手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

ウクライナ全面戦争

ウクライナ全面戦争

 

 さてウクライナの侵攻は、どんどん規模を大きくして、ウクライナ全土に及びました。当初のロシアの侵攻は、はかばかしい成果を見ないまま、首都キエフの攻略はあきらめ、全軍を東側に移し、ロシアがロシア領と主張する東部側、南部側の、既に陣地を築いた地域を主として東部側にロシア、西部地域にウクライナ軍が対峙し、この数日のうちにも、全面戦争をすることになりそうです。

 私はニュース番組でウクライナの様子を知るのみですが、それにしても都市と言う都市はミサイルや爆弾で破壊され、とても人が住める状態ではなくなっています。「昭和20年の日本全国の大空襲はきっとこんな状態だったんだろう」。と想像されます。

 生活をして行くための、工場も会社も、病院も、商店も破壊しつくされています。今、この場で戦争が終わったとしても、ウクライナ人は、この先10年以上は苦しい生活を強いられることになるでしょう。この状況は、全く東日本大震災の時と同じ、いや、その数百倍の被害だと思います。

 それにしても大きな兵器を持たないウクライナ軍は、この50日間良く戦って持ちこたえています。民間、軍人共に死者の数も万単位で出ています。国を守ると言うことは決して簡単なことではなく、文字通り必死の戦いを強いられています。

 それでもゼレンスキー大統領は「ロシアには決して何も渡さない。ロシア軍全軍をウクライナの領土から追い出すまで戦う」。と、宣言しています。元コメディアンのゼレンスキーさんがここまで強い政治力を発揮するとは当初誰も想像してはいなかったでしょう。

 日本のお笑いタレントや政治家、コメンテーターの中には、「降伏したらいい」。「逃げたらいい」。と言っている人がいましたが、そんなことを言って、なにがしかの収入になっている人がいること自体、日本の国は腐っています。大統領の言葉に呼応して、小型ロケット砲を抱えて、ロシアの戦車に突っ込んで行くウクライナ兵を見ていると涙が溢れ出て来ます。「この人たちを前に何を言っているんだ」、と腹立たしくなります。

 無責任な発言をする人を見ている限り、日本人の多くが国を守ろうとする意志は薄弱です。多くの人は国を守ると言う意識はほとんどなく、仮に敵が攻めて来たとしても、「自衛隊が守ってくれる」。「アメリカが守ってくれる」。と考えています。

 確かに自衛隊は守ってくれるでしょう。然し、これまで一部の日本人が自衛隊にしてきた冷笑や、蔑視は何だったのですか。国を守ろうとする人たちへの敬意もないまま、自分たちを守ってくれると思いますか。我々は、もっともっとウクライナ人から学ばなければいけないでしょう。

 アメリカが日本を守ってくれると多くの人が考えていますが、それは幻想です。アメリカはアメリカの安全を確保するために日本に基地を築いています。朝鮮半島や、中国、ロシアで一旦紛争が起こったときに、アメリカ本土から兵を出したのでは間に合わないために、日本に基地を置いています。

 然し、アメリカ軍は飽くまでアメリカの平和維持のためにあるのであって、日本が攻め込まれてもアメリカ軍は動きません。日本人を守るのは飽くまで日本軍(アメリカは自衛隊を日本軍と理解しています)だと考えています。アメリカの基地が脅かされた時のみ、アメリカ軍は戦います。

 例えば、どこかの国が、日本に原子爆弾を落としたときに、アメリカは報復として原子爆弾を使用するでしょうか。答えはノーです。アメリカの基地で活動するアメリカ人が、被爆したときには、その報復として、相手国にミサイルなどを発射するでしょうが、原子爆弾の使用はしません。なぜなら、報復の報復として、今度は、敵国からアメリカ本土に原子爆弾が撃ち込まれる可能性があるからです。

 日本はアメリカの原子爆弾の傘にいるとは言っても、肝心なところではアメリカは同盟国を守ろうとはしません。地域紛争が発展して、全面戦争になれば、アメリカが地域紛争に首を突っ込んで、加勢したとしても、次に責められるのはアメリカになるからです。

 ロシアに対しても、中国に対しても、ひとたび原子爆弾を使用すれば、互いが何百発もの原子爆弾を飛ばし合い、互いの国の大都市が完全に破壊される結果になります。

 アメリカは、最悪、自国に原子爆弾が落とされた時には、対抗処置として、自国も原子爆弾を使用するでしょうが、それは結果として、世界の破滅を意味します。そんなことは出来ないとは誰でもわかります。ましてや、他国に原子爆弾が落とされたとしても、同盟国であるアメリカは原子爆弾の使用は考えません。同盟国のために自国が被爆するることを望まないからです。

 

 ウクライナの戦いを見ればわかると思いますが、決して今回の戦争にアメリカは表立って出て来ません。アメリカだけでなくNATO各国も表には出て来ません。国際紛争の解決は、アメリカとNATOが出て行くことが一番早い解決なのですが、今回はそれが出来ません。それはロシアを追い込むと、窮したロシアが何をするかわからないからです。

 NATOアメリカも、この戦いが核戦争に発展しないように細心の注意を払って支援しています。当面は、武器を供与して、ウクライナ軍が敗北しないよう、支援を続けるでしょう。そうするうちに、ロシアが機械部品や、コンピューター部品が枯渇して行って、日常生活にも、軍の維持にも支障をきたしてくるようになって、和解してくることを求めているのです。ロシアの経済が身動き取れなくなるのが、今年の末だと言う評論家がいます。多分そうなのでしょう。

 仮に年内に戦争が終わったとして、その先世界はどうなるでしょうか。それは人類が経験したこともないほどの大不況が来るでしょう。コロナで疲弊して、ウクライナで軍事支援して、世界中、金を使い果たして、そのしわ寄せは確実に世界中の人々に付けが回ってくるはずです。

 あぁ、そうなったら、マジシャンの生活などどこかに飛んで行ってしまうでしょう。まだこうしてマジックの話をしたり、猫の生態を書きながら、かろうじて生きていることの方が、幸せなのかもしれません。三年後に、三年前を振り返って、「あぁ、あの時は楽しかったなぁ」。と言っているのでしょうか。何と芸能とは弱い職業だと思います。

続く