率いるナチス党でした。後年ヒトラーは大胆な行動を取る独善的な指導者とみられていますが、少なくとも第二次世界大戦までのヒトラーの活動は、実に繊細で用心深いものでした。

 ヒトラーは、独仏の緩衝地帯として設けた、ラインラントに進駐する際も、イギリスやフランスがものすごい抵抗をするのではないかとびくびくでした。ところが、どこの国も反対はしても、表立って、軍隊まで出して阻止しようとする国はなかったのです。これで易々とベルサイユ条約を反故にしました。

 その後チェコスロバキアのズデーデン地方(チェコスロバキアの中でドイツ人が多く住んでいる地域)の割譲要求も、イギリスのチェンバレン首相が乗り出してきて仲裁をしたまではよかったのですが、ほぼヒトラーの要求が丸ごと認められて、小国であるチェコスロバキアの要求は無視されて、ズデーデン地方は割譲されたのです。

 この時、ヒトラーは、政治は結局のところ強気に出た国の言うことが通るんだ。と知ります。その後、独墺併合(ドイツとオーストリアが合併)や、ダンチッヒ(ドイツの東にある飛び地、ドイツの本来の故郷である地域で、当時はポーランド領になっていた地方)、の返還要求。など、矢継ぎ早に領土を要求して、その都度欧州各国は反対しながらも自ら動き出そうとはせず、ドイツの要求を呑んで行きます。そして瞬く間のヨーロッパの中で巨大なドイツ帝国を作り上げて行ったのです。

 もしこの時点で、イギリスでもフランスでも毅然としてナチスの要求に強く抵抗していたら、第二次世界大戦はなかったかもしれません。あったとしてもあれほど大きな戦いにはならなかったでしょう。

 今、ロシアのウクライナに対する横暴を見ていて、この10年で少しずつウクライナが削り採られて行く姿を見るにつけ、1930年代の欧州の姿によく似ているように思います。ロシアのすることに口では反対しながらも、結局は、なし崩しにウクライナに犠牲を要求しています。10年前にクリミア半島がロシアに奪荒れたときに、どこの国が戦ってくれましたか、昨年ウクライナにロシア軍が30万人集結したときに、「かなわないから敗北を認めろ」。と言った政治家は誰ですか。結局ロシアの言いなりになった結果が今の状況ではないのですか。今年あたりにプーチンさんは、核兵器使用をほのめかしつつ、とんでもない要求をしてくると思います。その時欧州各国や、アメリカ、日本は、本気でで対抗するでしょうか。

 案外、強気なロシアに引っ張られて、ウクライナに犠牲を強いて、安易な妥協をしてしまうのではないかと思います。それは1930年代のチェコのズデーデン地方割譲と同じことの繰り返しになりませんか。

 各国首脳が広島でサミットを開催するのを見て、話し合いと言うのは分り合ったもの同士が話をしていても何の意味もないことを知りました。もののわからない人をどう説得するのかが大切なのです。それには時としてブラフも必要かもしれません。戦いもしなければならないかも知れません。何にしても、話の分からない人を引っ張って来て、説得できない限り何も問題解決はしないでしょう。さて、私が生きている間に第三次世界大戦は起こるのでしょうか。全く未知な話ですが、ないとは言い切れません。

続く