手妻師 藤山新太郎のブログ

1988 年、1994 年に文化庁芸術祭賞、1998 年に文化庁芸術祭賞大賞を受賞。2010 年には松尾芸能賞 優秀賞を受賞。 江戸時代に花開いた日本伝統奇術「手妻(てづま)」の数少ない継承者 藤山新太郎のブログ。

ヤングマジシャンズセッション初日

ヤングマジシャンズセッション初日

 

 昨日(3月1日)、座高円寺でヤングマジシャンズセッションが催されました。朝9時に、大成が事務所に来て、車に荷物を載せて座高円寺に、と、言っても私の家と劇場はすぐ近くです。荷物を降ろして、他の出演者が来る前に、私の道具の仕込みだけ急ぎ澄ませていると、徐々にスタッフやら出演者が集まって来ます。

 12時30分から、リハーサルが始まりました。内田貴光さんや、メイガスさんもやって来ました。大分賑やかになって来ました。リハーサルはほぼ5時に終了。6時お客様を入れます。6時30分開始。以下その舞台の様子と感想。

 

 今回は私が司会を致しました。第一回の時に、どれほどお客様が来るか不安だったので、なるべく予算をかけないようにと。私が司会から出演からしました。その時は、別段2時間のショウを司会しても疲れることはなかったのですが、今回はさすがに疲れました。それでも一度初心に帰って、全体を見渡して、公演そのものをチェックショウと思い司会をしてみました。

 

 一本目は小網健義(こあみたけよし)。今年京都大学を卒業されて、地質調査の会社に入ったそうです。前回の大阪セッションで準優勝をしたため、今回のゲスト出演です。四つ玉のアクトですが、繊細な感覚が生きていて、ボールが一瞬に雪に変わるなど、とても美しい演技でした。

 二本目は、東京大学出身の日向大祐。シルク手順。後半はオーバーザレインボウの曲で、6枚ハンカチ、そこから虹色の傘出し。よくあるマジックを巧くつなぎ合わせて世界を作っています。

 

 三本目は京都から、橋本昌也。たびたび紹介していますのでご存じの方も多いかと思います。トランクに張ったシールが出たり消えたり、大きくなったり。なんでもない素材を生かして、徐々に観客を引き込んで行きます。表現する世界はごく日常のもので、大それたことは何も起こりません。然し、見せ方がうまいためついつい見続けてしまいます。ショウのどこに入っても存在感を示すことが出来る演技です。

 

 4本目は十文字幻斎。テレビですっかりおなじみになった催眠術師です。この人の催眠術を疑う人がありますが、彼はしっかりとした研究の裏付けがあって催眠術をしています。決してハッタリではないのです。然し、それでも何となく怪しいところが感じられるのがこの人の面白さでしょう。とにかく、この人が舞台に上がると場が明るくなります。一部の取りにはふさわしいアクトです。

 ここで10分間の休憩。

 

 二部の一本目は私の手妻です。ギヤマン蒸籠と二つ引き出しの傘手順。そして蝶のたはむれ、私のメインアクトです。途中面灯り(つらあかり=長い棒の先に蝋燭を着けたもの、昔のスポットライトです)、を使って、江戸時代の雰囲気を作って蝶を飛ばしました。

 

 そのあとまた私が司会をして、二本目のSORAを紹介。ボトルのプロダクションと、衣装をお客様に指定してもらって、その衣装に変わるマジック。イギリスのTV番組、ゴッドタレントで一躍有名になったもの。今回も裸姿でブラジャーを付けて、観客席が盛り上がって大成功。

 

 三本目は内田貴光。もう30年も前にドイツで見たアクトの再現。まず第一印象は、彼の顔がしっかりとしてきたこと。いい面構えです。日本のカーディシャンの代表にふさわしい顔つきになっています。体系は昔と少しも変わっていません。もう50になると思いますが、皮下脂肪がついていません。その姿でカードを演じるので、まるで往年のマーカテンドーが乗り移ったようです。

 しかも、昔はチラチラ種が見えていたものが、今回は見事のフラッシュがありません。確実にレベルが上がっていたのです。いや大したものです。スライハンドが低迷している時代に、ここまでのカードアクトが見られるのは幸せです。まだ内田貴光の演技を見ていないとは必見です。

 

 ラストは、メイガス。昨年のベストドレッサー賞に選ばれただけあって、恰好が決まっています。始めは三つの当て物ですが、推理小説金田一京助を再現して、わざわざ石坂浩二さんに出演を依頼して、デモテープを作ったそうです。そんなことをして一体いくらかかったのかわかりませんが、凝り性のメイガスさんは映像とコラボした当て物を完成させました。先ず石坂浩二さんを使うと言うことが驚きです。

 後半は透明ガラスを使った人体交換箱。ガラスで中が見えてしまうため、思いっきり素早く変わらなければなりません。ぎりぎりのタイミングの交換です。うまくこなしてフイナーレ。更に出演者が全員集まって、閉幕です。

 

 7回目のヤングマジシャンズセッションは終了しました。やはりここまで続けて来るとそれなりに実績も蓄積も見えて来ます。何とか来年も、この先もずっと続けて行きたいと思います。

 終演後、十文字さんとメイガスさんと内田さん、それにアシスタントを連れて総勢7人で、南口のすしざんまいに行きました。寿司屋で一杯飲んで話をしましたが、みんな今回の舞台に手ごたえを感じたらしく、話に熱が入っていました。

 なかなかマジシャンが何本も集まってショウをする機会と言うものがなく、しかも終演後打ち上げをすることもそうそうないため、みんな楽しそうでした。出演者も、お客様も楽しんで一緒にショウの場を作り上げるのが一番いいショウです。

 さて、今晩も公演があります。昨日以上の熱気のある舞台を作ろうと思います。

続く